発売からしばらく経ちましたがサントラ「太陽と麦わら帽子」について、ちょっとばかし書いてみたいと思います。録音していたのは2006年の暮れと2007年の春なので、さらに月日が経ってますが、当時を思い出しつつ。

たかのてるこさん(以下、たかのさん)から栗コーダーに番組用の音楽を作ってほしいという依頼がありました。その番組は「銀座OL 世界をゆく!」というタイトルで、旅人であり銀座OLでもあるたかのさんが自ら世界を旅して撮影してきた映像を、自ら編集し自らテレビ局に売り込んで放送してもらうに至ったという精神性はかなりインディーズライクなものだったのだけど、なんでも既に何作かオンエアされていて、頼まれたキューバ編「キューバでアミーゴ」は4作目にあたるのだそうだ。

過去の作品には栗コーダーのCDを含む既存の楽曲を使っていたらしい。もちろんJASRACを通して。で、せっかくなら書き下ろしのオリジナル曲を!というたかのさんからの熱いラブコールに負け(?)「キューバ編」の映像に合わせメンバー4人で音楽を作ることになった。それが2006年の12月のこと。オンエアは2007年のお正月にフジテレビで箱根駅伝の裏番組だったと思う。

ちなみに最初「銀座OL」と聞いて勝手に、綺麗にお化粧をしてタイトなスーツを着たキャリアウーマン、もしくはワンレン、ボディコン、コンサバ(死語?)な出で立ちなどを想像して、そういう人が場違いな砂ぼこり舞う異国に放り出されて悪戦苦闘する旅のお話なのかなと想像したのだけど、本人にあってみると全く正反対だったってことに気づかされるわけでした。番組では島田紳助さんがコメンテーターとして出ていることが多く、たかのさんにいいツッコミを入れるんだな、これが。

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過去の川口くん写真を転載
左がたかのさん、右はこの番組でナレーションをしている原マスミさん

いわゆる劇伴の仕事は、大きく分けるとすると2通りの作り方があって、ひとつは具体的な特定のシーンに当て込んで曲を作るタイプ。もうひとつは表情別カテゴリー別(喜怒哀楽やら、朝夜、屋内野外など)に汎用性のある曲を何曲か作っておいて、あとからシーンごとにあてる曲を選ぶタイプ。ざっくり言うと前者は映画などで、後者はシリーズもののテレビ番組などでの手法になるのかな。

たかのさんの番組でBGMの編集などを担当されている薄井さんからのオーダーシートにはその両方のことが書いてあった。具体的なシーンのことも汎用性のことも。例えば「レンタカーでお出かけのシーン→旅のテーマ」「翌日サン・フランシスコ広場まで→異国の風景」「てるこのスピーチ~ミルトン→Love&Peace」というような感じで。気を使ってくれた部分も多いのだろう、純粋にシーンごとにMナンバーを振っていくだけではなく、そこに後者のようなカテゴリー分けがしてあって、それがマトリックス上の表になっていた。縦×横でざっと25のお題(曲)。

これはありがたい反面、多角的に作戦を練る必要があってやや難易度が高いようにみえる。しかも、それを4人で分業しようというのだ。実はそれまでの栗コーダーはこういう仕事の時にはうまいことワークシェアできていなかった。そりゃ、ひとりで作曲した方が世界観は統一できるし、曲調がかぶってしまったりする心配もない。ただせっかくバンドとして頼まれた仕事だからうまく4人のカラーを出してみたい。このたかのさんの作品は自分の中ではそれが初めて出来た機会としてエポックなものになったわけです。

メンバーが考えあぐねている(ようにみえる)中、自分が率先してざっくりと大きく曲調を14種類に分けた。特定のシーンにあてるという前者の考えをある程度見切って、汎用性のあるもの、後者のやりかた寄りにするという作戦。もちろん、編集された映像やオーダーシートとにらめっこしながら必要な要素が漏れないように熟考してのこと。予算との関係もあってこの辺がほどよいカテゴライズかと。

以下が、その考え出した14の曲調

1.踊り
2.楽しい
3.粋な
4.可愛い
5.笑い
6.のんき
7.爽やか
8.のどか
9.安堵
10.出会い
11.別れ
12.センチ
13.驚き
14.不安

それから、これをメンバーに割り振った。得意そうな曲調を考慮しつつ、やや独断も入れ、栗原4曲、川口3曲、近藤3曲、関島4曲。

話が長くなってますが、サントラを聴いてくれた人はどの曲がどのお題だったのかを想像するってお楽しみがありますよ。のちに付けた正式な曲名にそのままお題のニュアンスが残っている曲もあるので、熱心なリスナー諸君ならばある程度お分かりいただけることでしょう。

もうちょっと続きます。

2007年3月、この流れに乗って我々はオリジナルアルバム「笛社会」の録音をした。オリジナルだけにお題はない。が分業の流れは完璧に受け継いで、ビートルズでいう「ホワイトアルバム」みたいな作品が出来た。

そして、翌4月、「銀座OL 世界を行く!」というネーミングになる前の作品らしい「たかのてるこ旅シリーズ 恋する旅人 さすらいOLインド編」をDVD化したい、ついては今後も銀座OLシリーズのDVD化も想定して、さらに追加で曲をお願いしたい、というたかのさんからの熱いラブコールに負け(?)、6曲の追加録音をした。

この時は既に録った14曲+バリエーションがあった上でのオファーなので、オーダー内容も極めて具体的だった。

A.バタフライのテーマ
B.カントリー・ロード
C.お手伝いのテーマ
D.デルダンのテーマ
E.突撃のテーマ
F.髙野の夢のテーマ

ほぼそのまま正式タイトルになっている曲も多いので、どれがどの曲か分かりやすいですね。このセッションでは栗原1曲、川口2曲、近藤2曲、関島1曲と割り振った。つまり2回のセッション合わせて1人5曲、4人で20曲を作曲し録音したことになる。

あれから3年、「太陽と麦わら帽子」と名付けられてようやく日の目を見たこのサントラにはその20曲が全て入っている。バリーションを含め全26曲。(正確に言うと、微妙にお題からそれたような曲が1曲あるのだけど…。)

あさっての明日館でこのアルバムから何曲か披露できると思います。MCでは正式タイトルだけ言うと思うので、果たしてそれがMいくつなのか、何のテーマなのか、想像して楽しんで下さい。

ではでは、長くなりましたが、明日館で待ってます!

近藤

太陽と麦わら帽子 ~「銀座OL世界をゆく!」O.S.T./栗コーダーカルテット

¥2,625
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これだけ長文なので、この画像が左サイドバーのものと惑星直列になることもないでしょう。アフィリエイトを初めて貼ってみます。自分で画像を準備するより逆に手っ取り早いし、ネット資源にもエコだと分かったので。