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(仮)アホを自覚し努力を続ける!

アウグスティヌスの格言「己の実力が不充分であることを知る事が己の実力を充実させる」

地域での人材定着のために何をすべきか
(連合総研主任研究員 麻生裕子)


 急激な人口減少時代が目前に迫っている。今年5月に日本創成会議が2040年までに896自治体で若年女性が半数以下に減少するという推計を発表した。若年女性人口の減少が続くと人口の再生産力が低下し、総人口の減少に歯止めがかからなくなるという。この「消滅可能性都市」の指摘は日本中に衝撃を与えた。

 こうした人口急減を背景に、いま地方では県外への人口流出が大きな問題となっている。総務省の住民基本台帳人口移動報告をみると、地方県、地方都市では20~24歳層の転出者数が多い一方で、大都市圏では同じ年齢層の転入者数がきわめて多い。つまり若年層が地方から大都市圏へ移動したために、地方では働き手となる若年層が減少しているということを意味している。

 それにくわえ、中小企業の多くの業種で人手不足が深刻化している。とくに建設や介護といった求人倍率の比較的高い業種などでは、近隣県との労働力のとり合い状態になっていることが容易に想像できる。いかに地域に人材をよびこみ、定着させるかがいま求められている。

 今年9月に安倍内閣は「まち・ひと・しごと創生本部」を発足させた。「まち・ひと・しごと創生法案」が国会に提出され、その後、創生会議のなかで総合戦略の骨子案も示された。その内容は、東京圏における過度の人口集中の是正、若年層の就労・結婚・子育ての希望の実現、地域の特性に即した地域課題の解決の3点を基本的視点として、まち、ひと、しごとの創生の好循環をつくりだすというものである。

 これらの基本的視点はそのとおりであるが、問題は総合戦略骨子案に示された政策パッケージである。その一部をみると、地域を支える個別産業分野の戦略促進、地域における国際競争力の強化、企業の地方拠点機能強化、企業等における地方採用・就労の拡大、などがあげられている。これらをみるかぎり、産業や企業の事業活動を活発化させて雇用を創出するという従来型の戦略から抜け出しきれていないという印象をうける。

 それでは、どのような選択肢があるだろうか。ここで逆の流れを考えてみる必要がある。事業の活性化によって就業機会を創るという流れではなく、労働者がここで働きたいと思えるような労働条件・生活環境に改善すれば、それが労働力確保につながり、事業も活性化するという逆の発想である。いわば、トリクルダウン型からボトムアップ型へ地域戦略を転換することである。いまは人手不足の時代であるから、新規の雇用創出よりも、労働・生活環境の整備・改善のほうが、人材の定着には効果的であるように思われる。

 しかし実際には、人材の定着には程遠いことが地方で起こっている。たとえば、直近では山形市、札幌市と立て続けに市議会で公契約条例案が否決された。トラック運転手の特定最賃でいえば、1980年代に全国にさきがけて高知県で大型運転者最賃が新設されたのをきっかけに、その後いくつかの県でも同様に新設に向けた運動が始まったが、結局、使用者側の反対にあい断念せざるをえなかった。建設業や運輸業などの業種は人手不足で厳しい状況にあるため、こうした地域ミニマムをつくり労働条件を改善した方が、労働力を確保したい使用者にとっても有利に働くはずである。

 その他にも着手すべきことはたくさんある。就職やスキルアップのために職業・教育訓練も不可欠であるし、その地方で生活をしていくために医療・介護・保育などの社会サービスの充実も重要である。働きやすく住みやすい、長期的に安定した基盤を地域レベルでつくることによって、人材が定着し、産業・企業が活性化する。さらには、地域も活性化する。地域を軸にしたこれからの労働運動が期待される。
円安で輸出数量は増加しなくても経済好循環は実現できる
(米国大恐慌の経験)


 円安になっても輸出数量が伸びないため、好循環が実現していないという意見がある。これは一面の真実ではあるが、米国大恐慌の経験をみると、輸出数量が増加しなくても経済好循環を実現することは可能である。

 クリスティナ・ローマーCEA(大統領経済諮問委員会)委員長(当時)は、黒田日銀総裁が就任してまもなく日銀の金融政策について論じたスピーチを行い(Romer, 2013)、その中で自分は理論というよりはむしろ米国の経験に基づき、日本の金融政策の変更を支持する旨を述べた。彼女の根拠とは、Temin and Wigmores(1990)が分析した大恐慌時の米国の経験であった。1933年にドルが金本位制を離れて減価した際、ドル建て穀物価格が上昇し、米国農家は輸出による収入が大きく増えた。彼らはこの所得を使って車を購入し、それが経済を押し上げる起爆剤となった。

 このエピソードのポイントは、農産物の輸出数量は増えていないことだ。農産物の供給の弾力性は極めて低い(数量を増やすには翌年の収穫を待たねばならない)。変化したのは価格であり、それによって農家の所得が増え、消費が増え、工業生産が増え・・・と好循環が生まれていった。

