仙名彩世という宝塚史上の名采配

仙名彩世の退団発表から1日が経ちまして、
会見の様子もなんとなく漏れ聞こえてくるようになりましたね。
彼女らしい爽やかさと、劇団らしい無難な内容だったみたいですが。笑

さて、仙名のトップ就任から今回の退団までの流れを見るに
改めて彼女の舞台人としての覚悟と、劇団の名プロデューサーっぷりは凄いなと思ってしまいます。

仙名彩世といえば、94期生の首席として入団し
歌ダンス演技三拍子そろった実力派でありながら新公ヒロに選ばれず
別格路線としてその実力を磨いてきましたが
その努力がついに認められ、トップオブトップの相手役に選ばれる…という

地味な優等生なら誰もが憧れるシンデレラストーリーを
宝塚で体現したとても稀有なジェンヌでした。

けれどトップ就任後も
ポスターの写真に乗らないし、
お披露目の『邪馬台国の風』は超駄作だし（彼女に罪はないけど）
話題作『ポーの一族』はまさかのトップスターの母親役だし
挙句まさかの4作退団。

おおよそ大切に扱われている印象はありません。
ここまであんなにも努力してきたのに、です。

その様を見て、ほとんどの人が「可哀想だな」と思うことでしょう。
果たして彼女は本当に不遇で「可哀想」だったのでしょうか？

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裏を返してみます。

彼女が路線に乗れなかった理由、
それはビジュアルただ一点だと思います。

(私は好きな顔ですが)

ですから、正統派ヒロインをやろうものなら、
もしも麗しい姿でポスターにデカデカと載ろうもんなら
ブスだババアだアゴだと叩かれていたのではないでしょうか。

また、彼女が明日海と添い遂げ退団を選んだ(5作以上)としたならば
もしかしたら棚ぼたトップのくせに居座り過ぎだとか
明日海単独のサヨナラショーが見たかったのにとか言われたかもしれません。
間違っても婿を取ろうもんなら大炎上していたことでしょう。

彼女は徹底的に、地味で可憐で控え目で、
決して出しゃばり過ぎず、だけど素晴らしい努力家で、
その技術で明日海を支えた…というイメージを劇団側は与えてきました。

それは彼女のスターとしての資質を見たときに、
「可哀想な仙名」という判官贔屓的な人気を得るとともに、
無駄なアンチを作らないようにした、という意味で完璧だったと思います。

ふり返れば、歴代花組トップ娘役って
直近から花乃まりあ、蘭乃はな、桜乃彩音、ふづき美世と
ブス・コネ・ババア・下手くそと存外ぶっ叩かれている人多くないですか？笑
（私がそう思っているというわけではありません）

花組という、宝塚の代名詞的存在であるトップの娘役が
そういう評価がされがちである（人を就任させる）ことがずっと不思議でした。

そういう意味で、彼女のただ一つ欠点であるビジュアルを極力排したことは
私は劇団の優しさ（戦略）だったんじゃないかなと思うのです。

何よりも、タカラジェンヌでありストイックな舞台人である明日海の相手役に
歌ダンス演技が完璧超人である仙名を選び
宝塚の代名詞・花組の公演の質を高めることを優先したことは、
劇団の英断だと拍手を送りたいです。

タカラヅカ的な美しい並びよりも
トップ2人の技術力の高さに注視し、その魅力を引き延ばしたこと。
それが100周年以降も宝塚人気が衰えぬ、見事な采配の一つだったと思います。

そういう意味では、例えおおよそ王道のヒロイン像でなくとも、
仙名にしか出来ない役と演技で、演目を、花組を、宝塚を、
素晴らしい場にしたことは間違いありません。

そして前公演『MESSIAH（メサイア） −異聞・天草四郎−』では、
人々のメサイアである明日海がただ一人愛し、ともにハライソに行こうと夢見た、
慈悲深き聖母を演じたなんて、トップ娘役冥利に尽きると思いません？

そしてその成功を手にして今、
たった4作で辞める決断をしたという完璧過ぎる物語。
非の打ち所がありませんね。

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この引き際の美学って、最近の宝塚でよく行われています。

連続大入りの大人気コンビでありながら5作で退団した早霧・咲妃や
苦労の末トップになったものの3作で退団した北翔とその相手役・妃海など。

間違っても「エリザベードを演じたかったので1作退団を伸ばしました」
なんて言わない潔さがさらに評価を高めた、という面もあると思います。

そういう意味で彼女は、最後の最後まで仙名彩世を演じきったんだな、と思うと同時に
そう采配した歌劇団はやはり名プロデューサーだなと思うわけです。

でもさ、やっぱり4作は短ぇよ!!（ファンの叫び）

そして気になるのは明日海りおの去就ですよね。

果たして、花組の今後やいかに。

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