君といつまでも7 ~カレンダーイラストからの妄想~ | お気楽ごくらく日記

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白泉社の花とゆめ誌上において連載されている『スキップ・ビート』にハマったアラフォー女が、思いつくままに駄文を書き綴っています。

 

            ~回想 蓮編③~

そんな俺の心のうちに気付いてるのか気付いていなのか、社長は俺の事を無視し、テーブルの上にバサリと何やら書類を置いた。


「最上君が母親の話になると、見てるこちらまで辛くなるような表情をするのが気になって、調べさせていたんだが。今朝の最上君の話を聞いて、急いで更に詳しく彼女の生い立ちを調べさせた結果がこれだ。」


戸惑っていた俺達に、社長は、とにかくこれを読めと言った。が、それでも、彼女のプライバシーに関わるそれに誰も手を付けようとはしなかった。無為に時間が過ぎた頃、


おずおずと、椹主任が「では、私から。」と言って、目を通しはじめた。が、普段、温厚な椹主任の顔が段々険しいものになっていった。


なんとなく、年齢が上からの順に松島主任、社さん、俺の順に読んだが、それを読み終えた後の全員の顔が険しいものになっていた。


俺が思いもよらなかった事実が書き連ねてあった。


『最上キョーコに関する調査書


最上貴と最上冴菜の、長女として19××年12月25日に誕生。

しかし、2歳の時に父・貴が交通事故で他界。

信号待ちしていた2人の所に居眠り運転の車が突っ込んできたのが原因。

キョーコは、貴が身を呈して守ったため一命を取り留める。


が、母・冴菜は最愛の夫・貴の死を受け入れられず、だんだん精神を病んでいった。娘のキョーコに虐待し始めた。

最初は言葉だけだったのが、次第にエスカレートし、幼いキョーコに対し暴力を振るう様になっていった。

それを見かねた、冴菜の友人である不破夫妻がキョーコを預かることを申し出る。

こうして、キョーコは、物心つく前から不破家に預けられた。


しかしキョーコにとって心休まる日は、長く続かなかった。

不破夫妻は、自分たちの嫡男である松太郎と同様に愛情を注いで育てていた。

しかし、夫妻の経営する松乃園に勤める者達から、大の大人でも耐えられないほどの罵詈雑言を受けた。その最たる言葉は、「親に見捨てられたくせに。」、「厄介者のくせに。」、「親に見捨てられたお前を哀れに思って拾った女将たちの役に立て!」等だった。


こうして、キョーコは齢5歳前後にして、大人たちに混じって仲居として働き始めた。


そして、もうひとつ、問題が持ち上がった。幼稚園の頃から、不破家の嫡男である松太郎に好意を寄せる同年代の女子たちから壮絶ないじめを受けたのだ。

しかし、元凶である松太郎は、そのっことに一向も気づきもせず、常に女の子を側にはべらせ、キョーコを自分の手したか何かのように扱い、それが更にキョーコを取り巻く環境を更に悪化させる一因となった。


キョーコは地元でも屈指の名門校に入学が決まっていたが、松太郎に唆され、中学を卒業と同時に二人で家出同然で上京。

松太郎の我侭により、未成年が借りるには高額のマンションを借りた。しかし、松太郎は家賃を一切入れなかった。結果、キョーコ一人が、朝早くから夜遅くまで働き、生活費をやり繰りしていた。


松太郎はアカトキより、”不破尚”の名前デビューしたが、キョーコを労うでもなく、ゴミ屑か何かのように捨て去った。』


重苦しい空気がその場に流れた。


やがて目を真っ赤にした椹主任が口を開いた。「こんな環境じゃ、最上さんじゃなくても、”愛”に希望なんか持てませんね。」


その場にいた全員が頷いた。



《つづく》