一緒に暮らそう・3 | お気楽ごくらく日記

お気楽ごくらく日記

白泉社の花とゆめ誌上において連載されている『スキップ・ビート』にハマったアラフォー女が、思いつくままに駄文を書き綴っています。

「おっ。旨そう。一つ頂き!」

 

その言葉と共に背後から伸びて来た腕を蓮は瞬時に叩き落した。

 

「痛っ。」

 

相手の腕が遠のいたのを確認してから、蓮は弁当箱に蓋を被せて、魔の手から守った。

それを見ていた摘み食いしようとしていた犯人は口を尖らせた。

 

「敦賀君のケチ。一つぐらいくれたっていいだろう?減るもんじゃなし。」

 

「いや、貴島、それは確実に減るから。蓮が怒るのも尤もだと思うぞ。」

 

蓮と貴島と呼ばれた男の攻防を見ていた、二人の先輩社員である社が言葉を添えると、蓮はうんうん頷いた。

 

「お前、今日、総務課の友美ちゃん達とランチに行くんだと昨日言ってなかったか?」

 

蓮は言外に、なぜここに今お前が居るんだと言うと、貴島は全く悪びれた様子を見せる事もなく言った。

 

「『今日は、友達とごはんに行くから、ごめんね♡』って、女性に言われちゃったら、引き下がるしかないっしょ?」

 

要は約束を取り付けていた女性陣たちに振られたらしい。

 

貴島と言う男は仕事は出来るのだが、自他ともに認める女性好きで”お友達”の範囲内でなら付き合えると言う女性も多いのだが、将来を見据えての交際となると、”ちょっと・・・・”となるらしい。

 

「それにさ。珍しいじゃないか。いつもなら、社内で仕事をしている時も、昼飯は外か社食で済ませている敦賀君が弁当を食ってるなんてさ。しかも、手作りのその弁当めっちゃ旨そうなんだけど。一口ぐらい分けてくれたってっていいじゃないか。」

 

往生際悪く貴島が抗議したが、蓮はそれを一刀両断のもとにばっさり切り捨てた。

 

「断る!!」

 

何故なら、2年近くも片思いしていた相手が自分のためにと作ってくれたものだからだ。

名目上は一宿一飯のお礼だが、昨夜の夕ご飯も今朝の朝食も超絶に旨かった。

いつもは少食の蓮だが、今日ほど昼休憩が待ち遠しいと思った日はなかった。

 

ちなみに今日のお弁当の中身は、出汁巻き卵、ピーマンの肉詰め、金平ごぼう、ポテトサラダである。

別容器には、キョーコが昨夜買い物時に吟味していたフルーツもある。

 

その貴重なお弁当を横から掻っ攫おうなんて、蓮には我慢ならなかった。

 

「あ~あ。残念。仕方ないからいつもの所に飯でも食いに行くか。」

 

そう言って貴島は部屋から出て行き、社は意味ありげに蓮を見てにやにや笑っている。

 

《つづく》

 

某魔人様の呪いをついに避け切れずに、前・中・後編では収まりませんでした。←単に文章を纏めるのがダメダメなだけ。

何話続くか皆目見当も付きません(←オイ)がお付き合いくださったら嬉しいです。