こんばんは。都議の栗下です。
 
 
 
昨日は、都条例改正に端を発した東京国際アニメフェアボイコット問題について書きました。
今日は、2010年の都条例改正によって加わった「新基準」で不健全図書指定された書籍3冊について書きたいと思います。
 
■2014年5月「妹ぱらだいす!2」
 
 
条例改正から3年後、2014年にはじめて審議の対象になった図書は、漫画『妹ぱらだいす!2』(KADOKAWA書店)でした。
条例改正に端を発したアニメフェアボイコット事件でも存在感のあった角川グループの発行というのは皮肉という他ありません。
 
この作品は主人公が妹と同居して性行為に及ぶ内容となっており、それが「近親相姦」を禁じる新基準に引っかかった形です。
 
【旧基準(1号) ・新基準(2号)とは】
 
旧基準による指定の審議とは違い、漫画・アニメ分野の専門委員がその芸術性や社会性、学術性、諧謔性、批判性などの側面から意見を述べた上で審議されます。これは2010年に最終的に条例制定した際(ブログ第16回参照)の付帯決議があるためです。
 
当時、初の新基準適用ということでメディアでも取り上げられました。
 
 
■2017年3月「キミに眠る俺の罪
 
 
新基準2回目の適用は2017年のマンガ「キミに眠る俺の罪」でした。このマンガはいわゆるBLもので、男性同士の性行為の描写の中に「強制的わいせつ罪」「18才未満の相手との性行為が条例違反」に触れるシーンがあり、諮問されました。
 
2014年の時と違い、旧基準・新基準、両方について諮問されたので、それぞれの審議員は「旧基準では〇〇」「新基準では〇〇」と2つの評価を下すことになりましたが、審議の結果、いずれも基準においても指定該当ということになりました。
 
審議の際に配られる「自主規制団体の意見」というのがあります。今回は自主規制団体の評価も新旧両方の基準について書かれてたが、評価はいずれも同じ。
 
だとすれば、「一体何のために新基準を作ったのだろう・・・」と改めて感じた審議会でした。
 
 
■2017年10月「監禁された優等生姉妹」
 
 
3回目の適用は同じく2017年に諮問された「監禁された優等生姉妹」です。
 
この審議会については、審議会議事録のpdfがまだ掲載されていますので、併せてご覧いただきたいと思います。
 
【第681回青少年健全育成条例審議会議事録】

https://www.tomin-anzen.metro.tokyo.lg.jp/jakunenshien/singi/kenzensin/gijishiryou/688/688gijiroku.pdf

 
 
この作品での性描写の中に、「強制わいせつ罪」「強制性交罪」にあたるものがあるとされ諮問されました。こちらも新基準・旧基準ダブルでの指定検討。
新基準・旧基準の視点で細かいコメントの違いはあったものの、結果はいずれも指定該当となりました。
 
 
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2020年現在、いわゆる新基準で不健全図書指定されたのは以上の三点ですが、いずれも旧基準での検討も「指定」となっている(一冊目は旧基準での諮問はされていないが、おそらく旧基準で審査しても指定の結果が出たように思います。)ことから考えると、2011年の改正時にあれだけの議論の末条例改正を行って結果は何も変わっていない。「大山鳴動して、鼠1匹」という印象は否めません。
 
ちなみに、条例改正時に同じく追加された「児童用推奨携帯制度」や「インターネットカフェにおけるフィルタリング」についても、ほぼ成果を上げていません。
「時代にあわえてアップデート」というのは聞こえがいいのですが、その後の検証についてはしっかり行っていかないと、後には形骸化した条令文だけが残ることになります。
 
ポジティブに捉えると、当時あれだけ心配されていた、条例の濫用については現在のところ起こっていないともいえますが、「萎縮効果」については誰も測定できません。
この記事を書くにあたって、今後も条令が適切に運用されるよう、我々も目を光らせていかなくてはいけないと再認識することとなりました。
 
 
本日まで、都条例の歴史を振り返ってきました。明日はいよいよまとめていきたいと思います。
 
続く。