老眼も治せる!白内障治療最前線 | Just One of Those Things

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進化する眼内レンズで快適な視力を取り戻すというものです。


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白内障は今や「必ず治せる老化現象」
近視、乱視、老眼まで治る? 進化する眼内レンズで快適な視力を取り戻す
2015/10/20 聞き手:稲垣麻里子=医療ジャーナリスト
日経Gooday


 加齢によって、レンズの働きをする水晶体が濁り視力が低下する「白内障」。早ければ40代から始まり、60歳以上で80%、80代以上ではほぼ100%の人がなる、いわば「老化現象」の一つだ。白内障は世界では失明原因のトップだが、日本では唯一の治療法である手術治療が保険適用されているため、適切な時期に適切な治療を施せば「必ず治せる老化現象」でもある。


 白内障手術は年間約100万件と国内では最も多く行われる外科手術。最近では移植する眼内レンズの技術も目覚ましく進歩し、ライフスタイルに合わせて選べるようになった。白内障手術のパイオニアである三井記念病院(東京都千代田区)眼科部長の赤星隆幸医師に最新事情を聞いた。


■50代でいきなり近視が進んだら要注意!


---白内障は高齢者の病気かと思っていましたが、若い人でもなるのでしょうか。


赤星 白内障は加齢によりレンズの働きをする水晶体が濁ってものが見づらくなる病気です(下図)。水晶体の直径は1cmぐらいありますので、混濁する場所によって自覚症状が出ることと出ないことがあります。


 白内障には大きく分けて3つのタイプがあります。


 水晶体の端の方から中心に向かって濁ってくる「皮質白内障」は、濁りが瞳にかかるまで、症状はまったく出ません。初期の症状は視力低下というより、「まぶしさ」(グレア難視)です。


 これに対し、水晶体の後ろ側がスリガラス状に濁ってくる「後嚢下(こうのうか)白内障」は、中心部から発症するために、初期のうちからまぶしさや視力低下などの症状が起こります。このタイプは20歳代の若い年齢で発症します。糖尿病の方や、アトピー性皮膚炎、関節リウマチなどでステロイドなどの薬を長く服用している方に多くみられます。一番多いのが、アトピー性皮膚炎を伴ったもので、進行が非常に早いのも特徴です。中には数週間で水晶体が真っ白に濁り、視力も指の数すら判らなくなるまで急速に低下し、緊急手術を行うケースもあります。


 3つめのタイプは水晶体全体が均一に硬くなってくる「核白内障」です。近視の度数が進んだり、色の見え方に変化が起こりますが、眼鏡をかければ視力が出るので、治療が遅くなりがちです。進行すると手術が難しくなり、合併症のリスクも高くなるので放置してはいけない白内障の代表格です。通常はこの3つのタイプがミックスされ、何十年という歳月をかけてゆっくり進行します。従って、白内障の頻度は高齢者ほど高くなります。


---症状が出なければ、治療しなくてもよいのでしょうか。


赤星 「皮質白内障」や「後嚢下白内障」であれば、基本的に生活に支障が出たときに治療を開始すれば問題はありません。ただ、「核白内障」の場合は放置するのは好ましくありません。このタイプは進行すると水晶体が硬くなるため、手術の際にたくさんの超音波エネルギーが必要になり、そのエネルギーによって、角膜(目の一番表面の膜)を傷めてしまう可能性が高いのです。術後になかなか視力が回復しなかったり、もともと角膜が弱い人は角膜が混濁して元に戻らず、角膜内皮細胞移植が必要になる場合もあります。また極度に進行した核白内障では、手術の最中に、水晶体を包んでいる膜が破れてしまうこともあります。


---それはちょっと怖いですね。「核白内障」の自覚症状をもう少し詳しく教えてください。


赤星 核白内障では水晶体が硬くなり光が強く屈折するようになるので、自覚症状としては、曇って見えるようになるのではなく、近視が進んで近くがよく見えるようになります。核白内障は、もともと近視の強い人によく起こります。近視の度数はふつう中学から高校生の頃には落ち着いて、それ以降、変わることはありませんが、50歳を過ぎてから年々近視の度数が強くなり、作った眼鏡が1年も経たずに合わなくなるようですと、核白内障を発症している可能性があります。


