細胞生物学:始原的なcGAS経路 | Just One of Those Things

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前回に引き続き、2019年度の11号目のネイチャーのハイライトより。
 

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細胞生物学:始原的なcGAS経路
Nature 567, 7747
2019年3月14日

細胞質ゾル中にDNAがあるということは、よくない知らせだ。これは、病原体の侵入や、自身のDNAが漏出するような細胞自体の損傷が起きていることを意味するからである。細胞はこのような事象に対応するために、cGAS–cGAMP–STINGシグナル伝達カスケードを活性化させることで、IKKやTBK1などのキナーゼが関与する免疫応答やインターフェロンの誘導を引き起こす。Z Chenたちは今回、この経路の活性化がもたらすもう1つの結果、つまりインターフェロンの誘導とは独立した非従来型オートファジーの誘導について報告している。彼らは、STINGがcGAMPに応答して、ゴルジ体や小胞体–ゴルジ体中間区画(ERGIC)へ移動することを見いだした。これらのSTINGを含む膜は、細胞質ゾルDNAをリソソームで分解して除去するためのオートファゴソーム形成の際の膜の供給源になることができる。著者たちは、ヒト細胞において、イソギンチャク由来STINGの活性化がオートファジーのみを誘導し、インターフェロン経路を活性化しないことも明らかにしており、オートファジーの誘導は、cGAS–STING経路の始原的な機能だと考えられる。

Letter p.262
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本題に入る前に、「cGAS経路」についての参考にできるものがないので、2013年に発表されたネイチャーの論文を示します。
 
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構造生物学/免疫:cGASによるDNA感知
Nature 498, 7454
2013年6月20日

自然免疫系による細胞質内DNAの感知とシグナル伝達は、侵入する細菌やウイルスを検出する手段であるため、その機構については非常に熱心に研究が行われている。細胞質内DNAは、DNAセンサーである環状GMP-AMPシンターゼ(cGAS)の活性化を介してI型インターフェロンを誘導することが知られている。つまり、cGASは環状ジヌクレオチドの合成を触媒し、これがSTING (stimulator of interferon genes)として知られるタンパク質を活性化するのである。K-P Hopfnerたちは今回、cGASが単独で存在する場合のC末端断片、UTPとの複合体、そしてDNA–ATP–GTP複合体の結晶構造を示している。一方、V Hornungたちは、cGASの産物が以前に性質が明らかにされた環状ジヌクレオチドとは異なることを明らかにした。産物はグアノシンとアデノシンの間に2′-5′連結が作られている例外的な環状ジヌクレオチドであることがわかった。このcGAMP(2′-5′)の2段階合成過程は、cGAS–STING軸が関与する自己免疫疾患治療用の特異的阻害剤開発の焦点となると考えられる。
 
Article p.332
Letter p.380
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Full Text:Article p.332
cGASによるサイトゾルDNAセンシングの構造メカニズム
 
Full Text:Letter p.380
cGASは、STINGをアクティブにする2'-5 '結合環状ジヌクレオチドセカンドメッセンジャーを生成します
 
 
本題に入ります。
 
本論文においては、日本語版本誌では、「細胞生物学:STINGトラフィッキングを介したオートファジーの誘導はcGAS経路の始原的機能である」と題されています。
 
フルテキストを直訳しますと・・・
 
STINGトラフィッキングを介したオートファジー誘導は、cGAS経路の原始的な機能です
 
となり、Abstractを直訳しますと・・・
 
環状GMP-AMP(cGAMP)シンターゼ(cGAS)は、細胞質内の微生物または自己DNAに結合することにより、感染または組織の損傷を検出します[1]。 DNAを結合すると、cGASはアダプタータンパク質STINGに結合して活性化するcGAMPを生成します。これにより、キナーゼIKKおよびTBK1が活性化され、インターフェロンや他のサイトカインが誘導されます[2,3,4,5,6]。ここでは、スティングがTBK1の活性化とインターフェロンの誘導に依存しないメカニズムを介してオートファジーをアクティブ化することも報告します。 cGAMPに結合すると、STINGはCOP-II複合体とARF GTPaseに依存するプロセスで小胞体ゴルジ中間コンパートメント(ERGIC)とゴルジ体に移動します。 STINGを含むERGICは、オートファゴソーム生合成の重要なステップであるLC3脂質化の膜ソースとして機能します。 cGAMPは、WIPI2およびATG5に依存するが、ULKおよびVPS34–ベクリンキナーゼ複合体には依存しない経路を介してLC3脂質化を誘導しました。さらに、cGAMPによるオートファジーがサイトゾルのDNAとウイルスのクリアランスに重要であることを示します。興味深いことに、イソギンチャクNematostella vectensisからのSTINGは、cGAMPによる刺激に反応してインターフェロンではなくオートファジーを誘導します。これは、オートファジーの誘導がcGAS-STING経路の原始的な機能であることを示唆しています。
 
となります。
 
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
 
Full Text:Letter p.262
 
Data availabilityによりますと・・・
 
著者らは、この研究の発見を裏付けるすべての関連データが、論文およびその補足情報ファイル内で利用可能であることを宣言しています。生データを含む追加情報は、合理的な要求に応じて対応する著者から入手できます。
 
 
2019年度の11号目のネイチャーのハイライトはこれですべて取り上げました。次回から12号目に入ります。
 
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、2019年度の12号目に入り、カバーストーリーを取り上げます。次回は、「Cover Story:協同運動:緩く結合した粒子が協同して動くロボットを作る」を取り上げます。
 
 
※情報収集に大変時間がかかっており、大変ブログ活動が遅れております。巡回等ブログ活動が大変遅れており、申し訳ございません。
 
 
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