こんばんは。都議の栗下です。
 
 
緊急事態宣言が解除されましたが、都内飲食店への時短要請については差し当たって4月21日まで続行する方針が都から示されました。時短要請による感染抑止効果の検証は夏頃には既に都議会で求められていました。協力金の一律支給などについて都は国に是正を求めているといっていますが、先般の質疑で大した働きかけを行なっていないことも明らかになりました。これまでの対策を延長するだけでは事態が好転しないことは明らかです。今後の施策に都議会からの提言も柔軟に盛り込んでいくよう引き続き求めます。
 
さて、先日は国会で初めて問題視されたアダルトゲーム「177」について書きました。
今日は、現在も続くPCゲームレーティング設定の原因となった「沙織事件」についてお伝えします。
 
 
■沙織事件とは
事件の発端になったゲームは「沙織 -美少女達の館-」というフェアリーテールから1991年10月に発売されたアダルトソフトです。
当時、パソコンゲームのレーティングはまだ有りませんでしたが、「X指定」と銘打たれ、「アメリカだったら成人向けになるくらい過激」と言うPRをされていたようです。また、全編「無修正」であることが売りの一つでした。
 
 
当時、無修正グラフィックのソフト自体は他にもあったようですが、1991年、京都の男子中学生がこのゲームを万引する事件が起きたことによって、その内容についても世論の批判の矢面に立たされることになりました。これが、「沙織事件」です。
「沙織」の販売元であるフェアリーテールにおいても刑法175条わいせつ物頒布等の罪で逮捕者が出るなど、事態は深刻化していきますが、他にもそういったソフトがある中で、偶然(故意の可能性も否定できませんが)スポットライトが当たってしまったものが徹底的に摘発されるというのは、マンガ規制における松文館事件のようなもので、現在においては大きな問題になりかねないのではないかと個人的には感じます。
 
 
■ゲームソフトの有害図書指定
沙織事件の後、高まる批判的世論に対応する形で、自主規制のためにEOCS(コンピュータソフトウェア倫理機構)パソ協(日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会)ソフ倫(コンピュータソフトウェア倫理機構)などが発足しました。
 
それ以前にはなかった、年齢制限の明示などを行うことによって、批判を沈静化させるよう対策を進めましたが、92年に年齢制限の明示がされていなかったソフトが宮崎県で有害図書指定されました。「有害図書指定」は文字通り、それまで書籍を対象にしたものでしたが、この頃から、(県によっては)ゲームソフトも指定されるようになったのです。
 
 当時、宮崎県で有害図書指定されたソフトの中に、新世紀ヱヴァンゲリヲンで世に知られるガイナックスが制作した「電脳学園」があります。
 
 
なお、ガイナックスは憲法21条(表現の自由)に違反するとして宮崎県を提訴しますが、宮崎県青少年条例での有害図書指定から7年後の1999年に最高裁で敗訴しています。
 
 
■PCゲームのレーティング
 
PCゲームソフトが青少年条例で有害図書指定され、ソフトウェア会社各社は更なる対応を迫られることになりました。
既に進んでいたアダルトビデオ等の自主規制を参考に、全年齢対象か18歳未満禁止の2つに分けたレーティングを設定し、18歳未満禁止の成人向けソフトについては、必ずソフ倫の審査を通過した上で流通させるよう各業者に通達を出しました。
 
画像:EOCSレーティングシール
 
EOCSとソフ倫による自主規制は今日に至るまで続いています。94年に「15禁」に相当する「R指定」が新たに加わりました。
 
以前「マンガ規制の歴史」に書きましたが、「成年コミック」の記載が始まったのは91年のことでした。ゲームにおいては92年から確立されたということで、マンガとゲームに対する認識はやはり連動していることが言えると思います。いずれも、業界団体を設立し、これらゾーニングと自主規制を進め、「表現そのものの規制」を回避してきました。表現の自由問題が語られる際、是非の問われることもあるゾーニングですが、やはり表現そのものを守っていくためには現実的に必要不可欠な存在ではあるのかと改めて感じます。(運用によっては事実上の規制にもなるので、注意は必要ですが)
 
 
次回は、90年代に始まった家庭用ゲームのレーティングについて書いていきたいと思います。