富士通が商用化、「量子計算を超えた」専用機の実力 | Just One of Those Things

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ついに、商用化が実現しました。

 

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富士通が商用化、「量子計算を超えた」専用機の実力 
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2018/6/11 6:30日本経済新聞 電子版

 富士通は、膨大な組み合わせの中から最適な選択肢を見つける「組み合わせ最適化問題」を高速で解くことに特化した専用コンピューター「デジタルアニーラ」の商用サービスを2018年5月15日に開始した。クラウドサービスとして計算能力を提供するほか、専門技術者や関連システムエンジニア(SE)からなる1500人体制で顧客の問題解決を支援する。
 
 富士通は代表的な適用領域として交通、物流、金融、医療、化学などを挙げるが、「あらゆる業務に最適化問題が関わっている」(吉沢尚子執行役員常務・デジタルサービス部門副部門長)。現在、デジタルアニーラの提供料金はメニュー化されていないが、「技術支援なども含めて月額数十万円から」の料金で顧客にサービスを提供するという。
 
 同社は関連するシステムインテグレーション(SI)ビジネスも含め、今後5年間で累計1000億円を売り上げる計画だ。すでに10社ほどのユーザー企業が先行導入しているという。

■既存のデジタル回路技術で問題を解く
 
 多数の都市を1度ずつ訪問する場合の最短経路を探し出す「巡回セールスマン問題」のような組み合わせ最適化問題に特化した専用計算機は、量子コンピューターが商用化で先行している。カナダのディーウェーブ・システムズが世界で初めて商用化した量子アニーリング方式の計算機だ。
 
 一方、富士通が開発したデジタルアニーラは、「量子アニーリングに着想を得た独自技術を採用している」ものの、あくまで既存のデジタル回路技術で開発されたコンピューターだ。
 
 それでも実際に解ける問題の範囲や規模など、「現在での実用性では(ディーウェーブの)量子アニーリングを上回っている」(吉澤執行役員常務)と自信を見せる。富士通がうたうデジタルアニーラのキャッチフレーズは「実用性で量子コンピューターを超える」。そのうたい文句通りに、商用化で先行した量子アニーリングマシンを超える実力を備えるのか。

■1024ビットの全結合を実現
 
 富士通が開発したデジタルアニーラは、組み合わせ最適化問題を解くための専用演算ユニット「DAU(デジタル・アニーリング・ユニット)」を搭載する。量子アニーリング機になぞらえれば、全ビットが結合した1024量子ビットに相当する規模の問題を扱える。各ビット間の結合度は16ビット相当の6万5536階調という精度で記述できる。
 
 一般に量子アニーリングでは、量子ビットの数が組み合わせの要素の数に相当する。例えば巡回セールスマン問題を解く場合、1024量子ビットの計算機は32の都市を順番に32カ所巡る組み合わせに対応する。富士通のデジタルアニーラは量子ビット間の結合精度が16ビットなので、都市間の距離を16ビットで表現したうえで32の都市を制約なく組み合わせて最短経路を探索できるということになる。
 
 巡回セールスマン問題は、10都市でも経路の組み合わせが18万1440通り。20都市になると組み合わせは6.08京通り(6.08×10の16乗)を超える。20都市を超えてくると、総当たりでの計算方法ではスーパーコンピューターを使っても実用的な時間内で解けなくなってくる。

■スパコン京が解けない問題、1秒で
 
 富士通によれば、デジタルアニーラに投入できる問題は「多くの場合で1秒程度で答えが探索できる」(吉澤尚子執行役員常務)。
 
 例として示したのが、東京都内で交通渋滞を回避させる経路最適化問題だ。富士通のスーパーコンピューター「京」で総当たりで計算させると10の84乗秒と宇宙年齢の138億年(4.35×10の17乗秒)を使っても最適解を導けない問題について、デジタルアニーラは1秒で解を導いたという。
 
 ただし、総当たり計算は最適解を導けるのに対し、デジタルアニーラは「最適解に近い実用的な解」(富士通)を導くもので、最適解を高速に導けるわけではない。デジタルアニーラが組み合わせ最適化問題で「京」より高速とまでは言えない点は注意が必要だ。
 
