エル・ゾンビ 死霊騎士団の誕生
世界中のカルトファンから人気を集めるスパニッシュホラーの金字塔。“ブラインド・デッド・シリーズ”第1弾。
【STORY】
女性2名、男性1名の友人グループで汽車旅行の途中、ふとした仲違いからヴァージニアは列車を飛び降りてしまう。彼女は一夜の宿にと、荒れ果てた遺跡に足を踏み入れる。真夜中、腐り果てた体にローブをまとった騎士の一団が墓地から復活してヴァージニアを襲う。ヴァージニアとはぐれたロジャーとエリザベスは、ヴァージニアの行方を捜しこの遺跡にたどり着くが…。
【REVIEW】
さて、とうとうこの作品の紹介に着手するわけだが、スペインが誇るホラーの金字塔『エル・ゾンビ』。
スペインのゾンビ映画だから邦題に「エル」が付けられたと思われるが、メキシコのプロレスラーのような名前である。
邦題のサブタイトルは「落武者のえじき」「死霊騎士団の覚醒」と変遷しているが、ここでは現在発売されているソフトのサブタイトルで表記するとしよう。
リスボンで偶然再会したヴァージニアとエリザベス。寄宿舎で暮らした学生時代に訳ありの関係だったようだ。久しぶりの再会ついでにヴァージニアの友人ロジャーを含めた3人で汽車の旅へと出かける。
ところがヴァージニアは、嫉妬からの仲違いで汽車を飛び降りてしまう。ちなみに汽車の速度は遅い。それに気づいた残りの2人は「戻れ!」と叫ぶものの追いかけようとはしない。人生ってこんなもんよ。
そしてヴァージニアは荒れ果てた遺跡にたどり着き、そこで一夜を明かすことに。そして、夜になって寝ようとすると、遺跡内の墓地からエルゾンビたちが甦るのである。
エルゾンビは、ローブをまとった骸骨の集団で、動きは非常に遅い。このテンプル騎士団の亡霊キャラという風貌は、かの『ロード・オブ・ザ・リング』の“黒衣の騎士”の原型であるという話がまことしやかに流れている。監督がピーター・ジャクソンだけに信憑性は高い。
エルゾンビに襲われ逃げるヴァージニア。追いかけるエルゾンビ。城壁によじ登って逃げるヴァージニア。城壁の端を降りたところに偶然にも馬が。馬に乗って逃げるヴァージニア。そしてそれを馬に乗って追いかけるエルゾンビたち。さすが騎士団。ゾンビになっても乗馬は上手い。
この馬たちは、エルゾンビと同じようにぼろ布をまとっているが、ゾンビ馬なのか、普通の馬なのか?どちらにしても、エルゾンビたちが墓の中にいるときはどこにいるのだろうか?
草原を馬で逃げるヴァージニア。追いかけるエルゾンビたち。捕まり、馬から引きずり下ろされるヴァージニア。そこに群がるエルゾンビたち。そしてヴァージニアの断末魔の悲鳴…。
一方、ヴァージニアを残して、きちんと目的地にたどり着いた2人。ヴァージニアを心配しているが、優雅にテラスで食事中。どうやらヴァージニアはベルサノの遺跡で一夜を過ごしたらしいとウエイトレスに告げると、絵に描いたようにお盆を落とす。その様子を見て近づいてきた支配人風の男に馬を手配してもらい、2人も例の遺跡へ行くことに。
ベルサノの遺跡に着く2人。なぜみんな普通に馬に乗れるのか?しかし突如、馬が何かがに怯え「ヒヒーン」と鳴いて逃げ去るという予定調和が発生。
しかたなく遺跡を歩き回る2人は墓を発見。その墓には悪魔崇拝の儀式を表すエジプトの輪頭十字が印されているようである。とにかくヴァージニアを探す2人。彼女の痕跡を発見するが、そこに彼女はいない。
ここで突如2人の刑事が登場。1人はスーツの胸ポケットに花を刺していて非常にダンディー。さすが情熱の国。だがしかし、プロレスの神様カール・ゴッチにそっくりである。
