集団遺伝学: 古代ゲノムから明らかになった人類史とヒト肝炎の手掛かり | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

20号目のネイチャーのハイライトより。
 

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集団遺伝学: 古代ゲノムから明らかになった人類史とヒト肝炎の手掛かり
Nature 557, 7705
2018年5月17日   

今週号の2報の論文でE Willerslevたちは、ヒトの古代ゲノム解析により得られた、人類史と肝炎についての手掛かりについて報告している。1報目の論文では、過去4000年間にわたるユーラシアのステップ全域に由来する137例のヒト古代ゲノムについて、塩基配列の解読結果が示されている。自己申告に基づく系統が中央アジア、アルタイ、シベリア、およびコーカサスである現代人502人に関する遺伝子型を用いた解析からは、ユーラシアステップ中央部の集団史のモデルが示され、これは、例えば青銅器時代におけるユーラシア西部系統の牧畜民から東アジア系統の多い騎兵馬への漸進的な移行など、この地域についてのこれまでの歴史言語学的研究の結果と一致していた。2報目の論文では、前期青銅器時代から中世にわたるユーラシア中央部および西部のヒト骨格304体に由来する古代DNAの塩基配列を解析し、その中にB型肝炎ウイルス(HBV)の塩基配列を探索した結果が報告されている。完全または部分的に復元したHBVゲノム12例について、現代人HBVおよび非ヒト霊長類HBVの塩基配列と共に解析したところ、ユーラシア全域の人類が数千年にわたってHBVに感染していたことが示唆された。

Article p.369
Letter p.418
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まずは明らかになった人類史の論文より。
 
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集団遺伝学:ユーラシアのステップ全域に由来する137例のヒト古代ゲノム
Nature 557, 7705 |  Published: 2018年5月17日 |

ユーラシアのステップ地域は、数千年にわたり人類移動および文化的変化の中心となってきた。今回我々は、青銅器時代の移動以降のユーラシアステップの集団史を理解するために、4000年にわたる期間に由来する137例のヒト古代ゲノムについて、塩基配列を解読した(平均カバー率は約1倍)。その結果、鉄器時代を通してユーラシアステップを優占していたスキタイ人集団の遺伝的特徴は高度に構造化されており、後期青銅器時代の牧畜民、ヨーロッパの農耕民、シベリア南部の狩猟採集民からなる多様な起源を持つことが分かった。その後、スキタイ人は匈奴連合体を形成したステップ東部の遊牧民と混合し、紀元前3世紀もしくは2世紀頃に西方へ移動して、4~5世紀にはフン族の伝統を築くとともに、「ユスティニアヌスの疫病」の根源となるペストを持ち込んだ。これらの遊牧民はさらに、中世の複数の短い汗国の時代に東アジアの集団と混合した。こうした歴史的事象により、ユーラシアステップは、ユーラシア西部の系統が大部分であるインド・ヨーロッパ語族の居住地から、主として東アジア系統の、現在の主にチュルク語を話す集団の居住地へと変遷を遂げた。
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今はゲノムで調べることができるので、ある意味楽ではあります。次に肝炎に関する論文です。
 
 
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社会人類学:青銅器時代から中世の古代B型肝炎ウイルス
Nature 557, 7705 |  Published: 2018年5月17日 |

B型肝炎ウイルス(HBV)は、ヒトの肝炎の主な原因の1つである。しかし、その進化およびヒトとの関連の時間スケールに関しては、大きな不確かさがある。本論文で我々は、約4500~800年前の完全あるいは部分的な古代HBVゲノム12例について報告する。これらの古代ゲノム塩基配列は、現生人類のHBVクレードまたは他の類人猿のHBVクレードの内部に、あるいはそれらの姉妹系統として位置していた。ゲノムの特徴は概して、現代のHBVのものに一致した。HBV系統樹の根の年代は2万900~8600年前と推定され、ヌクレオチド置換率は1年当たり1部位につき8.04 × 10^−6~1.51 × 10^−5と見積もられた。複数の例で、古代の遺伝子型の地理的位置と現在の分布とが一致しなかった。現在のアフリカおよびアジアに典型的な遺伝子型と、インドに由来する亜型(subgenotype)は、初期にユーラシアに存在していたことが示された。古代HBVと現代HBVの遺伝子型に認められる地理的パターンおよび時間的パターンは、十分に立証されている青銅器時代および鉄器時代の人類移動のパターンと一致する。我々は、HBVの遺伝子型Aが組換えによって生じたこと、さらには現代HBVの遺伝子型が長期にわたりヒトと関連してきたことを示す証拠を提示する。これらの証拠には、現在は存在しないかつてのヒトの遺伝子型の発見も含まれる。今回のデータは、現代の塩基配列のみの検討では解明できないような、HBV進化の複雑さを明らかにするものである。
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今回はちょうどいい参考文面がありません。
 
ウイルスや菌で古代のことがわかることが多々あります。しかし、今回分かったことは、塩基配列のみのでの検討では解明できない複雑さがでてきたということで、更に歩みを深めるには、原子でしょうか・・・(苦笑)
 
明日は、ニューロンの再プログラム化についてのものを取り上げます。
 
 

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