海洋科学: 小氷期以降の大西洋の鉛直循環の弱化 | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、15号目のネイチャーのハイライトより。

 

----------------------------------------------------------
海洋科学: 小氷期以降の大西洋の鉛直循環の弱化
Nature 556, 7700
2018年4月12日


大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)は海洋の主要な循環パターンで、地球の気候変動の大半と密接に関連している。幅広い研究によって、AMOCが過去数十年において弱まってきたことが示唆されているが、AMOCは内部変動が大きいためにその変化を検出するのは難しいことを示唆する研究もある。今回2つの論文では、近年の変化が長期的な自然変動の一部なのかについて調べられた。D Thornalleyたちは、気候シミュレーションと古気候記録によって裏付けられたAMOCの強さに関する記録を提示し、AMOCは150年前の小氷期終了時に著しく弱まり、その後ほぼ安定したままであることを示している。一方、L Caesarたちは、亜寒帯北大西洋とメキシコ湾流の海面水温の観測結果を用いて、AMOCの変動のロバストな指標として解釈し、1870~2016年のAMOCを再構築した。ばらつきはかなり大きいが、現在のAMOCが17スベルドラップ(1スベルドラップは、100万m3 s−1)であるのに対し、1950年代以降にAMOCが約3スベルドラップ弱まっていることが分かった。この2つの研究は相反しているように見えるが、Thornalleyたちは19世紀半ば頃の弱化に注目しており、Caesarたちの記録が始まる少し前である。研究方法や調べた海域も異なっており、対照的な手法によって得られた結果の比較の難しさと、AMOCの変動の微妙な性質が浮きぼりになっている。Caesarたちが提案した弱化は、人間活動の役割と一致するが、自然変動に起因している可能性もある。


Article p.191
Letter p.227
News & Views p.180
----------------------------------------------------------

 

減速する北大西洋循環については、さまざまな証拠が、北大西洋の循環系が過去1600年で前例のない弱まった状態であることを示していますが、この弱化が始まった正確な時期については疑問が残っています。

 

----------------------------------------------------------
海洋科学:大西洋の南北方向の鉛直循環の弱化を示す指紋の観測

Nature 556, 7700 |  Published:  2018年4月12日  |


大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)は北大西洋の海流系で、気候に大きな影響を及ぼしているが、海流の直接測定が不十分であるため、工業時代におけるその変化はよく分かっていない。本論文では、AMOCが20世紀半ば以降に約3 ± 1スベルドラップ(約15%)弱まっていることを示す証拠を提示する。この弱化は、亜寒帯大西洋の寒冷化パターンとメキシコ湾流域の温暖化パターンからなる海面水温の特徴的な空間的かつ季節的な「指紋」から明らかになっており、CMIP5プロジェクトのモデルシミュレーションのアンサンブルによって較正されている。我々は、大気中の二酸化炭素濃度の上昇に応答した高解像度気候モデルにおいても、19世紀末期以降観測されている水温の変化傾向においても、この指紋を見いだした。このパターンは、AMOCの減速や北方への熱輸送の減少と、それに伴うメキシコ湾流の北方への移動によって説明できる。今回の結果と、RAPIDプロジェクトによる最近の直接測定および他のいくつかの研究を比較することで、近年の記録的に低いAMOC値について、一貫性のある描像が得られる。

----------------------------------------------------------

 

人間活動の役割と一致する論文が上記で、自然変動に起因している可能性もあるとされているのが次の論文です。

 

----------------------------------------------------------
海洋科学:異常に弱かった過去150年間のラブラドル海の対流と大西洋の鉛直循環

Nature 556, 7700 |  Published:  2018年4月12日  |


大西洋の南北方向の鉛直循環(AMOC)は、地球の気候において重要な役割を果たしている海流系であり、熱を再分配し、炭素循環に影響を及ぼしている。AMOCが近年弱まっていることが示されている。この弱化は、ラブラドル海における対流の十年スケールの変動を反映している可能性があるが、観測データが短期間であるため、ラブラドル海の対流とAMOCに関する現在の状態と変動の長期的な全体像は得られていなかった。本論文では、AD 1850頃の小氷期(LIA)の終了以降の過去約150年間のラブラドル海深部の対流とAMOCが、それ以前の1500年と比べて異常に弱かったことを示す古海洋学的証拠を提示する。古気候の再構築結果は、遷移が、LIAの終了への著しく急激な変化として生じたか、過去150年間にわたってより緩やかで継続的な弱化として生じたかのどちらかであることを示している。このあいまいさは、さまざまな代理指標に対するAMOC以外の要因の影響、あるいはAMOCの個々の要素に対してこうした代理指標の感度が異なることに起因すると考えられる。我々は、北極海とノルディック海からの淡水の流出(氷河とLIAの初期に発達し厚くなった海氷の融解に由来する)がLIAの終了に向かって増大したため、ラブラドル海の対流とAMOCが弱まったことを示す。弱化がその後あまり回復していないのは、ヒステリシスに起因しているか、20世紀にグリーンランド氷床が融解したためである可能性がある。今回の結果は、ラブラドル海の対流とAMOCの近年の十年変動は、背景状態が変則的で弱い時期に生じていることを示唆している。今後の研究は、今回報告したAMOCの弱化に、気候の内部変動と初期の人為的強制が果たした役割を絞り込むことを目指すべきである。

----------------------------------------------------------

 

これらの論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

新たな目標が出てきましたね。

 

明日は、脊椎動物のRNAウイルスの進化を取り上げます。

 

 

ペタしてね