こんばんは。都議の栗下です。
 
 
今日は本年3月にステルス制定してしまった香川県ネット・ゲーム依存症対策条例(以下、ゲーム規制条例)に対する違憲訴訟の第一回口頭弁論が高松地裁で開かれました。
 
<香川のゲーム条例訴訟、争う姿勢>
 
4月1日の施行から半年余りが経ったわけですが、制定されてしまった条例は変な運用がされないように見張っていくことが大切。ゲーム規制条例のその後について書きたいと思います。
 
 
■ゲーム規制条例の問題点を再確認
ゲーム規制条例の問題点については広く知られているように思えますので、簡単に触れたいと思いますが、そもそも条例が防止しようとしている「ネット・ゲーム依存症」の定義が極めて曖昧であり(WHOの言う「ゲーム障害」とも違う)ゲームを長時間プレイすると学生に悪影響を及ぼすはずなので、一日60分間以内(休日は90分)にするということを青少年とその家族はおろか、ネットゲームを運用する通信会社にも努力義務を課すという、目的も手段も根拠や実効性を欠いた条例となっていました。
 
さらに、条例の制定プロセスについても大きな問題があり、多くの注目を集めたにもかかわらず、公開の場での質疑や討論を経ずに制定まで至ることとなりました。住民から集めるパブリックコメントについても、制定前は非公開とされ、市民からの情報公開請求によって、同一フォームでの組織的な応募があったこと、またその後調査で条例賛成派の県議が組織的な応募を呼びかけたということも明らかになりました。
 
条例制定時に取材いただいた記事がありましたので、こちらも改めてご覧いただければ。
 
 
■「 ネット・ゲーム依存防止対策学習シート」の問題点
条例施行後の今年7月、子ども達が夏休みに入る前、香川県内の学校では「ネット・ゲーム依存防止対策学習シート」が配られました。子ども達がゲームプレイ時間や家でのゲームプレイに関するルールを記入するという趣旨のものでしたが、そこに記された内容については科学的根拠が乏しいものが多数含まれていること、ゲームが「有害であること」を強調するなどの点について多くの疑問の声が挙がりました。
 
 
 
※KSB瀬戸内海放送 2020年8月24日より
 
「スマホを長時間操作している子どもは成績が悪い」といった、因果関係の証明されていない見方や、「長時間のゲームプレーは脳を委縮させる」など恐怖を呼び起こすような内容。
 
いずれも一部の研究の中での見方でしかありませんが、子ども達は(大人に比べれば)そういった 情報を無批判に受け止めてしまうのではないでしょうか。一部の大人達の都合や、十分な科学的知見を伴わない偏った見方を義務教育の中に組み込むと言うのは極めて危険なことです。
 
 
■条例の効果は・・・出ていない
ゲーム規制条例の制定によって、香川県の子ども達のゲームプレイ時間は減ったのでしょうか?
 
 
※ゲームエイジ総研調査結果2020年5月28日より
 
今年の5月末にゲーム関連調査会社のゲームエイジ総研の調査によれば、香川県の10代のゲームプレイ時間(1週間あたり)は図の通り、条例制定後にむしろ増加をしているとのことです。
新型コロナの影響で外出を控えるよう呼びかけられた影響もあり、全国的にゲームプレイ時間は増加していますが、全国平均と比較しても伸び率は高いため、「条例制定によってゲームプレイ時間が短くなったことは無い」と言うことが言えるのでは無いでしょうか。
 
これについては二つのことが言えます。
一つは「この科学的知見に乏しい条例がゲーム時間に無闇な影響を与えていなくて良かった」と言うこと。
もう一つは、「実効性(効力)が極めて乏しい無意味な条例制定であった」と言うことです。
 
 
大山鳴動して鼠1匹。全国初と銘打たれていましたが、実際には毒にも薬にもならない条例であったと言うのが現状ですが、全国初の事例となり他の都道府県に対しても影響を与えていることは紛れもない事実です。
 
東京都においても、知らない間に検討が進められぬように担当部局の方々にはこまめな情報共有をお願いしていますが、いつ他の大都市に飛び火するかわかりません。
 
抑止のために重要のは、やはり香川県ゲーム規制条例の問題についてネット等を通じて、全国から疑問を呈し続けること。
このことが世論形成と他自治体における一方的な検討の大きな抑止力となります。私自身も引き続き、皆さんと情報共有をするともに、何かおかしなことが起こった時には声をあげられるようにしていきます。