不破ですが? | お気楽ごくらく日記

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白泉社の花とゆめ誌上において連載されている『スキップ・ビート』にハマったアラフォー女が、思いつくままに駄文を書き綴っています。

不破松太郎。高校2年生。

松太郎は、日本でも有数の老舗旅館『松乃園』の跡取り息子であり、一応、トップアーティストと言う肩書きのある歌手である。


誰よりも目立つことが大好きな松太郎は、親の後を継いでも旅館だと、男の自分は決して表に出ることは出来ないことを知っており、それがイヤでイヤでしょうがなかった。


もともと、音楽が好きだったことも手伝って、中学の頃からライブ活動をやっており、両親の猛反対を押し切って、去年歌手デビューを果たしたのだ。

その際に、両親からは絶縁宣言をされたのだが、若く無謀な松太郎は、一年経った今でも堪えた様子が全くない。


当然、家を追い出されたのだが、事務所が用意してくれたマンションに、マネージャー(女)と一緒に暮らしている。


また、松太郎は、もともと自分の名前が昔から嫌いで、”ショー”の呼び名で通していたのだが、歌手デビューを機に、自分の嫌いな本名とも縁を切ろうと芸名を”不破尚”にし、完全に周りには”尚”で通している。

そんな松太郎が、この高校に入学したのを心底後悔していた。

この高校は、松太郎自身が志望して入ったわけではなく、事務所側の、「芸能人と言えども、今時、高校ぐらいは出ておきなさい。」と言う方針に従って、芸能クラスのあるこの高校に入ったのだが、入ってすぐに激しく後悔した。


その最大要因は、伝説のスーパーウルトラ男子高校生・敦賀蓮と蓮の友人である社倖一の存在である。


松太郎は、歌手デビューを果たしただけあって、美形の部類に入り、この高校に入るまで地域で一番もてていたし、それが自慢でもあった。


当然の事ながら、高校でも同じように、自分が一番もてると確信していたのに、蓋を開ければ何とやら。

まさか自分よりももてる男が二人もいようとは、まさに想定外だった。


校内プラス二人の通学路に住んでいる(あるいは近隣の学校や 会社に勤めている)女性陣たちの心をたちまち虜にし、この周辺の人気は敦賀蓮と社倖一の二人が人気を二分していた。


ちなみに、人外の美しさを誇る蓮に対して、どうやら女性陣の間で不可侵条約が結ばれているらしく、告白されている様子はない。

しかし、蓮よりも人間味を帯びている社の方はちらほらと告白されているらしい。


それまで自分に過剰なほど自信を持っていた松太郎は、この事実に愕然とした。


松太郎は全く気付いていなかったが、これは当然の帰結である。

老舗旅館の跡取り息子として、周りから蝶よ花よと、思いっきり甘やかされて育てられた松太郎は、全てが自分中心に回っていないと気がすまない我が侭で傲慢な性格である。

それに加えて、まだ十代だと言うのに、女性を自分の×欲のはけ口としか見ておらず、そんな人間が顔が良いからと言うだけでもてるかと言えば、当然の事ながら答えはNOである。


しかも、今時の高校生を含む女性たちの男性を見る目はシビアである。

中には、松太郎を慕う奇特な女性もいるにはいるのだが、数えるほどしかいない。


さらに松太郎が面白くないのは、認めるのは癪だが、自分より美形の蓮が、自分の幼馴染である地味で色気のない最上キョーコにちょっかいを出しているという事実だ。


キョーコは、親の都合上、物心がつく前から一年の大半を松太郎の家に預けられて育った。

だから、松太郎とキョーコの関係は幼馴染と言うより兄妹に近い。


そんな特殊な家庭環境で育ったせいか、キョーコは昔から嫌な顔一つせずにに、松太郎の実家の手伝いを進んでやっていた。

松太郎の両親は気そんなキョーコを自慢に思っているのが、子供心にも分った。さらには、両親が行く行くは、松太郎とキョーコを結婚させようとしていたのも、松太郎は気付いた。

キョーコは、そんな松太郎の両親の思惑などよそに、「ショーちゃん、ショーちゃん。」と言って追いかけていたのだが、それも松太郎にとってうざいだけだった。


が、話はここに来て180度変わった。

どういった心境の変化かキョーコは高校入学を機にアパートを借りて一人暮らしを始めたらしいのだ。

もっと面白くない事には、あの敦賀蓮がキョーコにちょっかいをかけているという事実。


これまでキョーコを邪険にしていたのに、他の男がコナを掛けているとなると、惜しくなったのだろう。

そんな松太郎の穏やかでない心中を他所に、蓮とキョーコの仲は親密度を増していった。


ある時、ツアーやレコーディング等で約3ヶ月ほど学校を欠席していた松太郎は、久々に登校して信じられないものを見た。


仲良く手を繋ぎ帰りかけている蓮とキョーコ。

キョーコの耳元に口を近づけて何やら囁く蓮と、顔を赤らめながらも擽ったそうにしているキョーコ。

しかも、二人の手をよくよく見ると、所謂カップルつなぎをしている。


この段になって、初めて松太郎は失った物の大きさに気づいた。


不破松太郎。高校2年生。

逃がした魚の大きさにようやく気付いた初夏の午後。

《おわり》


この後、ちおりん→キョーコ→蓮・リターン→真打でローリィと話が続いて、このシリーズは終わる予定です。

あくまで予定なので、順番等、変わるかもしれません。