感覚系: 熱傷回避の裏で働く遺伝子トリオ | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、13号目のネイチャーのハイライトより。

 

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感覚系: 熱傷回避の裏で働く遺伝子トリオ
Nature 555, 7698
2018年3月29日


多数のイオンチャネルが熱によって活性化され、その中にはTRPファミリーに属する複数のチャネルも含まれている。だが、こうしたTRPイオンチャネル遺伝子のうちの1つだけを欠くマウスは、急性の熱感知には全く異常がなかったり、軽度の異常を示すだけだったりする。今回T Voetsたちは、イオンチャネルのTRPA1、TRPV1、TRPM3をコードする3つの遺伝子全ての発現が阻害されている三重ノックアウトマウスは、有害な熱に曝露されても痛みを感知できないが、侵害的な低温刺激や機械刺激は感知でき、適温への選好性も維持されていることを示している。しかし、二重ノックアウトマウスでは予想される熱応答が維持されており、この疼痛知覚系には高度の重複性があると考えられる。熱傷回避に関わるこの知覚系では、障害が発生しても系の機能停止を防ぐ仕組みが確保されているのだろう。


Letter p.662
News & Views p.591
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イオンチャネルのトリオが痛みを伴う熱を感知することがわかりました。

 

これまでに特定されたさまざまな温度感受性イオンチャネルの中で、3つのイオンチャネルが協調して、痛みを伴う熱を感知し防御反射を起こすことが、今回見いだされました。

 

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感覚系:急性侵害性熱感知は、セットになった3つのTRPチャネルによって仲介される

Nature 555, 7698 |  Published:  2018年3月29日  |


急性疼痛は我々を傷害から守るための重要な警告シグナルである。疼痛シグナルを伝達する侵害受容ニューロンについては100年以上前に報告されたが、侵害性の熱傷害あるいは機械的傷害を検出する分子センサーについては、まだ全貌が明らかになっていない。今回我々は、マウスでは、急性で侵害性の熱の感知が、TRP(transient receptor potential)イオンチャネルであるTRPM3、TRPV1、TRPA1の3つからなるセットに依存することを示す。これらのTRPチャネルの少なくとも1つが機能するだけで、細胞レベルおよび行動レベルでロバストな体性感覚熱応答が観察されることが分かった。しかし、これら3つのチャネル全てを遺伝学的あるいは薬理学的方法によって除去すると、単離された感覚ニューロンと皮膚に分布していて迅速に発火するCおよびAδ感覚神経繊維の両方で熱応答のほとんどが選択的に阻害された。Trpv1−/ −Trpm3−/ −Trpa1−/−の三重ノックアウト(TKO)マウスでは、侵害性の熱に対する急性逃避応答(熱傷の回避に必要)が見られないが、低温刺激あるいは機械刺激に対しては正常な侵害受容応答を示し、適温に対する選好は維持されていた。これらの知見は、感覚神経終末で急性熱刺激によって引き起こされる疼痛応答の開始が、機能の重複する3つのTRPチャネルに依存しており、これは熱傷を回避するための耐障害性の機構に当たることを示している。
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ポストゲノム以降、生物学系は仕組みを機械的な解釈で捉えるのが一般的となりました。分子がベースとなって以降、難しいと難色を示す方が多いのですが、工学的に考えれば案外簡単になりますので、お試しあれ。

 

明日は心臓学を取り上げます。たぶんに皆様も興味があるものだと思われます。

 

 

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