 核白内障のやっかいなところは、進行するとトラブルの原因になるタイプであるにもかかわらず、最初のうちは眼鏡で視力を調整できるために、患者さんも眼科医も発症に気づかないことです。近視が進むので、近くのものが老眼鏡なしで見えるようになり、老眼が治ったかのような錯覚を起こす方もいます。眼科を受診しても、白内障の専門医でないと見逃されることすらあります。50歳代になってから年々近視が進む、老眼鏡がいらなくなった、黒と紺などの色の区別がつきにくくなった、といった症状が出てきたら、注意が必要です。


■手術成功率は極めて高く、眼内レンズで乱視も改善


--- 白内障の手術はどのように行われるのでしょうか。


赤星 25年前の白内障手術は、眼球の半周近く1cm程度を切開し、濁っている水晶体を丸ごととり出して眼内レンズを挿入し、そこをまた縫い合わせる「水晶体嚢外摘出術」という手術法が主流でした。術後に大きな乱視が残り、掛けにくい乱視のメガネで視力を矯正する必要がありました。この術式は眼球を大きく切るので炎症が強く、入院も必要となり、術後の視力回復にも時間がかかりました。


 近年は、「水晶体超音波乳化吸引術」という、3mmほどの切り口から超音波を使って水晶体を砕いて吸い取る術式が普及しています。傷口が小さくなったことで、眼球への負担が軽くなり、日帰り手術も可能となりました。しかし、強膜(白目の部分)から眼球を切開し、水晶体に溝を掘って分割する従来の手術法では、手術に20~30分の時間を要し、眼球に注射をする麻酔が必要でした。


 そこで私たちの施設では、さらに術式の改良を進めた結果、手術時間を3~4分程度にまで短縮し、麻酔も点眼麻酔で済むようになりました。患者さんは術後も眼帯なしですぐにものを見ることができ、眼帯なしで歩いて帰宅できます。さらに、2004年に私たちが世界に先駆けて実用化した1.8mmの切り口から行う極小角膜切開超音波手術では、手術によって乱視をつくらなくなりました。以後私たちの施設では、1.8mmの切り口から白内障を取り除き、直径6mmの眼内レンズを移植するのが標準術式となっています。


 さらに最近では、「トーリックレンズ」という乱視を矯正できる眼内レンズを用いることにより、術前から存在する乱視ですらも白内障手術によって治してしまうことが可能となりました。


 この眼内レンズは保険適用で、通常の眼内レンズと同じ費用で治療を受けることができます。ただ、レンズの価格が高額で手術に高度な技術を要するため、すべての施設で扱っているわけではありません。事前に問い合わせが必要です。


---白内障の手術で乱視も改善するというのは、まさに一挙両得ですね。


赤星 眼内レンズは進化し続けていて、新しいタイプのものがどんどん出ています。かつては硬いプラスチック製でしたが、現在では傷口から折りたたんで移植することが可能な軟らかいレンズ(foldable IOL) が主流です。シリコン製のものもありますが、術後に炎症が強くなったり、後発白内障をきたしやすいという問題があり、今では屈折率の高いアクリル製が主流となっています。


 また最近では、瞳が大きくなる夜間に、よりクリアに見える非球面レンズが広く使われるようになりました。色も、透明なレンズではなく黄色いレンズが主流になってきています。理由としては、色の見え方を自然にするということと同時に、欧米で失明原因のトップである「加齢黄斑変性」の一因となっている有害な紫外線や波長の短いブルーライトをブロックできるからです。加齢黄斑変性の進行を防ぐためには、黄色いレンズが理にかなっているというわけです。


■眼内レンズで術前よりも視力が改善する?


