No.1~2 もこちらから⬆️
車に収まった様子なので、んじゃ私も……などともぞもぞ身支度を始めた時に、今度は小豆色のスクラブ
を着た女性に声をかけられた
『奥様ですか? 私◯◯病院の◯◯科で医師をしてます△△です。これから搬送につきまして少しご説明をさせていただきますね』
説明なんて搬送中にでもできそうなもんだけどなあ? と素人考えに思いつつお話を聞くと、びっくり仰天
『こちらのドクターカーは私共2名の医師が付き添いまして、これからご主人の処置を行いながら病院へ搬送します。
ですのでご家族様は別の方法で病院へ起こしいただく形になります。こちらが当病院の地図と電話番号です。病院は駅から近いです。または専用の送迎バスが順次 出てますので、なるべく公共機関で来院されるのをオススメします。
どうしてもお車で向かわれる場合は、何分とても動揺もされている状態だと思いますので、くれぐれも無理なく安全運転で起こしください』
てっきり同乗して旦那共々いっしょに連れて行って下さるものと思いこんでいたので、ここで頭が真っ白け
素人目には、ドライバーさん横の助手席が空いてそうな感じだし(ドクター2名とドライバーさんの合計3名で)念のため確認させていただき……
『あの、あの。すみません、なんとか私1人だけですし、いっしょに乗せていただくことは無理なんでしょうか? 』
てきぱきと的確に説明を終えつつある先生は気の毒そうに、小さな地図入りのカードを渡してくれながら
『すみません、この車は通常の救急車とちょっと異なり、専用の医療機材もびっしり詰まってまして。その中のごく限られたスペースで、患者さんへ最善の処置をとるために医師の我々が動き回るので、ご家族様をお乗せすることができないのです』
たぶん毎度毎度、先生は私のように狼狽する家族とのやり取りに慣れておられるのだろう。簡易地図と電話番号がデーン‼️ と記載されたパンフレットが物語っとる
『ま、まあ……そ、そ、そうなんですねドクターカーって……』
『そうなんですドクターカーって』
『なるほどなるほど……そういうことでしたか、ドクターカー……』
そうと聞けばぐずぐずはしてられない。一刻を争い、無駄話などする猶予のない今
車の屋根でもいいから私も載せてけれー! など傍若無人な我が儘は申せぬ。
『わ、分かりました、ではでは、あの……主人を、主人を何卒どうぞよろしくお願いいたします。私もすぐに追いかけますので』とお願いし
車にすでに乗っかった旦那へ
『あんた! 私もすぐに追いかけるから頑張ってね! 』と外から声を張れば
旦那も同じく、私がついてくると思っていたので
『ええー? なんでなんで? そうなの? お前いっしょに乗せてもらえないの? 』と点滴と血圧のせいかむくんできた顔で不安げに言う
不安だよね
もしかしたら道中、破裂寸前の血管がどうにかなって、これが最後の別れになるかもしれんし……とか。感傷的なことは考える時間ももはやなくて
『なんかね、そうなんだって。別々になるよ。この車は先生達がいろいろ処置しながら連れて行ってくれるから。だから良かったね、安心して寝て先に行きな~私もタクシーかなんかで後から追いかけるからさ。向こうの病院で会おうね! 』
とカラ元気を絞り出して伝えると
『へーそっか。分かった~んじゃな✋』と管だらけの手を軽く上げた旦那。これが見納めにならんことを願いつつ。その脇へ直ぐ様 先生も乗り込む。
なるほど、我が儘ボディオバハン(当時の我らは自他共に認めるメタボ夫婦)がお邪魔する余地など在るはずも無い!
スリムビューティー先生すら、いっぱいいっぱいな空間。よくよく見れば、外観の見た目は似てても非なるもので普通の救急車輌より一回り大きな気もする。
何より車体サイドへ書かれたコードブルー的な青字
『DOCTOR CAR』がめちゃめちゃ頼もしい! 山Pドクターおらんけども!
