昨日に引き続き、17号目のネイチャーのハイライトより。
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腫瘍生物学: がん細胞におけるEMTと転移
Nature 556, 7702
2018年4月26日
がん細胞で起こる上皮間葉転換(EMT)という過程は、転移に関係するとされているが、いまだ議論がある。EMTの判定は、上皮系マーカーと間葉系マーカーの発現に基づいてなされている。今回C Blanpainたちは、マウスの腫瘍細胞で多数の細胞表面マーカーのスクリーニングを行い、EMTはいくつかの移行状態を経て起こり、それぞれの状態に特異的なマーカーが関連することを明らかにしている。興味深いことに、最も間葉系に近い腫瘍細胞の亜集団が、最も高い転移能を持つわけではなく、高い転移能は移行のより初期の状態にある集団に特徴的であった。これらの知見は、転移のプログレッションの基盤となる細胞の可塑性について、新たな手掛かりとなる。
Article p.463
News & Views p.442
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がんの転移を助ける移行状態が明らかになりました。
上皮細胞由来のがんには、間葉細胞の形質を獲得した数種の腫瘍細胞が含まれていることが多いものとなっています。今回、このことががんの転移につながる仕組みがマウスモデルで明らかになりました。
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腫瘍生物学:EMTの際に起こる、腫瘍の複数の移行状態の特定
Nature 556, 7702 | Published: 2018年4月26日 |
がんでは、上皮間葉転換(EMT)が腫瘍の幹細胞性、転移、治療抵抗性に関連する。最近になって、EMTは2つの状態間の転換というよりも、複数の異なる中間段階を経て起こるという見方が出されている。しかし、この見方にはin vivoでの直接的な証拠はない。今回我々は、皮膚と乳腺の原発腫瘍の大規模な細胞表面マーカーパネルのスクリーニングを行い、上皮細胞状態から中間の混成状態を複数経て完全な間葉系状態に至るEMTの各段階には、それぞれ関連する腫瘍亜集団が存在することを明らかにする。全てのEMT亜集団は同様の腫瘍増殖能力を有するが、それらの細胞の可塑性、侵襲性、転移能には違いがある。これらの亜集団の転写やエピジェネティックの状況から、その根底にあり、これら異なるEMT移行状態を制御している遺伝子調節ネットワーク、転写因子、シグナル伝達経路が明らかになった。最後に、これらの腫瘍亜集団は異なるニッチに局在しており、EMT移行状態はこれらのニッチによって異なる調節を受けていることが分かった。
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話は少し変わりますが、最近の新しいがん保険は、悪性腫瘍と上皮間葉転換(EMT)が腫瘍になっているものと、保障が分かれており、基本的ながん保険には、悪性腫瘍でしか保険金がでない(保証を得るには、上皮間葉転換腫瘍の特約に入ることは必要)ようになっています。
で、話しを戻しまして、今回は、上皮間葉転換(EMT)が腫瘍になっているものの論文です。この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。
”がんの転移”を見るだけで、憎たらしく思うわけではありますが、ここは冷静になって、更に研究が進むことを祈りましょう。”腫瘍生物学”とネイチャーで題されるだけ、現在は研究が進んでるもようです。
明日は、量子物理学に関するものを取り上げます。