真冬の花火大会(安浦町) | 「KUREP」別冊 西日本豪雨レポート

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広島県呉エリアの情報ページ「KUREP」。現地で取材しレポートをした平成30年7月西日本豪雨災害関連の記事だけをまとめました

2019年2月2日、安浦町で花火大会が開催されました。

広島県安浦町は、2018年7月の豪雨災害で甚大な被害を受け、これまでお祭りやイベントがたくさん中止になりました。災害の後片付けや溜まり続ける疲労。生活を楽しむ心の余裕がない日々が続きました。それでも、ようやく年が明けて、安浦町の復興を願って皆んなが元気になるように、と開催されることになった花火大会です。

「KUREP」も豪雨災害後から、何度も何度も取材や支援物資を届けるために足を運んだ安浦町。今回は、花火大会が開催されると聞き、絶対に参加しようと思っていました。
 

「花火大会」があるから安浦に行く。

ただただ、そのことだけが素直に嬉しくて。

花火大会には、同じような思いで安浦町に来た人も多かったと思います。
KUREPのツイッターでつぶやいていたら、偶然会場に向かうシャトルバスの中でツイッター仲間のボランティアさんに会えたり(笑)。
皆んな、最近の安浦の事が気になりますもの。



会場に着くと、すでに大勢の人が集まっていました。
地元の漁協や婦人会、自治会などから、焼きガキやぜんざい、甘酒などが無料で振舞われ、どのブースの前にも行列が出来ていました。

おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さん、たくさんの子供たち。
地元の人やボランティアで知り合いになった人、見知った顔などもチラホラ見えます。
 



安浦町の名物といえば、牡蠣。大きくてプリプリ、旨味がすごい!



気前よくじゃんじゃん焼きガキを提供してくれた漁協のみなさま。
「安浦町はわしらが元気にするんじゃ!」という気合が感じられました。




久しぶりに会う顔と、挨拶や近況報告など。

 

「いまだに全然手付かずのところが残ってて、やれんわ」

「これからの事を考えたら、やっぱりしんどい」

「ようやく足元が見れたくらい。まだ先は見えないね」
 

元気になりつつも、辛い言葉がやはり出てきます。
復興は長い長いマラソンのようなもの。

花火が上がるまでにぶらりと会場を歩きながら、今日という日が迎えられた事を噛み締めました。

そして、ようやくお待ちかねの花火が打ち上げられました。
かなり近い距離で、どーーーーんと大きく。
お腹に響くような音の迫力にも驚くほど!




真冬に打ち上げられた花火は、寒々として凛とした空気を、一瞬にして艶やかな色に変えました。

きれいで、本当にきれいで。心にグッとくる美しさです。
真冬の空を、色とりどりに、大小様々な花火が明るく照らし出します。

真っ暗な闇に吸い込まれる花火の白い軌跡。
シュルシュルと、空に向かって螺旋を描いて上っていく花火は、まるでみんなの魂のよう。

あの花火も、この花火も、みんなの魂。



白い軌跡は、一瞬、闇に吸い込まれると、思いもかけないような素晴らしい光の花となって、大きく闇を照らし出す。

キラキラと鮮やかに闇に散っていく光の粒。

安浦町全体が光に包まれて、みんなに光がたくさん降り注いでくるかのよう。

あぁ、こうして魂と思いが昇華されていく。
今日は、この瞬間、みんな一緒に空を見上げてる・・・

最後は、言葉もなく空を見上げるばかりでした。



開催してくださった関係者の皆様、有難うございました。
この花火業者の方も、工場が被災したと聞きました。
この日を迎えるために、皆さん言葉に出来ない思いがそれぞれあった事でしょう。
 

これまで見たどこの花火よりも、一生心に残る花火になりました。

(写真提供/櫻さん)