---眼内レンズの度数はどのような基準で選べばよいのでしょうか。乱視だけでなく、近視や遠視も改善しますか。


赤星 もちろん治せます。白内障を取り除いた後に移植する眼内レンズの度数によって、術後の屈折状態をいかようにでも変えることができます。


 眼鏡をかければ、どの距離でも見ることができるのですが、要は眼鏡をかけない時にどこを見えるようにしたいかということで眼内レンズの度数を決めます


---老眼は治せないのでしょうか。


赤星 老眼も治せます。多焦点レンズを選べば、日常生活に不自由のない程度に近くも遠くも見えるようにできます。ただ多焦点といっても、現在、日本で認可されているのは、二重焦点レンズですので、遠方と近方の2カ所が一番見やすくなります。近方の焦点の位置は、レンズの種類によって、30、40、50cmの決まった位置に焦点が合い、そこからずれるとぼやけてしまいます。


 従来の多焦点眼内レンズでは、ピアノの楽譜やデスクトップパソコンのモニターなど、少し離れた中間距離が見づらいという欠点があったため、最近では近方の焦点をやや遠くに設定したものや、三重焦点のレンズも開発されています。老眼のない若い時の目と違って、連続的にどの位置も見えるというものではありません。


 多焦点眼内レンズは左右に同じレンズを移植して最大の効果が得られます。両方の目に映った映像を重ね合わせて脳が認識することにより、近くにピントが合いますので、片眼だけの手術では良い結果が得られませんし、斜視のある人もうまくいきません。若い人はすぐに近方も見ることができますが、歳をとるにつれて、慣れるまで時間がかかるようです。


 また、多焦点眼内レンズは、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性、緑内障や黄斑前膜など眼底に病気があると使うことができません。また神経質な性格の人は、術後に細かいことが気になって仕方ないという場合もありますので、お勧めしません。また歯科医のように非常に細かい作業をされる方にも、お勧めしません。担当医師によく相談してメリットデメリットを十分理解した上で決めることが大切ですね。


---眼鏡やコンタクトレンズから解放されるというのは魅力的ですね。多焦点眼内レンズは保険診療で入れられますか。


赤星 残念ながら、今はまだ先進医療扱いですので、一般の保険診療では入れられません。乱視のない方の場合は両眼で約80万円、乱視矯正用の多焦点眼内レンズですと約110万円の費用がかかります。ただ、先進医療特約付の民間医療保険に加入している人であれば、これを使うことができます。


---眼内レンズの交換は可能ですか。また、一度手術をすれば、白内障は再発しないのでしょうか。


赤星 眼内レンズは水晶体嚢内で癒着するため、メガネのように簡単に取り替えることはできません。一生ものなので、眼内レンズだけでなく、医療機関選びも重要です。


 また、5~6%の割合で、手術数カ月後から数年後に濁りが生じて視力が低下する「後発白内障」が起きることがありますが、レーザー治療を行うことで視力は改善しますので心配はありません。


---過去にレーシック(LASIK;特殊なレーザーを使って角膜の屈折力を調整して視力を回復する手術)を受けた人でも白内障の手術は同じように受けられますか。


赤星 レーシックを受けた人でも白内障の手術は受けられますが、レーシックをした目は角膜が不規則な形で削られているため、移植する際、眼内レンズの度数を正確に計算することが困難です。レーシックを受けた人やこれから受ける予定の人は、レーシックを受けた医療機関から必ず術前の目のデータをもらって保管しておくようにしましょう。


■赤星隆幸(あかほし たかゆき)さん 
三井記念病院眼科部長、日本橋白内障クリニック・秋葉原アイクリニック委託執刀医
1957年神奈川県生まれ。自治医科大学卒業。1992年に白内障の独自の手術法「フェイコ・プレチョップ法」を開発し、白内障手術を安全かつ短時間で行うことを可能にした。年間約1万件近くの白内障手術をこなし、世界でも有数の症例数を誇る。
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ちょっと怖い話ではありますね^^;


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