がんを防ぐ・治す。新薬開発中 | Just One of Those Things

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がんにかかわる薬は、治す目的の薬だけではありません。再発を抑える「防ぐ薬」や早期発見に役立てる「診断薬」など、さまざまな効果をもつ新薬の研究が進められているようです。(がん新時代)



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(がん新時代:69)防ぐ・治す、新薬開発中 研究・治験進む「副作用も少なく」
2015年1月20日05時00分 朝日新聞


◇がんを学ぶ


 がんにかかわる薬は、次々と開発が進められている。がんを治すだけでなく、がんを防ぐ薬につながるデータも出てきている。がんの薬をめぐる動きを整理してみた。


 ■ビタミンA改良、肝臓がん抑制期待


 岐阜大学は、ビタミンAを改良した薬で、肝臓がんの手術を受けた患者の再発を防げるかどうかを調べている。


 この薬を使わなかった約130人と使った約120人で、3年間で再発しなかった割合を比べる臨床試験(治験)を実施。使わなかったグループは29%で、使ったグループは44%だった。5年間の生存率も、使わなかったグループの67%と比べ、使ったグループは81%と高かったという。現在、さらに多くの患者で治験を進めている。


 「よい結果が出た。深刻な副作用もなかった」。清水雅仁講師(肝臓病学)は期待を寄せる。

 この薬は「非環式レチノイド」といい、武藤泰敏・岐阜大名誉教授らの研究チームが開発した。チームは肝硬変の患者の肝臓ではビタミンAが少なくなっていることに目をつけ、ビタミンAに肝臓を守る力があるのではないかと考えた。


 ビタミンA自体は、大量に摂取すると発熱や肺炎、呼吸困難などの副作用が出る。化学構造の一部を変えたこの薬は、動物実験で肝臓がんを抑える可能性が示され、ヒトでの研究へと進んだ。


 清水講師によると、肝臓がんは再発率が高く、不安を抱える患者も多い。清水講師は「3、4年後には医薬品の承認を得て、患者の元に届けたい」と話す。


 昨年2月、国立がん研究センターがん予防・検診研究センターの武藤倫弘・化学予防研究室長らは、風邪薬などに使われるアスピリンが大腸ポリープの再発を約4割抑えたという臨床研究の結果を発表した。ポリープは大腸がんの予備群とされ、ポリープを抑えることで大腸がんの危険も減らせることが期待できるという。


 非環式レチノイドとアスピリンが効く主な仕組みは、酵素などにくっついて、がん細胞やがん化しかけている細胞の働きを正常にしたり、自死に導いたりすると考えられている。


 がんの再発を防ぐ薬として、これまで世界的に認められているのは、乳がん用のタモキシフェンくらいしかない。がん細胞の活動を活発化させる女性ホルモンの作用を妨げるとされる。


 武藤室長は「長期間飲むことになる予防薬は、副作用がほとんどないものでなければならない」と説明する。アスピリンは胃潰瘍(かいよう)などの副作用があるので、効果とリスクの慎重な検討が必要という。


 ■免疫力高める療法、研究盛んに


 手術、放射線と並ぶがんの3大治療法とされるのが、抗がん剤を使う化学療法だ。多くは、遺伝子などに作用してがん細胞の増殖を抑える効果がある。シスプラチンなどの白金製剤は、遺伝子に橋をかけるように結合し、遺伝子がほどけないようにしてがん細胞が分裂できなくする。


 このほか、遺伝子に損傷を与えるアルキル化剤、遺伝子合成を妨げる代謝拮抗(きっこう)薬など様々な種類がある。


 これらの抗がん剤は正常な細胞の分裂も邪魔するので一般的に毒性が強い。激しく増えているがん細胞に比べ、通常の細胞は分裂の頻度が少ないため、その差を利用して効果を発揮する。だが、毛髪や粘膜など細胞分裂の盛んなところはダメージを受けやすい。


