ほのぼの街のほんわか通りに、ふわっと風がふく

ほのぼの街のほんわか通りに、ふわっと風がふく

笑顔がにじみ出る(はずの)
「ゆるイラスト」とともに、
なんてことはない日常をつづったエッセイ

 

関東に住む友人が、「子鹿ちゃんが見たいから、6月に奈良に行こうと思ってるけど、都合の悪い時ある?」と言ってきました。

 

本当は私に会いたいのに、照れ隠しに子鹿ちゃんが見たいって言ってるんだな、と思っておりましたが、本当に、毎年5月中旬頃から奈良公園では鹿の出産ラッシュで、6月に奈良公園鹿苑にて『子鹿の一般公開』が行われているらしい。本当に、私は、ただの”ついで”だったらしい。

 

『子鹿の一般公開』は、奈良に住む友人に聞いても、誰も知らない、、、「子鹿なんて、うちの前にもよく来るからね」

 

結局、都合で関東の友人は来られなくなったのですが、バンビちゃんに会いたいので、一人で行ってみました。

 

会場の鹿苑を目指して春日大社への参道を歩いていると、すでに、鹿の親子に遭遇。通常、出産から鹿苑で、しばらく保護されるようですが、公園内で生まれた子鹿ちゃんもいるらしい。

 

子鹿に近づくと母鹿が攻撃してくることもあるし、子鹿に触ると人間の匂いがついて、母鹿が育児放棄をしてしまう恐れもあるので、触らず、少し離れたところから見守ってくださいとのこと。

 

お目当ての鹿苑を見つけても、誰も、そこへ行こうとしない。観光客も知らないらしい。

 

角切り場となる鹿苑は、改修工事中なものの、別の場所で、『子鹿の一般公開』は行われているはず。参道は外国人観光客で賑わっているのに、誰も行かない鹿苑の方へ不安ながら行くと、一般公開はこちらと矢印が貼ってある。

 

矢印通り歩いていくと、鹿苑の後ろにありました、会場が! いました、子鹿ちゃんたちが、うひょうひょと! 日陰の囲まれたエリアに、子鹿ちゃんたちが、ぎゅうぎゅうに!

鹿苑では、47頭の子鹿が誕生しているそう。

 

最初は、人間は、私しかいなかったのですが、遠足の小学生たちが、きゃぴきゃぴと乱入してきました。

 

「静かにしてください!」と張り紙があちこちに貼ってあるのに、静かではないではないか。「責任者出てこい!」と思っておりましたが、すぐに、子供ちゃんたちは、去っていきました。

 

そのあと、大阪のおねえちゃんの二人組が、やってきました。

 

「これが、この子のおかんなん?」

「あんたら誰?って、私らのこと、めっちゃガン見してるな、この子!」

 

と、そばに来た子鹿ちゃんを見ながらのしゃべくりが面白い。

 

そのあと、男の人、女の人が、それぞれ一人で、現れました。

 

心惹かれるものを見ると、去り際がわからなくなる私。いつまでも、見ていたい。いつまで見ていたら、気がすむのだろう。いつまで見ていても、気がすまない。「あと10秒数えたら帰ろう」と、何度も、10秒を数えてしまう。

 

写真を撮りまくったり(あまりにも膨大で、後で削除するのが大変でした)、子鹿ちゃんが前足を同時に折って座るのをじっと見ていたりしていて、ふと見ると、もう誰もいない。そして誰もいなくなっている! なんだか、ど~~んと寂しい気分になりました。

 

「もう帰ろう、帰ろう」

 

し~んとしている会場。鹿ちゃんが干し草を食べるハムハムという音だけが、聞こえていました。