古気候学: 最終氷期極大期の開始時における氷床形成の詳細 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、31号目のネイチャーのハイライトより。

 

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古気候学: 最終氷期極大期の開始時における氷床形成の詳細
Nature 559, 7715
2018年7月26日   

最終氷期極大期には、氷床は現在より広がっており、結果として、全球平均海水準は現在より100 m以上低かった。しかし、我々が有する最大氷河作用の記録は、未完全である。今回、横山祐典(東京大学ほか)たちは、グレートバリアリーフの大陸棚から得られたサンゴの記録と氷河性地殻均衡の調整のモデルを組み合わせて、125~130 mの低下という海水準の極小期の前に、海水準の約20 mの急激な低下とそれに続く約15 mの上昇があったことを示している。この知見は、ほぼ寒冷だった氷期における氷床の発達と海水準上昇の複雑な歴史を明らかにしている。

Letter p.603
News & Views p.487
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(現在との比較として)
 
古気候より、急激に発達した太古の氷床についてのものです。
 
今回、グレートバリアリーフから得られた太古のサンゴを分析して、最終氷期の末期に全球海水準が急速に低下したことが明らかになりました。この知見は、これまで考えられていたよりも氷床が動的だったことを示唆しています。
 
この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。
 
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古気候学:最終氷期極大期に至る急速な氷床形成と2つの段階を経た海水準の低下
Nature 559, 7715 |  Published: 2018年7月26日 |

最終氷期の終結前、約1万年間継続した最終氷期極大期は、地球の最近の気候史において最も寒冷な期間だった。完新世と比較して、大気中の二酸化炭素は約100 ppm、熱帯の海面水温は約3~5°C低かった。最終氷期極大期は、約3万1000年前に全球の平均海水準(GMSL)が突然約40 m低くなったときに開始し、約1万年間の急速な氷床融解によって幕を閉じ、完新世に至った。最終氷期極大期から完新世への遷移を記述し、将来の氷床や気候の変化を予測するために構築された気候モデルは、融解する極域の氷床の質量と、海洋の体積ひいてはGMSLの変化によって制約される。しかし、この遷移の変化率、タイミング、規模はまだよく分かっていない。本論文では、グレートバリアリーフの大陸棚外縁における海水準が、2万1900~2万500年前の間に約20 m低下し、現在の水準よりも118 m低かったことを示す。今回の知見は、サンゴとサンゴモ群落の化石の回収と放射年代測定に基づいており、GMSLではなくグレートバリアリーフの相対的な海水準を示している。相対的な海水準は、その後の約4000年間に年間約3.5 mmの変化率で上昇した。この上昇はこれまで報告されている1万9000年前の温暖化と一致するが、今回我々は、その直前に相対的な海水準が20 m低下し、関連して全球の氷体積が増加していたことを示す。グレートバリアリーフは、かつて氷床に覆われていた地域から離れており、地殻活動の小さな場所にあるため、今回の記録の詳細な構造は確実性が極めて高い。さらに、今回のグレートバリアリーフの相対的な海水準は、氷や水の荷重の地域的な変化に対する地球の応答の影響を受け、GMSLとは大きく異なる可能性がある。そこで、氷河性地殻均衡モデルを用いてGMSLを導出し、最終氷期極大期のピークは、GMSLが現在よりも約125~130 m低く極小となった2万500年前であったことを見いだした。
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本当に詳細ですねぇ・・・。
 
溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、考古学より、 約200万年前の中国にヒト族がいたことを示す証拠、を取り上げます。今頃は激しい議論の真っ最中でしょうか。
 
まだ、体調が不安定なので、様子を見ながら動きます。申し訳ありません。
 
 
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