 富士通は18年秋には量子ビット数を8192ビットに増やした第2世代のDAUを完成させる計画で、デジタルアニーラの実機にも同時期に搭載する計画。8192量子ビット、結合精度16ビットで使うほか、量子ビット数を4096に落とす代わりに結合精度を64ビットに高めるなど、解く問題に合わせて動作モードを変えられる機能を実装するという。

■数分かかるケースも
 
 先行するディーウェーブは、すでに2048量子ビットの商用機「D-Wave 2000Q」を製品化し、今後も多ビット化を進める計画を打ち出している。
 
 富士通は、D-Wave 2000Qの量子ビットが部分結合であることから、現時点でも解ける問題の規模ではデジタルアニーラが優位だとしている。
 
 D-Wave 2000Qは「キメラ結合」と呼ぶ部分結合方式を採り、ある特定の範囲で全結合した量子ビットのブロックを複数つなぎ合わせたような構成になっている。このため2048の要素を全て制約なく組み合わせた問題が解けるわけではない。
 
 このためD-Wave 2000Qで組み合わせ問題を解く場合は、一般に複数の量子ビットを使って1つの要素を記述する。このことから「実用的には、全結合機で言うところの数十量子ビットに相当する」(組み合わせ最適化問題の研究者)との見方が多い。
 
 またD-Wave 2000Qのビット間結合の強度はアナログで設定する方式を採るが、「デジタル換算で5ビット(およそ30階調)に相当する」(D-Waveの導入支援サービスなどを日本で提供するフィックスターズ)という。こちらもスペック上は富士通のデジタルアニーラが上回る。
 
 富士通はデジタルアニーラの発表会場で、医療分野への応用として放射線治療に用いる事例を展示した。健康な臓器へのダメージを最少にしながら、がん腫瘍に放射線を必要量だけ当てる最適な照射角度と照射強度を割り出すという最適化問題である。条件にもよるが、その組み合わせは10の150乗に達するという。
 
 実際に、この放射線医療の問題をある条件を設定してデジタルアニーラに解かせたところ、実用的な解が出るまでに数分を要したケースがあった。途中で局所解に捕まり、なかなかより効率がよい解が探せていない時間が生じているためだ。
 
■現実の課題解決で先行できるか
 
 先にも述べたように、富士通のデジタルアニーラは「アニーリング(焼きなまし)」という動作原理上、導いた答えが必ずしも「真の最適解」かどうかは保証できない点には注意が必要だ。より距離やコストが小さい解を探しながら、局所解に陥ったときはいったんコストが大きくなる組み合わせもたどり、よりコストが小さい解を探索していく。
 
 「金属を熱してゆっくりさます(焼きなまし)」のような探索で、最適解に近い「実用解」を探索する計算機である点は、すでに既存のコンピューターで実現している「シミュレーテッドアニーリング」のアルゴリズムの枠内にある手法といえる。
 
 富士通はデジタルアニーラの技術を詳細には明らかにしていないが、「多数の組み合わせ演算を高速化する超並列演算の技術」と「局所解から効率よく抜け出すための独自技術」という主に2つの技術を実装したことで、従来のシミュレーテッドアニーリングを大きく越える性能を獲得できたと説明している。
 
 量子アニーリングもシミュレーテッドアニーリングに着想を得た動作原理を持つが、量子効果によって局所解に極めて捕まりにくく、最適解に極めて近い実用解が得られるとされている。デジタルアニーラが導いた「実用解」がどのくらい最適解に近いのかも、量子アニーリングとの比較では問われることになりそうだ。
 
(日経 xTECH/日経コンピュータ 玄忠雄)
 
[日経 xTECH 2018年5月22日付の記事を再構成]
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これは、結構おいしいんじゃないでしょうか。量子アニーリングとの競争になりそうです。デジタルアニーラがもしも勝ったら、凄いことになりますね。

 

ちなみに、私は新しいノートパソコンを(もう大概慣れました)使い続けているわけですが、主人はとっくに復旧した7のノートパソコンを改造?して遊び続けています(笑)。

 

さて、次は恒例のネイチャーを定時に取り上げます。

 

 

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