今年の3月22日から24日までの3日間、福岡市のエイドケアカレッジ様が主催する、上記研修に参加しました。
「強度行動障害」という概念は日本独特のものです。ちょっと長いですが、その定義を紹介します。
強度行動障害とは
精神科的な診断として定義される群とは異なり、直接的他害(噛みつき、頭突き等)や、間接的他害(睡眠の乱れ、同一性の保持)、自傷行為等が通常考えられない頻度と形式で出現し、その養育環境では著しく処遇の困難なものであり、行動的に定義される群。
家庭にあって通常の育て方をし、かなりの養育努力があっても著しい処遇困難が持続している状態。
強度行動障害に該当するか判定する基準があるのですが、この判定基準で10点以上だと強度行動障害と判断されます。
たとえば、「パニックへの対応が困難」と「他人に恐怖感を与える程度の粗暴な行為がある」の2つだけで10点となり、これだけで強度行動障害と判定されてしまいます。こう言うと語弊があるかもしれませんが、意外と簡単に「強度行動障害」と判定されてしまうことに、まず驚きました。
次に、「行動障害」と判断するのは誰か、ということです。行動障害と判定される方の多くが持つ障碍として、「自閉スペクトラム症」と「知的障碍」があります。彼らには、共通してみられる障碍特性があります。しかし、彼らは自らの特性を通して獲得した世界の理解の仕方について特に困っているようには見えません。彼らの特性を問題視し、多数派(ふつうは健常者)にとって適切とされる行動様式に適応させようとするとき、はじめて彼らは自分たちが「ふつうとは違うことで、周囲が困っている」ことに気づかされるのです。
彼らの世界観を完璧に想像することはできません。しかし、彼らの理解の仕方を理解しようと、想像し関わっていくことはできます。それが、障碍を持つ方に寄り添うということです。「誠心誠意」という気持ちだけでは、行動障害には対応できない、ということに気づかされました。支援者がいかに善意を持って利用者様に接していても、障碍特性の理解や適切な支援方法について知っていないと、かえって行動障害を悪化・強化させ、「強度行動障害」という二次障碍を生じさせてしまう可能性があるということです。これはとてもこわいことです。自分が今まで行ってきたことが、「支援」なのか、単なるその場限りの「対応」だったのか、深く反省させられました。
最後に、「強度行動障害」に対する適切な支援とは何か、です。ざっくりまとめると、
- 「困った行動が現れにくい環境を整備する」
- 「誤って学習して身につけた行動は、適切な行動に置き換える」
この2点です。
そのためのツールとして、「構造化」「ワークシステム」「スケジュール」「行動分析」「氷山モデル」「ストラテジーシート」「支援手順書」などを使用していくことになります。
ただ、これらのツールを使用する際、常に考えておかなければならないことがあります。それは、「行動障害」「強度行動障害」は周囲の者の関わり方から生じた「二次障碍」だということ。彼らに行動を変えてもらう前に、まず自分たちが彼らへの関わり方を変えるほうが先、ということです。これは、支援者と利用者を上下関係と捉えていてはできない考え方です。私はそう思っていないつもりですが、日々の生活の中で、利用者の方につい「これをして、あれをして!」と言ってしまっていることに気づくことがあります。これではいけないことも学びました。利用者様自分が努力するのは、一番最後なのです。その前に、支援者側がしなければいけないことが山ほどあるのですから。
まだまだ研修内容を消化できていませんが、これからも支援に役立つことは何でも、貪欲に学んでいきたいと感じた、3月の研修でした。
デイゆたか 前野
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