ハッチが閉じられ、まもなくドクターカーは回転灯を回して、飛び立つ。いや走り出す。病院のロータリーから出て行くのを呆然と見送った後、気張ってた私はへなへなと腰が抜けたようにしゃがみ込んだ
いっしょに見送ってくれた先生が
『大丈夫ですか? 奥さん』と声をかけてくれたが。あんまり大丈夫でもないんだけど、のんびり気儘にへこたれてる場合ではない! 私も追いかけなねば! 根性! ダーッ‼️
しかしである。東京方面! 都心部なんて電車でどうやって行ったっけ? オラが村は車社会。door to door 生活。Tokyoはたまに行くが、車でだよ! 東名高速と首都高使ってしかねーど? (しかも旦那が運転🚙高速道路乗れないワタス)
電車なんて15年以上? 白血病になってしまった母のために、横浜市大病院へ看病行脚した以来に乗ってね~切符の買い方も忘れたし。つか今はSuicaだったけ? どうすんだYO
恥を忍んで先生に
『あのあの。あちらの病院へは、果たしてどうやって行ったら最短でしょうかね? 山から出て来たもんで、こちらも(まあまあな規模の街。人口40万)土地勘なくて皆目わからないのですが……』と相談すれば
若い先生は
『ここからはバスで最寄り駅に行ってもらって。JRは上り本数あるから、うまく乗れれば横浜のちょい先だから、たしか40分くらいで行けると思いますよ。そこから乗り継いで10分もしないかな? 』などと丁寧に教えてくださった
くださったんだけど、そのアクセス方法がポンコツな私には大難関で
持病があるため電車やバスなどの乗り物に1人で乗れそうにない。今ここに1人取り残された状況ですらギリギリチョップ。朝から緊張で飲まず食わずの貧血&低血圧&低血糖気味。都心部へ向かう混み混み電車なんて、考えただけでもぶっ倒れる自信100%という情けなさ不甲斐なさ……
『そうですよねそうですよね……電車だとなるほど……ちなみに車、タクシーだと時間的にどのくらいですかね? 』
『え! 車だとどうかなあ~高速使っても途中までだし。下道もあの辺りは渋滞だらけだから1時間半はかかっちゃうかなぁ? 電車のほうが断然早いですよ奥さん』
ともう一方の先生が断言される。打ちのめされた私は、ノロノロと吐くように
『で、ですよね……ですが私あのそのぉ、パニック持ちでして。電車とかちょっと、いやかなりムリめで……』
『あ~なるほど! そうなんですね! ワアそれは大変だなぁ……うーん困りましたね。ん~』
とパニック障害にご理解あるのか親身に同情していただくものの。まだまだ午前中であるし、先生方もお忙しい身なのだから、ポンコツな私ごときにいつまでもお手間とらせ煩わせてはならぬ。ここは早々にお暇せねば! 今までのお礼を重々に申し上げ、タクシーで向かう旨を伝えて先生方とは失礼する🙇♀️
こうなりゃ仕方ない。とにかく急いで旦那を追いかけるのが最優先事項。急がなきゃならないんだが、いかんせん私1人でも可能そうな手段は、タクシーの選択しかないたぶん1万? 2万弱? コースだろうけども背に腹はかけられぬ。
救急外来受付に行き、病院に来てくれそうなこの界隈のタクシー会社の電話番号を聞き、配車を頼む。
このままこちらへ入院するものとばかり勝手に予想していた私は、簡単な着替えセットなどを馬鹿丁寧に詰め合わせたデカめ鞄と、身ぐるみ剥がされた旦那のダウンや厚手のトレーナー、靴なんかを入れた袋(45リットルサイズのビニール袋を恵んでいただく。あれこれデカイからかさ張るの何の💦)なんかをのそのそと持ち運び、まもなくやって来たタクシーへ乗り込んだ。
乗り込んで、これまた女性ドライバーさんに『◯◯市にあるこの◯◯病院へ向かってください。高速でもなんでもいいので急ぎめでお願いしやす』と頼む
頼むとここでまた、予想だにしないアンビリーバボーな事態が発生
続く