化学療法耐性におけるがん幹細胞の役割がわかってきました。
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がん: 化学療法耐性におけるがん幹細胞の役割
Nature 517, 7533
2015年1月8日
最近の研究で、がん幹細胞(CSC)の生存率が化学療法に応じて上昇することが明らかにされた。A Kurtovaたちは、損傷を受けた組織の修復の際に幹細胞が動員されるのと同じように、CSCも化学療法による損傷に応じて活発に増殖するのではないかと考え、検証を試みた。患者由来の異種移植片などによって作製したマウス膀胱がんモデルを使って化学療法サイクルを連続的に行うと、幹細胞様のCK14+細胞の数が増加し、化学療法サイクルの中間となる期間に腫瘍が再増殖することが分かった。この増殖は細胞死を起こした腫瘍細胞から放出されるプロスタグランジンE2(PGE2)により促進され、PGE2によって誘導される損傷修復に似た形で起こる。PGE2中和抗体を併用すれば化学療法耐性は抑制されるので、これは膀胱がんに対する治療戦略候補となると考えられる。
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先週号のトップに上げられていた論文のハイライトです。
考えてみれば、恐ろしい損傷修復に似た主要の再増殖です。
これらのメカニズムがわかれば、がん治療においての戦略方法が立てられるでしょう。
今週号のNewsでは、米国で行われていたがんのゲノム計画が終了し、会議が行われたことが取り上げられていました。
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がんゲノムアトラス(TCGA)計画が完了し、次に進むべき方向はさらなる解読なのか、機能解析なのかについて議論が。
End of cancer atlas prompts rethink p128
Geneticists debate whether focus should shift from sequencing genomes to analysing function.
Heidi Ledford
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要は、まだ解読が残っているので「解読の先を進めたほうがよい」という意見と、機能解析すれば「すぐに治療に役立てることが可能だ」という意見で分かれているという話です。
TCGAのデータは膨大の量のゲノムデータがあり、これにアクセスするには、大規模なデータをあつかえるところしかできないという難点もあるそうです。
日本においてもiPS細胞を用いて抗がん剤の効果を調べる計画があります。
一日も早く、がん治療に役立てられるようになると良いですね。