子①(小5男児)の脳腫瘍を医師から告げられた日の翌朝早く、私と子④は小児病棟の面談室で脳神経外科の専門医(執刀医)から病状の説明を受けた。

 

それは、ある程度覚悟していたとはいえ、かなり厳しいものだった。

 

見せて頂いた子①の脳の写真を見ると、普通、脳は左右の間に分界線のようなものがあり、左右はほぼ均等に分かれているにもかかわらず、子①の分界線は右前頭葉側に大きく弓形に膨らんでいて、左前頭葉にある腫瘍が右頭葉側にせり出していることが一目で判った。

 

しかも、医師の説明によれば、この分界線が明瞭に映っている場合には腫瘍が良性であることが多いが、子①の場合はどちらかと言うと不明瞭と言わざるを得ず、悪性の可能性も正直否定できない、ということであった。

 

 

 

その後の医師の説明は、私なりに咀嚼したものであるため些か不正確ではあるが、概ね以下のようなものであった。

 

 

 

腫瘍は神経膠腫といわれるもので、緊急に手術して取り除かないと脳を圧迫して命に関わる場合がある。

 

しかし他方で手術には大きなリスクも伴う。

 

腫瘍は脳に残存させることなくできる限り取り除いた方が良いのだが、腫瘍が脳の組織と癒着している部分については、深追いをし過ぎると脳自体を傷つけて予期せぬ合併症を併発する恐れがある。

 

また、出来る限り慎重に切除するが、切除する際に血管を傷つけて大量出血し輸血を要するなどの事態が生ずることも有り得る。

 

さらに、腫瘍は血管から栄養を得て拡大しているので血管から切り離す必要があるが、切断部分からの出血も有り得るため、血管を縫合しなければならない。そのため脳への血流が阻害されることも有り得る。

 

腫瘍に伴い血栓が生じていた場合には、これが飛んでどこかの血管を詰まらせて脳梗塞を引き起こすリスクもある。

 

手術の途中で何らかの危険な状況が生じた場合には、即座に手術を中止して、後日再度開頭して取り切れなかった腫瘍を再度切除する、ということも有り得る。

 

取り出した腫瘍は病理検査、遺伝子検査に回し、その結果を踏まえて良性、悪性の判断を行い、爾後の治療方針を立てていく。

 

手術は、準備を含めて場合によっては7時間くらいかかることがある。ご両親は終わるまで病棟でお待ちいただきたい。

 

執刀医は私だが、脳神経外科のスタッフや小児科、麻酔科の医師らとチームを組んで行う。

 

 

 

医師の説明はその他にもいろいろあったのであるが、ひと通りの説明が終わると、医師から「何かご質問はありますか?」と尋ねられた。

 

実は、ここまでのところで医師の説明から欠落している部分があった。

 

それは、子①の肝臓の異常を示す数値と手術との関係の説明であった。

 

ご承知のとおり、肝臓は解毒関係する臓器であるので、麻酔薬や手術下での投薬とも密接に関わる。

 

私は正直に「是非手術を進めて頂きたいのですが、肝臓の数値が悪いこととの関係は大丈夫なのでしょうか?」と聞いてみた。

 

すると医師は慌てたようにパソコン内のデータを確認したうえで、「うーん…これは確かに悪いですね…」というような呟きを漏らした。

 

そして、「すいません、肝臓のことは失念していました。」と正直に吐露してくれたうえで、「手術は緊急を要しますが、検討する必要もありますので、小児科や麻酔科の医師とも話し合って本日の執刀をどうするか改めてご説明します。」として中座した。

 

私は、ここまでの医師の説明から、開頭して脳腫瘍を摘出する以外に子①が助かる方法はないと理解していたので、結論として摘出手術を優先するだろうと予想していた。

 

また、この医師が「肝臓のことは失念していました。」と言って、誤魔化したり取り繕ったりせずに正直に発言してくれたのを聞いて、改めて「この医師に賭けてみよう。」という気持ちを強くした。

 

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