え〜、恋心日記帳の1から100までの本編をランダムに読み返してみて気になるところを深堀りしてみようかとか、補足的に書いちゃおうとか

そんなセクションです。(順不同)




【13話〜14話】

「恩寵の錦の取り替えは事実!喧嘩の指示は嘘!

旦那様はよく調べもせずに私を叱責なさいました。

そのような理不尽は到底受け容れられません!」


令宣は柄にもなくカっとなって黙り込むと立ち上がり西跨院の部屋をズカズカと出ていった。

驚く照影を横目に令宣は頭を振りながら呟いた。

「全く!手のつけようがない!」

令宣の説教に対して十一娘は小さくなるどころか完全に反旗を翻した。

思わぬ反撃を受けた事に令宣は憤然とした。

「旦那様〜…奥様に会いに来られたんじゃないんですかあ〜?…また喧嘩ですかあ〜?」

大股で歩き去る令宣の後ろを照影が何か言いながら付いて来る。

歩きながら頭を冷静に保とうとすると先程の十一娘の言い分も分からないではない。

確かに陶乳母が喧嘩を売った事まで此処に来て間もない彼女のせいにしたのは誤りだった。

錦の取り替えも彼女の預かり知らぬ事だ。

ひとつ今日新たに分かったこと。

それは彼女は令宣が今まで知り合ったどの女性とも違うと云う事だ。

彼女の態度からは恩寵の錦が目下の者に奪われた悔しさが伺えなかった。

だから争いがあっても平然としている。

彼女が怒ったのは自分に対して不当な評価をされたからだ。

この性質は令宣が元娘や妾から感じた事のない清廉さを表している。

女というものは身を飾る事に執念を燃やす。

今日わざわざ半月溿にやって来た喬蓮房がそうだったではないか。

彼女からは人の物を奪い取ってでも着飾りたいという貪欲さを感じた。

それは令宣の最も厭う性質だ。

だから母が喬蓮房を好いているのが理解出来なかった。

私は見せ掛けだけを信用しない。

長く付き合っていけば外見は心映えを自ずと映してくれる。


これまで自分は元娘の事も妾達の事も殊更に考えた事がなかった。

それなのに恩寵の錦にこだわらない十一娘の内面が本物ならば…と。

…令宣はいつしか彼女の事を深く気に留めている自分に気付いた。



冬青が心配した。

「奥様…旦那様にあんなに口答えして大丈夫ですか?」

「いいのよ…彼に寵愛されたいと思ってないわ」

「でも…」

そこへ琥珀が帰って来て報告した。

「奥様、聞いて来ました!旦那様は喬姨娘にあの錦を着るなと釘を刺されたそうです」

途端に冬青は明るい顔になった。

「奥様!旦那様って公平な方ですね…見直しました!」

十一娘は単純に喜ぶ冬青に笑った。

「私達が間違った事をしなければいずれは分かる事よ」

琥珀が頷いた。

「でもやはり喬姨娘達のやり方は許せません」

十一娘は二人の憤りを収めるかのように静かに諭した。

「降りかかる火の粉は払うしかないけれど…無用な争いはしたくないの。折を見て私からも喬姨娘には忠告してみるわ」