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柳阮柏公は徐家と互いに固く約束の後、徐府を辞した。
大夫人は抜け殻のようになって座り込んだ。
「は〜っ…まさか、、このような日が来るとはなあ…」
暖々は幼い。
太子妃に推挙されるとは寝耳に水。
徐家にとっては全くの有難迷惑な話であった。
そこへ柳公が飛び込んで来られお救い下さった。
とにもかくにも天は暖々を庇護して下さった。
これも偏にご先祖様と仏様のお陰と大夫人は念珠を繰りながら念仏を唱えた。
十一娘は後ろめたさを秘めながら令宣の後ろを付いて歩いていた。
西跨院への道すがら、令宣はずっと沈黙していた。
十一娘はそっと話し掛けた。
「旦那様…」
令宣の声は固かった。
「何故黙っていた」
「旦那様ごめんなさい…旦那様にわざわざ報告するようなそんな大したやり取りだとはとても思えなかったんです。・・単なる子どもの感傷だと」
本当に暖々と柳君の事はあのまま何事もなく過ぎ去って過去の思い出になる筈だった。
それが思いも掛けない事態に発展してしまった。
十一娘には分かり過ぎる程分かっていた。
旦那様は衝撃を受けておられる。
暖々が異性と喋ったり交流を持つだけでも旦那様はお気に召さない。
でも旦那様、徐々に大人に近付いてゆく成長というものは誰にも止められないのです。
西跨院に落ち着いてからも令宣の懊悩は続いた。
十一娘の言いたい事も分かる。
分かるが令宣には受けとめられなかった。
あの可愛い暖々は何処へ行ってしまったんだ。
お父様と結婚したいと言ってくれた暖々が遠くへ離れて行ってしまう。
令宣はがっくりと肩を落とした。
令宣は懐から暖々が刺繍してくれた手巾を取り出すとしみじみと眺めた。
それは令宣の手に柔らかく馴染んで心を和ませてくれた。
仕事に倦んだらこれを出して眺めると癒されたものだ。
この手巾を先月の私の誕辰にくれた時の事はよく覚えている。
「元気そうな鶏の図柄だな。これはお前の飼ってる曹操か?」と尋ねたら
暖々は「違うよこれは鳳凰だよ!」と言って怒ったな。
その怒って膨れた顔も可愛らしかった…。
令宣ははっと気付いた。
さっき柳公に十一娘が話していた事を思い出した。
「十一娘、暖々は柳公の孫に守り袋を作ってやったと言ったな!」
十一娘は覚悟した。
とうとう来たかこの瞬間が。
「…はい」
「暖々が手作りの守り袋を…柳愈にくれてやったのは一年も前と云う事か?」
その通りなのだ。
旦那様に手巾を差し上げる一年も前に。
愈の為に猫に見える虎を刺繍したのは暖々。
十一娘は気の毒そうな顔でおし黙った。
がっくりと…令宣の肩はまたもや落ちた。
隣の部屋では桔梗と明々が手を取り合っていた。
「旦那様が…遂に知ってしまわれた…」
「我々が墓場まで持って行く筈の機密を!」
ひえ〜〜っ…
青くなった二人は西跨院から早々に下がる算段を巡らせる事になった。
十一娘は思い詰めていた。
こうなったら旦那様を癒す方法はあれしかない。
十一娘は早ばやと夜着に着替えると二人の侍女を下がらせた。
今夜は旦那様ととことん◯◯…夜が更けるまで…
いいえ、朝まで…
旦那様あ〜
あ…あ〜ん💕あ〜ん…いやっだめ💕もっともっとお〜
その夜寝室には令宣にねだる十一娘のあの声が幾度となく響いた。
流石の令宣も疲れて来た。
「もう…いいだろ?」
けれど十一娘はアレを離さない。
「旦那様〜〜ダメっあっあ〜んもっとお〜もっと欲しいのお〜」
令宣は大虎になった妻の手から何とか大徳利を離させようと苦労していた。
「十一娘…もういい加減に寝なさい!」
「いや〜ん、まだ飲めますう、、旦那様あもっとお〜」
「私を慰めようとしてたんだろ?何でお前のほうが飲み過ぎてこんな事になってるんだ?」
「うい〜ひっくまだまだイケますう〜💕」