刑事からヴァージニアが死んだことを聞き、遺体安置所に向かう2人。ここで、見せる死体を間違えるという、ただ残酷シーンが見せたいだけと思われるシーンが挿入される。
遺体の様子から、悪魔崇拝の儀式で犠牲になったのではと疑う2人は、図書館へ。ここで中世研究の第一人者で騎士団に詳しいというカンダル教授と会う。教授はキャラが異様に立っているが、騎士団の説明を丁寧にしてくれる。
どうやら問題の騎士団は、悪魔崇拝の儀式を繰り返し、教皇から破門されたうえに捕らえられて目を刳り貫かれ処刑されたらしい。ベルサノの遺跡は彼らの拠点だったようで、エルゾンビたちは夜な夜な復活しては悪魔の儀式を繰り返しているようだ。
真相を確かめるべくロジャーとエリザベスは再び遺跡へ。夜になると、きちんとエルゾンビは現れる。相変わらず動きは遅い。どうやら目を刳り貫かれて処刑されたために早く動けず、音に反応して行動しているようだ。ぷぷ。
すったもんだしたあげく、ロジャーは腕を切られて死亡。一緒に来た脇役連中も死亡。エリザベスは命からがら逃げだし、ヴァージニアが死んだ草原へ。例によって馬で追いかけてくるエルゾンビたち。
ここで偶然にも汽車が通りかかり、エリザベスに気づいて急ブレーキ。彼女を助け出そうとした運転手がエルゾンビの剣で斬られて死亡。さらにエルゾンビたちは客室にまで侵入し、乗客を惨殺するという最悪の事態に。すごい展開。
一方エリザベスは、石炭の陰に隠れて命拾い。そしてなぜか汽車は動き出す。
汽車は走り続け、次の駅へ。運転手がいないことに気づいた駅員が飛び乗って急ブレーキ。ホームの乗客たちは、何事もなかったように汽車へ乗り込む。そして客室の中の惨状を目の当たりにして、方々で悲鳴を上げるのである。おしまい。なんちゅーラスト。すばらしい。
エルゾンビの顔がアップになったときなど、いちいち「ジャーン」という効果音で脅かすなど、安っぽいが古き良き時代のホラー映画の王道を踏襲しており非常に楽しめる。
だがしかし、最後にこの作品には驚愕の事実が隠されていたことに触れなければならない。
その事実とは、
この作品は公開当時、あの『猿の惑星』の続編として公開されたのである!
いやマジで。
当時人気を博した『猿の惑星/PLANET OF THE APES(1968年)』に便乗するため、配給会社が無理矢理『REVENGE FROM PLANET APES』というタイトルを付け、もっともらしいオープニング映像を挿入し公開していたのである。
この映像では、人間に滅ぼされた猿を無理矢理騎士団に仕立て上げ、人間に復讐するという説明が付けられている。
なんということを。この強引さ、嫌いじゃないけど。
この映像は、現在発売されているDVDの特典映像に「もうひとつのオープニング」として収録されているので、ぜひ観てほしい。
なお、この配給戦略が功を奏したのか、この作品はホラー映画としては珍しくパート4まで製作されている。
【MARKING】
オススメ度:★★★★★5
えげつない度:★★★★4
これ「ゾンビ」か?度:★★★★★★★★8
禍々しい度:★★★★★★★7
【INFORMATION】
・原題:LA NOCHE DEL TERROR CIEGO/TOMBS OF THE BLIND DEAD
・製作年:1971年
・製作国:スペイン
・監督:アマンド・デ・オッソリオ
・製作:ホセ・アントニオ・ペレス・ギネール、サルバドール・ロメロ
・脚本:アマンド・デ・オッソリオ
・出演:チェサー・バーナー、ローン・フレミング、ヘレン・ハープ、ジョセフ・セルマン、ルフィノ・イングレス、ヴェロニカ・リメラ
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