タイトルからもお分かりの様に、佐野菜見先生の『坂本ですが?』をアレンジ・・・・・・してるんだろうか、これ・・・・・・したものです。一応m(_ _)m
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とある高校には、在校生でありながら伝説になっている男子生徒がいる。
名を敦賀蓮。2年A組に在籍中。
眉目秀麗。文武両道。冷静沈着。品行方正。etc・・・彼を表す言葉は、誰に聞いても、出て来るのは賛辞のみ。
しかも高校生でありながら、大人顔負けの徹底したフェミニストとあれば、女性陣が放って置くはずもなく、彼が在籍している学校をはじめ、幼稚園の園児に始まり、近隣の女子学生やOL、はては高齢のご婦人方の間で、秘かにファンクラブが結成されている。(ちなみに最低年齢は3歳、最高年齢は90歳!!)
彼を一目だけでも見ようと、登下校時にはそこかしこに多数の女性が隠れているらしい。ちなみにほとんどの女性たちは写メを撮り、時には写メの交換もしているとか何とか・・・
校内でも、彼が通るとモーゼの十戒のごとく人波が割れて通路が現れるさまは、一見の価値ありとか何とか。
極めつけはどこでどう調達したものか、その学校の制服を着た、おばちゃん・・・・ではなくお年頃のご婦人方を校内で見かけるのも珍しくなく、その度に教師陣が丁重にお帰り願っているらしい。
あまつさえ、彼の姿を目にした飛んでいる鳥が、うっかり木にぶつかって落ちるのも当たり前の風景だったりする。
成績も優秀で、帰国子女である蓮の英語の発音は完璧で、英語、とり分けヒアリングの担当教師は、授業の大半を蓮に任せているとかなんとか。
運動神経も抜群で、どこのクラブにも所属していないにも拘らず、あちこちの実業団やプロのチームからも声がかかっているらしい。
そんな彼であるが、秘かに思いを寄せている少女がいる。その少女は、そんな彼の評価を気にすることなく、ごくごく普通の男子高生として蓮に接している。
蓮は、過剰な世間の評価に少々辟易していたので、普通のクラスメートとして接してくれる彼女に、自然と惹かれて行った。
その日も、上の方に手が届かないのだろう。件の少女がピョコピョコ飛び跳ねながら黒板を消していたのを蓮は見逃すはずもなかった。
「最上さん、良かったら手伝おうか?」
「あっ。敦賀君。ありがとう。」
にっこりとキューティハニースマイルを向けられた蓮はよろめきながらも、空いている黒板消しを手に彼女の手が届かない上の方を消した。
「今日の日直、石橋君もだよね。最上さん一人に黒板消しをさせて、彼はどうしたの?」
「石橋君はね。古典の先生に頼まれて、みんなのノートを集めて職員室に持って行ってくれてるの。」
先ほどの授業が終わった後に、彼が古典のノートを集めていたなと、蓮は思いだした。
「ありがとう、敦賀君。助かっちゃった。今日はね、リクエスト通りオムライスを作ってきたのよ。」
そう言うと、彼の思い人である最上キョーコは、二人分のお弁当が入っている袋を手にすると、蓮に声をかけた。
教室のそこかしこでは、机をくっつけてお弁当を食べ始めている。教室にいない者は、おそらく学食にでも行ってるのだろう。
「お天気がいいから、屋上に行きましょう?」
ふふふと笑いながら、キョーコは歩き出した。半歩遅れて、蓮も歩き出した。
「最上さん、それ持つよ。」
蓮が手を伸ばすと、一瞬戸惑ったような表情を浮かべたものの、キョーコはすぐに、お願いできる?とすんなり蓮に弁当を渡した。
ぽかぽか陽気の下、蓮は噛み締めるように料理上手なキョーコのお弁当を心行くまで堪能した後は、念願のキョーコの膝を枕にするとごろりと横になった。
二人は休憩時間が終わるまで、他愛もない会話を楽しみながら、穏やかなひと時を過ごした。
敦賀蓮。16歳。
世間の高評価とは裏腹に、その実体は、好きな女の子に告白することなく、ささやかでちっぽけな幸せを噛み締めては、一人幸福感に浸っているただの男子高校生だったりする。
《おわり》
鳥の話ですが、木は分からないけれど窓ガラスにぶつかる鳥が時折います。
以前、職場でバーンと外から大きな音がしたので、事故か何かと思って外に出てみると、目を回した鳥が落ちていましたm(_ _ )m