こんばんは。都議の栗下です。

 

 

昨日は、1964年に都議会で青少年健全育成条例が可決された際のお話でした。
今日は、都条例制定の影響についてお伝えします。

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■超スピードで始まった不健全図書指定


都条例が施行されたのは1964年10月1日でした。
翌11月、青少年健全育成審議会が開かれ、8点の不健全図書指定が決定されました。

ちなみにこの不健全図書指定の決定は令和の現在でも審議会で行われており、私も委員の1人として毎回意見を述べています。
毎月一回開かれ、今年7月には717回目の開催でした。約60年前から続いているのかと思うと感慨深い思いがします。

 

 


さて本筋に戻りますが、この初めての指定に対して自主規制団体は自分たちの意見も参考にされるよう働きかけます。それによって、不健全図書指定候補の本については、事前に毎月「打ち合わせ会」を開いて、意見が審議会の際に参考にされるように変わりました。

7月末に条例制定して、10月1日施行で、11月に最初の不健全図書指定と、現在の都政のスピード感覚からすると尋常じゃなく早い!というのが率直な感想です。(今は制定から施行まで1年くらいかける、また最初のケースは大体慎重になるので時間がかかる。

そして、現在は指定するにしても大体1〜3冊/月です。

それがいっぺんに8冊というのだから、当時の規制の勢いが窺い知れます


■どんな書籍が指定されたの?

 

条例制定直後、一体どのような書籍が「不健全図書指定」を受けていたのでしょうか?

 

都議会図書館で資料請求するも、簡単には出てこずたらい回しになってしまいましたが、なんとか初期の指定図書一覧を手に入れました。

 

2020年現在、直近で指定された図書は4307号、つまり4307番目に指定された本です。

1964年に第1号に指定された書籍は・・・

 

紳士専科 (12月発行 辰巳書房)

でした。

 

 

 

 

知らない・・・。

今では検索して調べるしかありませんが、マンガというよりイラストやグラビア、官能小説を合わせた雑誌でしょうか。同時期に指定された作品も多くがこのような雑誌です。

 

現代においては、子どもがこのような本に興味を持って触れることも想像がつかないのですが・・。

 

この指定図書一覧はその後も見ていくと規制対象の変遷が分かりやすいのでまた触れたいと思います。

 

 

■都内に白いポストが出現


都条例制定後、いわゆる悪所追放運動は更に活発になっていきます

全国にはまだ一部残っている、白いポストをご存知でしょうか? 

「悪書ポスト」と呼ばれたこともあったようですが、青少年に読ませたくない書籍などを入れられるようになっており、もともとは63年に兵庫県尼崎市から始まったといわれています。

 

 

この白ポストが都内に最初にできたのはJR(当時の国電)巣鴨駅で、66年に地元の母の会によって作られたそうです。その後は警視庁の協力もあり、都内の主要駅44駅まで拡大。

条例の施行とともに、駅に現れた白いポストは目に見える形で「有害な図書が跋扈している」と大人たちに知らしめるシンボル的な存在であったのではないでしょうか。

ちなみに、全国の様々な白ポストを情熱を持って調べているサイトもいくつかありましたので、そちらを見てみるのも面白いかも知れません。

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条例制定の際に激しく賛否が分かれたにもかかわらず、条例を次々と運用していくというのはかなり意外でした。
それだけ、良くも悪くも政治に力があった時代だったのか・・・。


明日は、70年代の規制について踏み込んでいきたいと思います。

続く。