北陸・石川県新潟県日本海側を襲った地震で被災された方々に心からお見舞い申し上げます。


私は燈籠祭りが好きだ。

旦那様も燈籠祭りが好きだ。

今年も燈籠祭りの夜がやって来た。


今年は冬青が居ない初めてのお正月。

今夜は最強の旦那様がついていて下さるので

侍女には休みをあげて夫婦二人でそぞろ歩きを楽しむ事にしよう。


そうは言っても私達が気になるのか

侍女は後ろの方から照影と一緒に追いて来る。


はしゃいでざわめく人々の声

爆竹の音があちこちから聞こえる。

行き交う人々の顔も和やかに美しい。


旦那様がしきりに目配せしてくる。

「旦那様、どうなさいました?」

「いいから」

そう言って握っていた私の手を引っ張ると

急に小走りに駆けた。

人混みを器用に縫ってあれよあれよと言う間に

後ろの二人をまいてしまった。


急いだので軽く息が弾んだ。

後ろを振り返るともう照影と侍女の姿は見えない。

旦那様が私を見て少年のような笑みを浮かべている。


旦那様はそこから更に

太鼓橋の頂上まで私を連れて登った。

川面の光景にうっとりと見惚れる。

水に浮かぶ灯りと吊るされた色とりどりの灯籠が水面に映えて本当に綺麗だわ。


遠くの橋から私達を見つけて指差している照影がチラと見えた。

「旦那様…」

気がつくとがっちりと背中を抱かれて

旦那様の顔が近い。

私の頬が朱く染まったように見えたなら

それは、きっと

燈籠の灯りに照らされているから。

あ、旦那様、

ちょ、ちょっと待って

お忘れですか

旦那様は・・仮にも候爵ですよ…

そんな・・・

寸前で手にした山査子飴を彼の唇に付ける。

「またやったな…」

旦那様は笑って私の手から飴を奪った。

そこからは…

私はすっかり旦那様に翻弄されてしまったのだった。