(ニッセイ基礎研究所 金融研究部門 主任研究員 千田英明)
1――はじめに
金利上昇には良い金利上昇と悪い金利上昇があるといわれている。良い金利上昇とは経済(景気)が良い(または将来良くなると見込まれる)時に上昇する金利、悪い金利上昇とは経済(景気)が悪い(または将来悪くなると見込まれる)時に上昇する金利である。近年の長期金利上昇はどの影響によるものなのか、その要因を調査してみた。
良い金利上昇には次のケースが考えられる。
① 景気が良く株価が上昇するため、債券売り、株式買いの流れが発生して金利が上昇するケース
② 景気が良く設備投資などが盛んになり、資金需要が増えるために金利が上昇するケース
③ 景気が良く物を買う人が増え物価が上昇するために、インフレを抑制しようと中央銀行が金融引き締めをして金利が上昇するケース(ただし、③はインフレを伴う金利上昇のため、悪い金利上昇と解釈されることもあるようである) など悪い金利上昇には次のケースが考えられる。
④ 財政不安から国債が紙切れになるリスクを恐れ、投資家が国債を売却することにより金利が上昇するケース
⑤ 流動性の低下、金融危機などによる投資家のリスク回避傾向などから株安、債券安となり金利が上昇するケース など
金利は様々な要因が組み合わさりながら変動しているので、明確に切り分けられるものではないが、それぞれの要因が金利にどの程度の影響を与えているのか、相関係数を用いてその影響度合の数値化を試みた。相関係数とは2つのデータ間の関係(類似性の度合い)を示す統計学的指標である。-1から+1までの数値をとり単位はない。相関係数がプラスであれば正の相関があると考えられ、+1に近く数値が大きいほど相関関係が強い。相関係数がマイナスであれば負の相関があると考えられ(逆相関ともいう)、-1に近く数値が小さいほど負の相関関係が強い。相関係数がゼロ近辺のときは、相関関係はない。相関係数を計算するにあたっては、それを計測するデータの期間(20 日、3ヶ月、1年など)、間隔(日次、月次、四半期など)、タイムラグ(株価上昇の数日後に長期金利が上昇すると考え、株価データと長期金利データが連動するタイミングを数日分ずらす)などによってもその数値は変わる。そのため、本レポートではその中で最も相関係数が高くなると考えられる方法で議論を進める。

