前回に引き続き、2019年度の4号目のネイチャーのハイライトより。
発生生物学：維管束形成層の組織化
Nature 565, 7740
2019年1月24日
植物の形態形成では、オーガナイザー細胞によって近傍の幹細胞の分裂と分化が方向付けられる。しかし、この考え方が維管束形成層［器官の表面から奥深くにある成長層で、木部（材）組織と師部輸送組織を生じる］にも当てはまるかどうかは、分かっていなかった。A Mähönenたちは今回、細胞系譜の追跡と遺伝学的解析を行い、維管束形成層内では、木部の特性を持つ細胞がオーガナイザーとして働き、その誘導によって隣接する形成層細胞が木部幹細胞として分裂・機能することを報告している。彼らはまた、これらのオーガナイザーは、植物ホルモンのオーキシンと転写因子HD-ZIP IIIの作用を通して、木部の特性と静止状態を維持しているが、これらの隣接する二面性の幹細胞を介して、師部の特性も保っていることを明らかにしている。
News & Views p.433
Letter p.485
おまけ：粘菌のオーガナイザーと形態形成 | 生物学科 | 東邦大学
おまけ：【発生学】ヒトの幹細胞からもオーガナイザーが誘導される
※上記のネイチャーの論文については、読めなくなる可能性があるので最後に転載します。
この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。
日本語版本誌では、「発生生物学：植物が太くなる機構が明らかに」と題されています。見出しにおいては、「根では、形成層領域の幹細胞が、水と栄養素の長距離輸送に必要な維管束組織を形成する。今回、こうした幹細胞が指定され調節される仕組みが明らかになった。」と取り上げられています。
フルテキストを直訳しますと・・・
植物肥厚化メカニズムが明らかに
となり、見出しを直訳しますと・・・
根では、形成層領域の幹細胞は、水と栄養分の長距離輸送に必要な血管組織を形成します。これらの幹細胞がどのように特定され調節されるかが明らかになりました。
となります。
フルテキストは下記です。
Full Text：News & Views p.433
Plant-thickening mechanisms revealed
本論文においては、日本語版本誌では、「発生生物学：高レベルのオーキシンシグナル伝達が維管束形成層の幹細胞オーガナイザーを規定する」と題されています。
フルテキストを直訳しますと・・・
高レベルのオーキシンシグナル伝達は、血管形成層の幹細胞オーガナイザーを定義します
となり、Abstractを直訳しますと・・・
木部は木部組織の一種で、血管形成層の細胞増殖に由来します。木部は形成層の内側で、師部は外側で生成されます[1]。植物の形態形成は通常、隣接する幹細胞がプログラムされた細胞分裂と分化を受けるように指示するオーガナイザー細胞によって調整されます。維管束形成層幹細胞の位置および形成層の概念が形成層に適用されるかどうかは現在不明である[2]。ここでは、シロイヌナズナの根における系統追跡と分子遺伝学的研究を使用して、木部のアイデンティティを持つ細胞が隣接する血管形成細胞を分裂させて幹細胞として機能させることを示しています。したがって、これらの木部識別セルはオーガナイザーを構成します。植物ホルモンのオーキシンの局所的最大値、およびその結果として生じるクラスIIIホメオドメイン-ロイシンジッパー（HD-ZIP III）転写因子の発現は、オーガナイザー細胞の木部の同一性と細胞静止を促進します。さらに、オーガナイザーは、師範のアイデンティティをセル非自律的な方法で維持します。このオーガナイザー細胞の二重機能と一致して、木部と師部は、各放射状細胞ファイル内の単一の両面幹細胞に由来し、これは、単生血管形成層の古典的な理論を裏付けています[3]。高レベルの異所的に活性化されたオーキシンシグナル伝達を示すクローンは、木部血管として分化します。これらのクローンは、隣接する細胞に細胞分裂と形成層マーカーおよび師部マーカーの発現を誘発し、これは、オーキシンシグナル伝達の局所的最大値が幹細胞オーガナイザーを特定するのに十分であることを示唆します。維管束形成層は植物分裂組織の中でユニークな機能を持っていますが、この組織の幹細胞オーガナイザーは根およびシュート分裂組織のオーガナイザーと機能を共有しています。
となります。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text：Letter p.485
High levels of auxin signalling define the stem-cell organizer of the vascular cambium
Data availabilityによりますと・・・
この研究で分析されたすべてのシロイヌナズナ遺伝子の遺伝子アクセッション番号は上記にリストされています。図2b、c、3a、b、dおよび拡張データに関連するソースデータ3d、4a、c、d、6a–e、7b、f、g、8a–e、9fが用紙に付属しています。この研究の結果を裏付けるすべての行およびその他のデータは、リクエストに応じて対応する著者から入手できます。
ここからおまけです。
【発生学】ヒトの幹細胞からもオーガナイザーが誘導される
Nature
2018年5月24日
Development: Human stem cells get organized
オーガナイザーは、胚発生の統率と誘導に寄与する細胞群としてずっと以前から理論化されてきたが、このほどヒト組織中にも存在していることを初めて実証する論文が、今週掲載される。今回の研究は、初期胚発生の新しいモデルをもたらすもので、オーガナイザーが動物界全体にわたって高度に保存されていることを示唆している。
ハンス・シュペーマンとヒルデ・マンゴルトが1924年に行った実験は、発生生物学における最も著名な実験の1つであることにほぼ間違いがない。彼らは、イモリ胚の微小組織片を別のイモリ胚に移植し、移植先の細胞が誘導されて第2の胚が生じることを明らかにした。この移植部位は、その周囲に移植先の細胞を組織化できることからオーガナイザーと呼ばれた。
今回、Ali Brivanlouたちの研究グループは、マイクロプリントされた特製ディスク上でヒト胚性幹（ES）細胞を培養し、成長因子で処理したところ、ES細胞からオーガナイザー様組織の生成が誘導された。次に、この細胞群をニワトリ胚に移植したところ、その周囲にある細胞から細長い神経組織の形成が誘導され、オーガナイザー能力が実証された。
フルテキストを直訳しますと・・・
組み合わせWntおよびNodalのシグナルによるヒト主催者の自己組織化
となり、Abstractを直訳しますと・・・
羊膜では、原始線条の発達とそれに伴う「オーガナイザー」が原腸形成の最初の段階を定義します。これらの構造はモデル生物で詳細に特徴づけられていますが、人間の原始的なストリークとオーガナイザーは謎のままです。 BMP4で刺激すると、ヒト胚性幹細胞のマイクロパターン化されたコロニーが自己組織化して初期胚胚層を生成します1。ここでは、同じタイプのコロニーで、Wntシグナル伝達は原始線条を誘導するのに十分であり、Wntおよびアクチビンによる刺激は、胚様の鋭い境界形成、上皮細胞のマーカーを特徴とするオーガナイザーを誘導するのに十分であることを示します-間葉移行およびオーガナイザー特異的転写因子GSCの発現。さらに、ニワトリ胚に移植すると、WntおよびActivinで処理されたヒト幹細胞コロニーは、ホストで神経運命を誘導しながら、二次軸を自律的に誘導および寄与します。これはオーガナイザーにとって最も厳しい機能基準を満たし、その発見はヒト発生学のマイルストーンを表します。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text：Letter
Self-organization of a human organizer by combined Wnt and Nodal signalling
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「発生生物学：ホルモンと転写因子との間のネットワーク形成」を取り上げます。
※体調が不安定になっておりますので、休み休みで不規則となっております。できる限り巡回等する予定にしています。申し訳ございません。
