こんばんは。都議の栗下です。



三が日を終え、都庁では本日から仕事始めとなりました。今日は緊急事態宣言が再発令される見込みとの報道がありました。感染拡大に歯止めがかからない中での苦肉の策ですが、4月発令時の時の得た知見等を分析し、より効率的かつ経済へのダメージが少ない形での実施や、セットとなる協力金などのサポートについて、都議会でも提言を進めていかなければならないと思っています。


さて、本日のテーマは自由の国アメリカにおける有害図書?Banned and Challenged Booksについてです。


■Bannned and Challenged Books listsとは?

Bannned and Challenged Booksは世界最古かつ最大の図書団体ALA (America Library Association)によって発表されている書籍リストです。


Banned は「禁止(撤去)された」Challengedは「禁止(撤去)を試みられた」書籍であり、主に教育上望ましく無い内容を含むとして、米国内の図書館や学校から撤去された(もしくは撤去されかけた)本を計上しリストとして定期的に発表されているものです。


※Banned and Challenged Books の定義の詳細は以下をご覧ください。

http://www.ala.org/advocacy/bbooks/aboutbannedbooks


禁止(撤去)を決定している主体は図書館や学校(州や郡単位もあるかも)。であり、プライベートでの購入を禁じられているわけではありませんので日本の有害図書(東京都で不健全図書)とは、厳密には異なりますが、今回わかりやすくアメリカの有害図書?と表現させていただきました。



■どんな本が含まれるのか?



上記は2019年のランキングですが、10位にハリーポッターシリーズが。

ちなみに2001年、2002年は2年連続で1位。


ハリポッターシリーズが選ばれた理由ですが「オカルト」「サタニズム(悪魔崇拝)」「魔法や魔術に言及していること」「悪意のある手段で目標を達成していること」が理由とのこと。

実際、ハリーやその他のキャラクターは子どものいたずら程度のことしかしていないような気がしますが・・・。

 

キリスト教の影響で、地域にもよりますが日本よりもこれらの図書に対する追放運動が激しい様子。実際、テネシー州のカトリック系名門私立校では地元の有力な神父の助言により、ハリーポッターシリーズが撤去されたようです。

 

日本でも官能恋愛映画として知られているFifty shades of Gray も2015年にランクインしていました。性表現や子どもにマネさせてたくない過激な言動などが問題視されるのは万国共通と言えますが、日本ではあまり無い「宗教観」による撤去というのは、色々と考えさせられますね。



■リストを作る感動の理由とは?

このリストを作っているのは、ALAと連携をする Office for Intellectual Freedom(OIF)という機関ですが、民間からの寄付を募りながら運営されているとのことです。

Intellectual Freedom は「知性の自由」を意味し、そのポリシーの中に、アメリカ合衆国憲法修正第一条を守るということが掲げられています。この修正第一条の中には「宗教の自由」「表現の自由」「報道の自由」などが定められています。

つまり、このリストは「知らない間に、表現の自由が侵されないように」少なくとも20年以上に渡って発表されているということです。正直、これには私感動しました。


リストを公表することの他にも、毎年9月末から10月の頭にかけてBanned books weekを設け、撤去されている本を読んでいる様子をSNSで拡散したり、検閲の問題について広く知らしめるなどの啓発も行っています。


※Banned Books Week について

http://www.ala.org/advocacy/bbooks/banned


アメリカが全て素晴らしいとはあえて言いませんが、数々の戦いを経て自由を勝ちとったという歴史的経緯から、「表現の自由」の重大性について、広く共有されているということは言えるのでは無いでしょうか? 合衆国憲法修正第一条に表現の自由が入っていることも象徴的です。(ちなみに日本は第21条)。日本でも、有害図書指定などについて、もっとアカデミックに語られるべきだと思います。


我々が当たり前のように享受しているけれど、知らない間にいつ侵害されるかわからない表現の自由問題については、今年もさらに力を入れていきます。