こんばんは。都議の栗下です。

 


コロナ渦で出版不況と言われる中、成人向け実話誌が売り上げを伸ばしているそうです。

 

 


そんなわけで今日は、コンビニからの成年雑誌撤去について改めて振り返ってみたいと思います。


もうコンビニから成年誌が一掃されてから随分と経つような気がしますが、急速に進んだのはこの数年です。その過程で、実は地方議会での議論も影響を与えていました。


 

■最初にやめたのはミニストップ。進めたのは千葉市長?

 

いち早く撤去に取り掛かったのはミニストップです。

2017年に店舗での成人向け雑誌取り扱い中止を発表し、

2018年1月には完全に取り扱い中止となりました。

 

この決定に影響を与えたと言われているのが、2016年6月17日の千葉市議会での公明党市議の質問。その後の2017年2月千葉市議会第一回定例会で、熊谷市長が具体的な取り組みについて答弁しました。

 

 



ミニストップの本社は千葉市。熊谷市長(09年当選)が進めてきた「陳列対策」を、千葉県のみならず全国に広げるという決定をしたということが現在でも文書として残されています。

少し話は逸れますが、熊谷市長は来年6月までに行われる千葉県知事選挙に立候補表明をしており、このコンビニからの成年誌撤去を千葉市から全国に広めたというのは実績の一つとして掲げられる事になるのではないかと思います。

当時、コンビニの成年誌に対する風当たりは既に年々強まってきており、2020年五輪までの時間の問題と言われていたとはいえ、業界でも規模の小さなミニストップと、一地方の首長と議会がそれを牽引するという流れを作った事については覚えていた方が良いでしょう。


■東京都での取り組み

 

東京都がコンビニや書店で区分陳列を開始したのは2001年。

2001年3月に青少年条例改正が可決されたのちに同年10月から義務化されています。(詳細はブログ第12回参照)

そこに包装(テープによる小口止め)がさらに義務化されたのが2004年です。

 

それ以前の1999年、東京都生活文化局がコンビニでの成人向け雑誌の区分陳列が不十分であり都民からの苦情も多いとし、

 

①都が指定した不健全図書を青少年に販売しないこと

②成人向け雑誌コーナーとそれ以外を明確に区分すること

③成年マークがついた雑誌などは必ず年齢確認し、18歳未満が購入しようとしている場合は販売しないこと

④成人向け雑誌を販売する際の従業員への周知徹底

 

などの要請文書を全コンビニチェーンに送付したこともありました。

 

以上の通り、東京都でのコンビニにおける成年誌対策については、その殆どが石原都政(99〜12)で進められました。全国でも飛び抜けてコンビニの集積率を誇る首都東京で条例改正が行われれば、実質的には全国に波及することとなります。


上述の千葉市の話もそうですが、地方政治の動きによってその流れが全国に広がることはままあることなのです


 

■「どこからが成年誌か」問題

 

上述のミニストップが取り扱い中止をした1年後。

2019年1月21日、セブンイレブンが8月末までに全店舗で成人向け雑誌の店頭取り扱いを中止すると発表。次いでローソン(業界3位)、ファミリーマート(業界2位)も全店舗で中止を発表。


 その理由は2020年五輪で来日する外国人や子ども・女性・高齢の方の配慮とされています。

 

(ローソン公式HP:成人向け雑誌取扱い中止のお知らせ)

 

かくして、主要コンビニからの成年誌撤去は一斉に進められることとなりましたが、この時一部で「成年向け雑誌」の定義が議論の対象となりました。


日本フランチャイズチェーン協会のガイドラインでは「成年向け雑誌」を

「各都道府県の青少年条例等定められた未成年者への販売・閲覧等の禁止に該当する雑誌及びそれらに類似する雑誌類」と表現されています。


成年向けマークのついた本を「表示図書」、それと同等レベルの表現を含んだものを「類似図書」と呼びます。


実際には各コンビニが判断の上、この「類似図書」のレベルまで撤去するという意味です。


これは規制の明確な基準があるということでなく、いわば「コンビニ業界による自主規制」といったところでしょうか


実際にコンビニを見比べてみると、置いてある書籍のチョイスは同じセブンイレブン同士でも微妙に違ったりします。最終的に置くかどうかの判断は各店舗のオーナーに任されている、といった情報もあります。

 

 


このコンビニでの成年誌問題は、

当初本屋のようにゾーニングを試みたものの、コンビニという業態においては、売場面積も狭小で、回遊性も求められゾーニングが成立しなかった。

また成年誌自体の売り上げも右肩下がりで、もはや商業的なメリットを持たなくなったところに、五輪という大義名分が加わった事によって一挙に進んだという構図ではないでしょうか。


今回お伝えしたいのは、そうしたいわば時代の流れも、元を辿れば上述のように地方行政の動向が大きく関係していることが多いということです。


ですので、今は些細と思える問題についても広く知っていただく努力を続けて行きたいと思います。