こんばんは。都議の栗下です。

 

 

昨日は、プレイステーションの発売から始まった業界構造の変化、CESAの設立、CEROレーティングシステムの導入について書きました。

今日は、その後に起こったゲームソフト有害図書指定の議論とZ区分の追加についてお伝えします。

 

 

■槍玉に挙げられた Grand  Theft Auto 3

昨日お伝えしたように02年にCEROレーティングシステムの導入が始まり、家庭用ゲームソフトの規制議論は一旦沈静化したかに見えました。

しかし、03年にアメリカのテネシー州で少年による銃乱射事件が起こり、その中で少年たちがGTA(グランドセフトオート)3というゲームソフトに影響されてやった供述したことから、ゲーム悪影響論が再燃することとなります。

 

 

 

ご存知の方も多いと思いますが、GTAはクライム系箱庭ゲーム。その中で銃で人を撃ち殺したりする描写があること、またそれらが肯定的に捉えられている(?)ことから槍玉に挙がったわけですが、人を銃で撃って殺すゲーム自体は当時でも数えきれないほどありました。ですので、ゲームユーザーの間ではなぜGTAだけ問題になるのか?という多くの疑問の声も同時に挙がっていました。

 

GTA3は、この問題以前から世界的な大ヒット作となっており、日本でも販売が行われていました。人殺しをする残虐ゲームが子ども達の間で流行している。当時の行政や政治家も目をつけ始めます。

05年、当時の神奈川県知事であった松沢成文氏がゲームソフト規制について検討を進めている事、また首都圏サミットで、共通の規制を東京都・埼玉県・千葉県にも呼びかけていきたいと、記者会見で表明しました。発言を受けて、石原都知事が規制に前向きな姿勢を示すなど、ゲーム規制に向けた緊張が急激に高まることに。

 

 

 

 

同年5月、松沢知事は神奈川県の児童福祉審議会社会環境部会(他県における青少年健全育成審議会)にGTA3の有害図書指定について諮問し、審議会の答申も「有害指定すべき」。しかし一方で、審議時間がたったの10分間だったことや、業界団体との話し合い殆ど行われなかったこと、また記者らとのやり取りの中で、ゲーム全般に対する理解度の低さが露呈し、松沢知事の元に多くの批判が集まる事態に発展しました。

 

かくして6月7日、GTA3が家庭用コンシューマーゲームとして初めて神奈川県で有害図書指定を受けることになりました。

国内での発売元であるカプコンは有害図書指定について、青少年保護育成は当然重要であるが、業界団体等との意見調整等を十分に行わず、一方的な指定に至ったことは残念とし、青少年の保護育成は他の手段・方策によるべきであり、過剰な規制によって表現の自由を制約すべきではない、指定要件・基準が明確ではない、単なる印象や好悪による判断は無効ではないか、といった抗議の意思を示しました。(カプコンHPでは当時の文言は現在は見られないようです。)

 

 

■全国への影響とCERO「Z区分」の誕生

上述した通り、多くの批判も集まっていましたがこの一件が与えた影響は大きく、プレイステーションを展開するSCE(ソニーコンピューターエンターテイメント)やCESAは自主規制を強化し、CEROの年齢制限に達していない顧客へ販売を行わない方針を決めました

 

また「残虐ゲーム規制」の流れは全国の自治体に波及することとなり首都圏サミットに参加した東京都・埼玉県・千葉県はいずれもこの方向性について前向きな姿勢を示し、かねてから関心の高かった岡山県や大阪府、京都府などでも次々とゲームソフト規制に向けて動き出しました。最終的に05年11月の全国知事会議の中で、「家庭用ゲームソフトの販売等に関する自主規制についての要請(案)」が協議され、全国知事会として「18歳以上対象のゲームを18歳未満に販売することを禁止する」ことを要請するに至りました。

 

CESA及びCEROもこの動きに呼応する形で、従来の年齢による区分を改めて「A」「B」「C」「D」「Z」の5つに新たに分け、Z区分については販売店において18歳未満への販売を禁止する事を決め、翌06年2月から実施することとなりました。

 

CEROレーティングマーク(CERO公式サイト)

今日はアメリカの銃乱射事件に端を発した有害図書指定とCEROの区分改定の経緯についてお伝えしました。それまでのCEROによる区分はゾーニングの機能は伴っておらず、「18歳未満への販売禁止区分」は遅かれ早かれ必要になってきたのではないかと感じますが、数多あるゲームの中で、合理的な理由もなくGTAが槍玉に挙げられたこと、そして「全国初の残虐ゲーム有害指定」というシナリオありきで進められたプロセスには非常に大きな問題があったということも忘れてはならないと思います。

 

続く。