 では、現在の日本への教訓は何か。円安で収入が増加した輸出企業は、その収入を支出しないと好循環につながらない。米国の例では、当時の農家は多くの場合自営業であろうから、儲けはすなわち、おカネを使う人の所得の増加だった。ところが現在の日本では、このリンクが切れている。企業の収入の増加が、おカネを使う従業員の所得の増加につながっていない。米国の経験は、この切れたリンクをつなげることが、経済好循環を実現するために不可欠であることを教えてくれる。
人口減少社会における地域と保育サービス
大石 亜希子(千葉大学法政経学部教授)


地域によって異なる保護者負担

 保育サービスを巡る第3の格差は、保育料の格差である。これには2つの面がある。ひとつめは、認可保育所と認可外保育施設(東京都の認証保育所や横浜市の横浜保育室など)の間の格差で、認可外保育施設の保育料は、認可保育所よりもおしなべて高い。認可保育所の保育料は、所得(厳密には市町村民税額)に応じた負担であり、公費によって軽減されている一方で、認可外保育施設の保育料は基本的には所得に関係なく一律である。

 問題は、フルタイム労働者と比較して、パートや不規則な勤務の労働者のほうが認可保育所の入所に当たっての優先度が低いと判断されることである。結果としてこれらの世帯は、収入が低いにもかかわらず、保育料の高い認可外保育施設を利用せざるを得ないことになる。大石(2003)によると、認可外保育施設の利用者は、高所得層と低所得層に二極化している。つまり、認可保育所の保育時間では間に合わない長時間労働の高所得世帯と、不規則勤務で低収入の世帯が混在している。

 後者のタイプの世帯は、認可保育所利用者との負担の公平性が特に問題となる。このため近年では、独自の基準を満たす認可外保育施設の利用者を対象に、保育料の軽減策を講じる自治体が出てきている。

 ふたつめは、自治体間の保育料格差である。現行制度では、応能負担の仕組みに沿って国の保育料徴収基準による保育料を徴収しているが、財政力のある自治体ほど軽減措置を講じている場合が多い。このため、所得が同じ世帯であっても、居住地によって実際の保育料が異なるということがしばしば起こる。たとえば、前年度の所得税額が4万円の世帯が2歳児を一人だけ預けるとしよう。東京都世田谷区であれば月額保育料は1万8300円であるが、青森市の青森地区の場合は3万5000円になる。ちなみに東京都の最低賃金は2014年10月現在888円、青森県は665円である。雇用環境が悪く、賃金水準の低い地方ほど、保護者負担が大きい。

 なお、2015年4月にスタートする子ども・子育て支援新制度では、保育所の保育料については現在と同じ応能負担原則のもとに、公定価格が設定されることとなった。ただし、自治体による減額あるいは上乗せがどの程度になるかは、今後、議会で議論されることになる。


労働組合に期待される役割

 国民の4人に1人が65歳以上の高齢者である日本にあって、年少人口(0~14歳)は人口の12%を占めるに過ぎず、0~5歳児は人口の5%にも満たない小さな存在である。社会保障においても、児童・家族関係給付費は社会保障給付費全体の5.3%、国内総生産(GDP)比で1.2%を占めるに過ぎない(2011年)。数々の少子化対策を講じてきたとはいえ、実際の支出規模は年金や医療、介護と比較すればわずかなものである。

 「子ども・子育て支援新制度」は、消費税が10%に引き上げられることを前提に公的価格などの詳細が決められている。質と量の拡充を目指して、子育て分野には新たに1兆円が投入される予定となっているが、そのうち3000億円分を確保する目途が立っていないというのが現状である。今後、生産年齢人口がさらに減少する中で、人材面でも財政面でも地域の保育サービスを維持していくことは、ますます困難になると予想される。

 こうしたなかで労働組合が果たせる役割としては、まず第1にワーク・ライフ・バランスの追求があげられるであろう。子育て世代に相当する30代の長時間労働傾向には目ぼしい改善はみられず、早朝や夜間などの時間帯に働く労働者も増加している。そのしわ寄せが保育の現場に持ち込まれ、保育士不足の背景になっている。経済界では24時間保育所を提唱する向きもあるが、そうした方向性では、保育士不足はさらに深刻化するであろう。保育サービスの持続可能性を高めるには、ワーク・ライフ・バランスの実現が不可欠である。

 第2に、雇用の場における男女平等を引き続き推進するべきであろう。日本に限らず先進諸国に共通にみられることであるが、保育士のように女性が多数を占める仕事(femalejobs)の賃金は総じて低い。保育士不足の原因として、「男性保育士が家族を養えるような賃金ではない」という声もしばしば聞かれる。こうした低賃金は、人的資本などの生産性や本人の社会経済的属性では説明がつかない部分が大きく、社会規範や差別の影響も指摘されている。女性の職域を広げるとともに、合理性のない処遇の男女差が生じないように啓発する役割を労組が果たすことはできよう。

 第3に、非正規労働者を巻き込んだ待遇改善とセーフティーネットの整備を訴えていくべきである。労働市場全体の動きと同様に、保育所においても正規保育士の採用が抑制される中で非正規保育士が増加している。その就労形態も、パート雇用だけでなく、派遣や業務請負など多岐に渡っている。業務請負では派遣先企業との雇用関係はないので、保育事故などの際に責任の所在が曖昧になるリスクがある。保育士の処遇改善は質の高い保育サービスを供給するうえでも重要といえよう。