こんばんは。都議の栗下です。
 
 
昨日、都議会本会議で小池知事による重要な答弁がありました。
 
近年、香川県でのゲーム依存症対策条例制定で各地への飛び火が懸念されていたゲーム規制について「科学的根拠に基づかない、時間制限などは都として行わない」ということを明言したのです。
 
おかげさまで多くの皆さまにこのことをご共有いただくとともに、ねとらぼさんにも私のコメントを取り上げて頂きました。
 
 
このことについて、東京における表現の自由を守る上では大きな一歩であると喜びを共有していますが、この成功体験を今後に活かすためにも、ここに至るまでの顛末について記録しておきたいと思います。
 
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ネット界隈では大きな問題となり、実際に香川県においては地元の高校生が県を相手取って行政訴訟を起こしたり、地元の日弁連が抗議の声をあげたりとその内容・制定プロセスともに多くの批判を浴びていた香川県のネット・ゲーム依存症対策条例
 
昨年3月18日に可決された段階で飛び火の懸念は指摘されており、私もツイッターやメディア、さまざまな形で問題提起をさせて頂きました。
 
 
大きな関心が寄せられていたものの、実はこれまで小池知事がこの問題について言及したこと、及びこの問題が都議会で扱われたことは数えるほどしかなく、ここに網羅しておきたいと思います。
 
 
■最初の発言は・・・2020年1月16日
私が知る限り小池知事がゲーム依存症について初めて発言したのは、2020年に初めて東京都で主催されたesportsイベント東京esportsフェスタです。
 
 
この時、香川県の条例問題については大きな問題になる前でしたが、知事の口から「やりすぎると依存症になる」という言葉が出たので、若干心配になったのを覚えています。
 
 
■記者会見で香川県の条例について聞かれ・・・2020年3月19日
 
以下は、当日の記者会見の該当部分についての抜粋です。
 
【記者】東京新聞の小倉です。昨日、香川県議会で、子供のゲーム依存やインターネット依存を防ぐことを目的とした規制条例が成立しましたけれども、全国で初めて成立しましたけど、小池知事は、イベント開催をはじめとしたeスポーツの推進に取り組まれてきたと思いますけれど、受けとめをお聞かせください。
 
【知事】この香川県の条例は、全国初ということで聞いております。また、議会でも熱心にこの条例を追っている議員もいるということかと存じます。eスポーツがどこまでスポーツなのかとか、色々な議論がまだ始まったばかりでありますし、また、ちょうど春休みといいましょうか、その前に臨時休業から、春休みに移行するというような事態に陥っている中で、子供さんは結構ゲームに興じておられるケースもあるかと思います。そういう中で、健康的にどうなのかなど議論もあるところで、そういう意味では、香川県が今回とられた条例がどのような効果を生んでいくのか、この香川の先進的な事例が色々な意味で参考になるのではないか。賛否両論あることも存じ上げておりますけれども、そういう意味では、どういう効果をもたらしてくるのかという意味では、関心を持って注視していきたいと思っています。
 
香川の条例については、両論あるとしながらも「先進的」などのニュアンスが加わったことに驚いた。以下は翌日のツイート
 
 
■都議会本会議でで初めて取り上げられる・・・2020年6月2日
 
【立憲民主党・西沢けいた議員】
 コロナによる外出自粛によって、家庭でゲームをして過ごす人もふえました。
 一方で、香川県では、この四月一日から、議員立法によって制定されたネット・ゲーム依存症対策条例が施行されました。ゲームは一日六十分まで、午後十時以降はゲームは禁止など、具体的な時間も定めたこの条例については、各所から批判が上がっています。香川県弁護士会は、五月二十五日に声明を発表し、制定理由にある児童生徒の成績が下がっているという根拠がない、子どもの権利条約に違反する可能性があるなど、条例の廃止を求めました。
 私は、こうした条例が全国に波及する可能性に不安を感じています。
 小池知事は、こうしたネット、ゲームへの規制についてどう思われるか、所感を伺うとともに、万々が一そのようなことはないと考えますが、東京都にこのような条例が必要と考えるか、見解を伺います。
 
【小池知事】
 最後に、ネット、ゲームの規制条例についてのお尋ねがございました。
 条例は、それぞれの地域の実情に即して、各自治体の判断により制定をしているものと承知をいたしております。
 現在、スマートフォンなどの携帯端末所有の低年齢化に伴って、インターネットやSNSに関して、青少年が被害者となる事案やトラブルが増加をいたしております。
 都といたしまして、子供たち自身が当事者として、インターネットに関する意識を高めるための講座や家庭におけるルールづくりなどについて学ぶファミリeルール事業、インターネットのトラブル相談窓口であるこたエールの運営などを通じまして、青少年やその保護者等に寄り添った対応に努めているところでございます。
 
