社ですが? | お気楽ごくらく日記

お気楽ごくらく日記

白泉社の花とゆめ誌上において連載されている『スキップ・ビート』にハマったアラフォー女が、思いつくままに駄文を書き綴っています。

社倖一、高校2年生。

伝説のスーパーウルトラ男子高生・敦賀蓮の中学時代からの親友である。

自由自在にブリザードを発動させたり、素手で機械を触るとクラッシュさせることが出来たりと中々にユニークな体質の持ち主でもある。

一見、近寄り難い顔立ちに反して笑うととても人懐っこくなる表情とのギャップの差に、秘かに身悶えている女子生徒が大勢いる。更には、そんな特殊な体質も可愛いと、人気急上昇中で、校内では蓮と人気を二分している。


そんな社の秘かな楽しみは、現在遅い春(と言っても絶賛片思い中)を満喫している蓮を弄り倒すことである。


蓮の想い人を見る度に、犬のようにエア尻尾をぶんぶん振り回す様子とか、からかうと乙女のように真っ赤になる蓮が初々しくて楽しんでいる。

が、ついつい度を越してついうっかり闇の大魔王を召喚してしまうこともあるのだが、それもスパイスの一つとして、楽しんでいる。


そして、現在。美術を選択していないにも係わらず、社は体育館でスケッチをしていた。


なぜ、美術を選択していない社が体育館でスケッチなんぞをしているのかと言うと、それはひとえに美術教師、上尾の暴走・・・・・ではなく粋な計らい(上尾・談)によるものである。

曰く、『美しいものは、みなで愛でるものよ。』と言う、よく分かるような分からないような理由で、月に一回、全校生徒が体育館に集まり、ここでスケッチをしている。


中には、高校を卒業して何年ですか?とつい訊きたくなってしまうような妙齢なご婦人方もどこをどうやって手に入れたのか、制服を着て潜り込んでいる。もっとも、本人たちは、見事に女子高生になりきっているつもりらしい。

ちなみに、女性教師陣も自主的に参加している。


社の横には、蓮の想い人である最上キョーコが座り、真剣な表情で鉛筆を走らせている。


社は誰にも言ってないが、キョーコに一目置いている。

色眼鏡で蓮と社を見る人間が大多数を占めるなか、キョーコだけが他者と分け隔てることなく、全く普通の態度で二人と接することの出来る稀有な存在だからだ。


そして、壇上に目をやれば、社の友人であり、伝説の高校生、敦賀蓮がアンニュイな表情でポーズを取っている。

色気ダダもれなその様子に、体育館のあちらこちらからハートマークが飛び交っている様子が伺えて、社は苦笑した。


再度、キョーコに目をやれば、つい先日蓮に告られたのがまるでなかったかのような顔でスケッチしている。


社は一つ溜息を吐くと、蓮の告白現場に居合わせたことを思い出した。

その日、蓮を探して来てほしいと教師に頼まれた社は、ちょうど昼休憩だったのもあって、おそらく蓮は屋上にいるだろうと中りをつけて、まっすぐ屋上に向かった。


「最上さん、付き合ってほしい。」


屋上に続くドアの前に来た時、屋上から蓮の声が聞こえてきた。

付き合ってすらいないというのに惚気を散々聞かされていた社は、ようやく告白した蓮に拍手したい気分だった。と同時に、キョーコがどう答えるのか興味があり、不謹慎だと分かりながらもドアに隠れて二人の様子を伺っていた。しばらくの間をおいて、


「どこへ?」


「・・・・・・・・・・・・・・」


と、今時の小学生でも返さないような返事をしたキョーコに社はずっこけそうになった。

おそらくは、当事者である蓮は、完全に豆鉄砲を食らったような顔をしているのであろうことは容易に想像がついた。


「どうしたの?敦賀君?いつ、どこに付き合えばいいの?」


追い打ちをかけるようなキョーコの返事に、社は吹き出しそうになったが、こんな所で聞き耳を立てていたと、後で蓮に知られたらどんな目に遭うか分からない。



キョーコに告白をきれいにスルーされた蓮は、最初こそ意気消沈していたものの、数日経てば元に戻っていた。

蓮は、今回の失敗にもめげずに何度も告白することを決めたらしい。


社倖一、高校2年生。

蓮をおちょくりながらも、蓮の恋が無事成就することを社は秘かに応援している。


《おわり》