こんばんは。都議の栗下です。



昨日は90年〜91年に行われた「成年コミック」マークの導入経緯についてお伝えしました。
今日はそれと同時期に行われた都議会での青少年条例改正についてお伝えしたいと思います。


■わいせつ事件に端を発した都政バッシング(1991)

これまでブログの中でお伝えしてきましたが、東京都は多くの出版社を抱える土地柄、青少年条例の運用については他県と比較すると抑制的な運用が続けられてきました。

しかし、90年代規制強化の波はそんな東京都も飲み込んでいくこととなります。


91年6月、高校生が少女に性的いたずらを約30件行い、逮捕される事件が起きました。家宅捜索によって性描写のあるコミック18件が押収されます。そしてそのうちの一部は警視庁が以前、東京都に「不健全図書指定をすべき」との要請を出して、都がそれを行わなかった書籍でした。

各メディアは一斉に「マンガに触発されて犯行に及んだ」「犯行が起こったのは東京都の怠慢によるものである」という趣旨の報道を行うようになります


都議会に対しても、「有害図書の緊急指定や都民からの通報制度の導入、有害図書販売に対する取り締まりなどを行う」など条例改正を求める請願が続々と寄せられる事態に発展します。


■出版業界の対応

前回のブログでお伝えしたように、この頃はまさに国と「成年コミック」マーク導入を進めた直後ですが、東京都における規制強化を避けるため、出倫協(ブログ第3回参照)は、コミック単行本が指定された際の対策について打ち出します。

しかしながら、都議会においては警察関係団体などの勢いを受けて請願が都議会を通過。
今回は自民・公明・共産・民社 全ての主要会派が賛同していました。

全国を震撼させた宮﨑勤事件が89年。その後、国においても規制強化は急速に進んでおり、東京都においても何らかの対応が必要だという空気が既に醸成されていたことは想像に難くありません。

 


■青少年条例の改正、成立(1992)

91年末、当時の鈴木俊一知事は件の青少年問題協議会に条例改正について諮問します。
92年の答申を受けて、東京都は新たに、緊急に指定が必要な時、審議会を開催できる小委員会の設置。都民が個別事案を報告できる申し出制度。違反者に対する罰金の引き上げなどを行う条例改正案を3月の都議会に提出しました。

前述の通り、都議会においては全ての会派が趣旨に賛同しており、可決は時間の問題と思われていましたが、マンガ家たちや出版社が立ち上がります。


92年3月13日「コミック表現の自由を守る会」立ち上げには、石ノ森章太郎、里中満智子、さいとう・たかお、ちばてつや、牧野圭一、山本直樹、柴門ふみ、石坂渉(敬称略)など多くの有名マンガ家や出版社が名を連ねました。


これによってメディアも条例改正の問題点について報じるようになりますが、3月都議会本会議で条例改正はほぼ全会派一致で可決されます。100人以上の都議の中、2人の無所属会派が反対したのみでした。

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64年の条例制定に続き、92年の改正議論は都議会における表現の自由議論の大きなターニングポイントです。
この時立ち上がった「コミック表現の自由を守る会」はその後の条例改正論争でも大きな役割を果たすことになっていきます。私も都議として関わった09年の改正論争の時も。

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明日は90年代に続けて起こった都条例改正についてお伝えします。

続く。