いよいよ東京でのオーディションが明日に迫った。
きちんとしたオーディションを受けるのは、6年以上ぶり。
送られてきたのは9つのシーン台本で、1シーン1P。
どのシーン、役柄を振られてもできるように、全てを覚える。
「台本を見ながら演じていただいても構いません」
書いてはいるものの、見ながらなんてカッコ悪いことしたくない。
けど、全て覚えたからと言って受かるかどうかはまた別の話。
覚えるための時間、東京への交通費が無駄に終わる可能性もある。
なんてコスパが悪い仕事だろう、とは思う。
なぜ俳優業なのか。
他の俳優がどう落とし込んでいるのかはわからないが、
人より「認めてもらいたい」欲求が強いんだと思う。
自分で出した答え、自分の人生から搾り出した答えが、
目の前で評価され、ありか無しか判断される。
「それ面白いですね」
その一言が聴きたくて、人生を認めてもらいたくて、
時間と体力、時には身銭を捧げる。
そうしてできた答えの塊が、作品となって、観てもらうことができる。
コンプレックスが多くて、人に勝てる秀でた能力も無くて、
それでも生きてていいんだよ、と認めてもらいたいから。
自分が生きてきた時間、見てきたものを搾り出して形にする。
自分の中にしか答えはない。