こんばんは。都議の栗下です。


都議会一般質問が終わり、これまで中々時間が取れなかった作業にも手がつけられる様になってきました。
そんなわけで、先日書くことができなかった「同人誌即売会が、中止になると運営にどれほど支障があるのか」について書きたいと思います。

先日、全国の中止された即売会を研究し、同人誌にまとめているSTRIKE  HOLEさん(http://strikehole.blog.jp
)との対談や、質疑にあたって同人誌即売会の主催者とのお話の中で伺った内容を基にしています。


■即売会が中止される原因とは
日本最大のコミケから、気心の知れた方々だけでやる小さなものまで、同人誌即売会の形態は多岐に渡りますが、STRIKE  HOLEさんがまとめられた、過去の中止即売会数(全国)の推移を見てみると、あることに気がつきます。


過去、約20年の中で突出して多いのが11年〜12年にかけて。そう、この年には東日本大震災があり、この影響で東北地方を中心に多数の即売会が中止を余儀なくされたのでした。

特に、25年間の長い歴史を誇っていた岩手の即売会「岩漫」は、この年に中止になっただけでは無く、その後の開催も途絶えてしまいました。経済利益を追求していない同人誌即売会の運営は、一度のダメージで運営に大きな支障をきたしかねません。

その他、昨年の台風19号が東京に上陸した際には、東京ビッグサイトで開催が予定されていた11000spの大イベント、COMIC CITY SPARKが1日中止されることになりました。

これらから、2020年までは同人誌即売会にとって最大の脅威は「天災」であったと言えます。

その他にも、理由として、「思ったようにサークルが集まらなかった」「他のイベントとぶつかり、来場見込みが減ってしまった」「運営側のゴタゴタ」などの様々な理由がある様です。これらは、小さな即売会に多い悩みですが、特筆すべきは「黒子のバスケ脅迫事件」による中止です。経緯が入り組んでいるので詳しくはWikiをご覧いただきたいと思いますが、こうした突発的な出来事によって、イベントが中止を余儀なくされることもあるということで、主催者はいつもプレッシャーの中で生活されているのではないかと思います。


■中止を余儀なくされた時の主催者へのダメージ
即売会が中止を余儀なくされてしまった時にどういったダメージがあるのか?

まずは、出展者収入(サークル参加費徴収)・来場者収入(入場料やグッズ売上)が全てなくなってしまうということ、会場費について返金できるかはケースバイケースの様ですが、先日質疑で取り上げた会場の施設使用料(ビッグサイトだと数百万円〜数千万円)、イス・テーブルなどのレンタル料、既に印刷してしまったカタログの印刷費用をはじめ、準備にかかった人的物的コストが全てムダになってしまう上に、「中止のお詫び」や「延期のお知らせ」などをもれなく周知する莫大な労力(※その後の運営に大きく響くため、極めて丁寧な対応が求められます。)など、を始め甚大なダメージを負うことになってしまうのです。

そもそも、同人誌即売会は利益を追求しない、ボランティア的な要素も強く、同じ規模のイベントをやる大企業に比べれば経済的基盤は脆弱です。利益を追求しないが故に、日本の誇るコンテンツ文化を育んできたと思うのですが・・・

上記を含めると、ビッグサイトで数ホールを借りて行うような大イベントが中止された際のダメージは、数千万円から時には億単位になると思われます。故に、一回の中止で運営が立ち行かなくなってしまうということも十分あり得るのです。


■2020年は紛れもなく、過去最大の危機。
今年はコロナによる影響で、夏・冬の2回のコミケを始め、コミティア、コミックシティといった大型即売会も数多く中止を余儀なくされました。

冒頭に記載させていただいた全国の中誌即売会の数について、2020年はコロナの影響で中止が多すぎるので不記載 となっていますが、お話を伺うと200件は軽く超えているとのこと。過去最悪の年は2011年の109件でしたから、今年が同人誌即売会にとっていかに、かつてない危機であるのかが伝わるかと思います。

それぞれの即売会の中止において、主催者は上に挙げたようなダメージを負っています。また、即売会が開かれない期間も、社員を多数雇用している企業もあり、イベント開催をしなければ運営を継続できないために、コロナで中止のリスクがある、もしくは来場者が集まらないリスクがある中でも、開催に向けて準備し、先の読めないコロナ感染拡大に、例年とは比べ物にならないプレッシャーと戦わなくてはなりません。また、開催が滞れば、作家さん達の創作のサイクルが崩れ、即売会の活力が失われてしまうことも大きな懸念です。

今回伝えたいのは、いかに今、同人誌即売会が大変な苦境に立たされているのかということ

最近よく話題になっている、日本映画の映画興行収入ベスト5は全てアニメ作品です。日本が誇るべきコンテンツ文化を育む土壌を作ってきた同人誌即売会を守るために、国としても、東京都としても、もっと能動的に動かなくてはなりません。

先日、19日の一般質問で扱ったコロナによるキャンセル時のビッグサイト会場費の返還については、全国同人誌即売会連絡会様から頂いた要望の一つ。もう一つの会場費減免についても引き続き求めていきたいと思っています。