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精子や卵子作製で新たな波紋が生まれています。

 

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受精卵使わないiPS細胞にも生命倫理問題 
精子や卵子作製で新たな波紋
2017/1/9 6:30日本経済新聞 電子版

iPS細胞の誕生から10年が過ぎ、当初は克服したとみられていた生命倫理問題に再び注目が集まっている。精子や卵子を作って不妊治療に応用しようという生殖医療の研究が進んできたほか、他人の細胞から作ったiPS細胞を民間企業などへ配布する事業も本格的に始まっているからだ。京都大学iPS細胞研究所は宗教家も交えた対話に取り組むなど、将来直面する倫理問題の対応に力を入れている。

■iPS細胞から受精卵 不妊治療に朗報だが…

紅葉の季節を間近に控えた2016年10月下旬の京都市。江戸時代の剣豪・宮本武蔵も修行し精神修養の場と知られる妙心寺退蔵院で、京大iPS研が「iPS細胞夜話~宗教者・医師・研究者が語る生命倫理」と題したイベントを開いた。iPS細胞から精子や卵子を作る研究の生命倫理を中心に専門家が意見を交わした。

「過去に指摘された倫理問題が再び戻ってきた感じがある」。イベントに登壇した京大iPS研の藤田みさお特定准教授(上廣倫理研究部門)はこう説明した。

京大の山中伸弥教授がiPS細胞の作製に成功したのは06年。「最初は倫理問題を克服したと考えていた」(藤田特定准教授)。それまで万能細胞として研究が進んでいたES細胞(胚性幹細胞)は、生命の萌芽(ほうが)とされる受精卵を使わなければならなかったが、iPS細胞は皮膚の細胞などから作ることができるからだ。ところが生殖医療分野の進展でiPS細胞から受精卵を作製するケースも登場、再び、生命倫理問題に直面することになった。

京大の斎藤通紀教授と九州大学の林克彦教授はiPS細胞から卵子と精子の生殖細胞を作製する研究に取り組む。人間のiPS細胞から精子や卵子のもととなる始原生殖細胞に似た細胞を作ったほか、16年10月にはマウスのiPS細胞から体外培養だけで卵子の作製に成功したと発表した。遺伝病の解明や新しい不妊治療の開発につながると期待される。体外培養による卵子の作製は米科学雑誌サイエンスが選ぶ16年の十大ニュースにも選ばれた。

医師としてイベントに参加した足立病院(京都市)の畑山博院長はiPS細胞を用いた不妊治療は、精子がない無精子症の男性や若い年齢で閉経した女性にとって「福音になる」と期待を示した。もし自分のiPS細胞から得た卵子と精子を体外受精して子宮に戻せば子どもが産まれる可能性があるからだ。藤田特定准教授も「不妊治療の最後の手段になる」と評した。

多くの不妊治療を手掛ける経験から、畑山院長は「自分の遺伝子を受け継いだ子どもを残したいという(夫婦の)要望は強い」として、将来、実用化が進む可能性があるという見方を示した。そのうえで「技術や倫理の問題を扱う法整備が必要だ」と一定のルール作りが欠かせないとした。

■「新たな差別を生む恐れ」指摘する声も

生殖医療に限らず、iPS細胞の進歩が新たな差別を生む恐れがあるという意見もあった。宗教家の立場から参加した退蔵院の松山大耕副住職は「iPS細胞には光と影がある」と指摘。難病で苦しむ患者に光明をもたらす一方、貧富によって治療を受けられるかどうかが決まるといった新たな格差につながりかねないとした。

先端医療に絡む生命倫理問題は複雑で解決が難しい。松山副住職は「黒白で判断できる問題ではない。どういうアプローチで取り組むかが大切だ」と議論の積み重ねが欠かせないとした。

京大iPS研は患者の治療が始まる前から、生命倫理の問題に力を入れている。13年春に生命倫理を専門に扱う「上廣倫理研究部門」を所内に立ち上げ、定期的にイベントを開いたり報告書を公表したりしている。1月下旬も生殖細胞に関する意識調査などをまとめた報告会を京都市で開く予定だ。

現状では生殖医療の分野でiPS細胞の臨床応用が進む可能性は極めて低い。臨床応用が先行するのは「ストック細胞」の配布で、京大iPS研は外部の有識者も加わった委員会で審査する仕組みを設けている。ストック細胞は日本人と適合する免疫の型を持つ人から血液の提供を受け、iPS細胞を作って備蓄。臨床研究などを目指す民間企業や大学などの機関へ配布する事業だ。15年夏から世界初の取り組みとしてスタートした。

審査委員会は機関からの申請を受けて、安全性などを中心に7つの項目で研究が適切かどうかを判断している。委員会では生命倫理の問題は直接議論しないものの、申請する大学などが倫理委員会を設けて検討したかどうかの情報提供は受けている。同委員会の委員長を務める京大の平家俊男教授は「提供した細胞が独り歩きしたら困る。委員会の責任は重い」と気を引き締める。万が一、配布したiPS細胞が当初の目的以外に使われた場合、ストック細胞の取り組み全体に影響が出かねないからだ。

これまで配布したプロジェクトは41件。臨床応用だけでなく、実験装置の開発に利用する非臨床向けも含まれる。先端医療の研究では情報公開が大切だが、配布した機関名を公表したのは大日本住友製薬とヘリオス、理化学研究所、大阪大学などに限られる。配布を受けた機関側が情報開示を拒んでいるためだ。平家教授は「どこかの時点では議事録などの情報を公表する必要があるだろう」と語る。

iPS細胞の臨床応用は日本が世界でも先行している分野だ。いずれ生命倫理の問題にもいち早く直面する可能性がある。解決に近道はないものの、技術の進歩とともに開かれた議論を進めていく必要があるだろう。

(大阪経済部次長 竹下敦宣)

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私も最初は倫理問題を解決できたと考えていました。

 

研究が広がることによって、倫理問題が出てきたわけですが、山中教授なら、問題が解決できるかもしれません。

 

 

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