 
実は、昨日に至るまで都議会本会議でこの問題について取り上げた質問は西沢都議のこの質問だけです。
 
 
■都議会委員会質疑で初めて取り上げられる・・・2020年6月4日
 
【立憲民主党・宮瀬英治都議】
 
◯宮瀬委員 ここまでお話しさせていただいたのも、さきの代表質問におきまして、我が会派の西沢けいた議員が、香川県でネット、ゲーム規制条例が制定されたことに関しまして質問させていただいています。万が一、そのようなことがないとは思いますが、知事の見解を問うたわけであります。東京都においてそういった規制があるのかないのか、検討しているのかどうかということで質問させていただきました。
 その中で、ご答弁を聞かせていただいたときに、明快なご答弁というものが、私にとってはちょっとわかりづらかったんですけれども、単刀直入に聞いてしまって恐縮ですが、都においてゲームを規制する考えというのはあるのかお伺いいたします。
 
◯斎田治安対策担当部長 インターネットやスマートフォンを利用したゲームに関する規制のあり方につきましては、その時々の社会情勢によって判断されるものと認識しておりますが、当本部では、啓発講座や相談窓口などによる家庭に対する支援のほか、携帯キャリア会社等と連携した啓発事業を通じまして、インターネットの危険から子供を守る取り組みを行っております。
 
◯宮瀬委員 ご答弁を注意深く聞いておりますと、啓発事業や相談窓口があるといったご答弁でありましたが、私どもの会派といたしましては、香川県のようなゲームの規制に対しましては反対であります。その旨で、その条例が東京都の方まで波及してしまうことに大変危惧を覚えておりまして、ないかどうか改めて確認をさせていただいたんですが、代表質問、そして今と。
 啓発事業と相談窓口事業が今の取り組みですといったことでありますので、改めて聞きますが、ゲーム規制条例の都での検討はないということでよろしいんでしょうか。
 
◯斎田治安対策担当部長 現在、子供や保護者の自主性を尊重し、事業を推進しているところでございます。
 
◯宮瀬委員 大変貴重な重い答弁ありがとうございます。つまり、子供や保護者の自主性を尊重するといったことは、自分たちでしっかりと自主的に自制するなり、尊重してやってほしいといった都のお気持ちを、しっかりと受けとめさせていただきました。
 以上で私の質問を終わりにさせていただきたいと思いますが、心配している若者及び子供も多いので、ぜひ誤解のないように対応していただければと思います。以上で質問を終わります。
 
 
実は、都議会の委員会において明確に香川の条例を取り上げ規制に対して反対しているのこの質疑だけです。
 
私も、質疑を行いたかったのですが、所属委員会などの兼ね合いから実現せず断念した経緯があります(2020年3月7日)
 
 
 
 
これらは都議会のあらゆる質疑の議事録を検索できるシステム「ゲーム依存」「香川」「ネット依存」などのワードで検索して調べたものです。
もしも、それ以外にもあるよということでしたら、リプライなどでご指摘いただければ幸いです。
 
 
 
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以上がゲーム依存症対策条例に関しての知事の公式発言及び都議会での質疑における議論の全てです。
 
当初、多くの問題が指摘された香川県の条例を「先進的」と呼び、その意向をはっきりさせなかった知事が明確にゲームプレイ時間制限を否定するに至ったのはなぜでしょうか?
 
これには、色々な見方があると思いますが私はこの間のネットにおける問題意識の高まりが知事を動かしていったのだと思います。
メディアを巧みに操り、世論に渦を起こす小池知事の手腕は現役政治家の中でもトップクラス。ネット世論についても非常に敏感です。
 
この間、大きな盛り上がりを見せるゲーム規制反対論が小池知事のマインドを大きく動かし、最終的には知事与党である都民ファーストの会の質問に答えるという形でソフトランディングさせたというのが実態であると感じています。
昨日に至るまで、都民ファーストの会がこの問題について直接取り上げた質疑は皆無。むしろネット利用時間を制限するように求めている趣旨の質問もいくつか散見されました。
 
これは、あくまで先程の都議会議事録検索に基づいた評論です。もし時間のある方は上記の議事録検索と各々の議員のネットを通じた発信もご確認いただければ幸いです。
 
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<最も伝えたいこと>
 
私が、今回の経緯を振り返って感じたのは「10年前の都条例改正問題の時から時代は大いに変わった!」ということです。
 
議席の数が少なかろうが、議会の中でポストがなかろうが、訴えてる内容が民意と合致すれば大きなうねりも作れるし、都知事であっても動かすことができる。
 
SNSが発達し、今、これを見て頂いている皆さん一人一人のアクションが確かに響くようになった。都議会は元々、区議会ほど生活に近くなく、国会ほど注目されない、「中二階」と呼ばれ、そもそも中身が見えづらいが故に、多くの不条理・不合理が放置されてきたという歴史があります。
 
しかし今は、本気の人が100人いれば、都庁を揺るがすことができる、1000人いたら、歴史を変えることができる。
 
私も、今回の経緯を通じて、言葉の上ではなく、そのことを肌で感じることができました。
 
おりしも今日、都議会で初めて「表現の自由」を冠した会派「表現の自由フォーラム」の看板が立てられました。
 
 
名前負けしないように、皆さんと引き続き力を合わせて都庁を揺るがしていきたいと思います。
引き続き、ツイッター等を通じてコミュニケーションを頂ければ本当に幸いです!