 こうした副作用を少なくしたのが、1990年代に登場した分子標的薬だ。正常な細胞を傷つけないように、がん細胞を攻撃する工夫がされている。


 乳がん治療薬のトラスツズマブ(ハーセプチン)は、乳がん細胞の表面に多くあるたんぱく質にくっつく。発熱などの副作用はあるが、重いものは少ないとされる。分子標的薬でも、ゲフィチニブ(イレッサ)のように一部の患者に重い副作用が出た場合もある。


 分子標的薬は攻撃する目印がはっきりしているので、患者の遺伝子やがん細胞の特徴の差によって効く人と効かない人が出やすい。事前の検査で、効きやすい患者かどうか判断する必要がある。


 最近、研究が盛んになってきたのが免疫療法だ。ヒトは、がんなどの異物を認識して排除する免疫を持っているが、がん患者は免疫がうまく働いていなかったり、がん細胞が免疫をごまかす能力を得たりしていることがある。免疫療法は免疫力を高めて、がんを治すことを目指している。


 昨年7月、ニボルマブ(オプジーボ)という皮膚がん治療薬が承認された。免疫のスイッチをオフにするたんぱく質に作用する。がん細胞はこのたんぱく質を利用して免疫から逃れているが、ニボルマブはこのたんぱく質にくっついて、がん細胞が免疫のスイッチをオフにできなくする。


 ■診断薬めざし「目印」探し


 がんを治す効果はないものの、抗がん剤の副作用を抑える薬もある。吐き気や下痢、口内炎には漢方薬などが使われる。がんによる痛みを軽くする鎮痛剤も欠かせない。


 がん細胞が放出するたんぱく質や遺伝子などに反応し、がんの早期発見に役立つ診断薬は、開発に向けた基礎研究が活発化している。進行する前にがんを見つけられれば、治る可能性が高まる。そのためには、診断薬の目印になるがん特有のたんぱく質などを突き止めなければならない。


 京都大と島津製作所は、ノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんらが手がけた技術を応用して、がん組織に分布するたんぱく質や脂質などを調べている。乳がん細胞を見分ける目印なども見つけた。国立がん研究センターは、胃がんや肺がんなど13種類のがんをわずかな血液を調べるだけで発見できる技術の開発に取り組んでいる。(鍛治信太郎)


 ■がんリスク高める糖尿病 「がんと糖尿病」講師・岩岡秀明さん(アピタル夜間学校から)


 糖尿病と聞くと、多くの人は目や腎臓、心臓などに起きる合併症を心配すると思います。しかし、実はがんとも深い関係にあることは、あまり知られていません。


 糖尿病になると、様々ながんのリスクが増えることがわかってきました。例えば、膵臓(すいぞう)がんや肝臓がんでは約2倍になります。糖尿病専門医が糖尿病患者にがん検診を勧めるのは、これが理由です。


 がんの治療にも影響します。血糖値が高いと抗がん剤が効きにくいとされ、手術や放射線治療では傷が治りにくい、感染症にかかりやすいといった問題があります。抗がん剤と同時に使われるステロイドは、食欲増進や吐き気予防に有効ですが、血糖値も上げてしまう「ステロイド糖尿病」が起きる可能性があり、糖尿病やその予備群の人は注意が必要になります。


 糖尿病は自覚症状がないことが多く、がんになって初めてわかる人も少なくありません。糖尿病や予備群の人のがん治療では血糖値コントロールが不可欠です。ただ、治療法や薬の種類も多く、食事など日常生活にも大きくかかわるため、簡単ではありません。


 がん治療の現場でも、私たち糖尿病専門医の知識と経験が役に立つはず――。講義では、そんな思いも伝えたいと思っています。(聞き手・田之畑仁)


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 岩岡さんが講師を務める「もっと知ってほしい がんと糖尿病のこと」は、1月21日午後7時半から医療サイト「アピタル」で無料で視聴できます。会場(東京・秋葉原)で観覧いただける方も募集しています。詳しくは夜間学校のページ(http://apital.asahi.com/school/)をご覧ください。


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 船橋市立医療センター代謝内科部長。千葉大医学部卒。成田赤十字病院などを経て2009年から現職。千葉大臨床教授も併任。



 ◇apital 患者のための医療サイト

 http://apital.asahi.com/


 ◇次回の掲載は2月の予定です。

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一日も早く実現できることを祈ります。


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