事例
妻の死後、面倒をみてくれている長男から、この家と敷地だけでも俺のものになるようにしておいてくれ、それも贈与だと税金が高いから死因贈与にしておいてくれと言われた。遺言で長男に相続させるつもりだったが、長男のいうとおりにしたものかどうか悩んでいる。
答
死亡によって効力が生じる点は遺言も死因贈与も同じですが、遺言は一定の厳格な方式に従って作成しなければ無効なのに対して、死因贈与には、形式がなく代理人によっても可能です。
死因贈与の方が簡単にできるし、税金も相続税が適用されるので、ふつうの贈与より有利です。
それでは贈与者にとって死因贈与のほうが遺言より有利かというと、そうともいえません。
遺言はいつでも取り消し可能だが、死因贈与が取り消せるかどうかについては議論があるからです。
最高裁は、原則として可能だが、特別な事情がある場合には取り消せないとしています。
遺言は自分の意思だけで決められる単独行為なのに対し、死因贈与は双方の約束によって成立する契約な ので、相手の立場を全く無視するわけにはいかないという考えが根底にあるようです。
死因贈与後に相手の態度が手のひらを返すように変わったとか、同居も煩 わしいので、贈与した自宅を売って老人ホームに入りたいとか、様々な事情で取り消したいと思っても、相手が納得せず、裁判に持ち込まれたりすると、解決ま でに長い時間と費用が掛かるでしょう。
残り少ない人生を裁判のストレスですり減らすようなことは避けたい。
いつでも取り消し自由という切り札を手にしておきたいと思ったら、死因贈与ではなく遺言にしたほうが無難です。
出典:川畑静美氏のホームページ
★川畑静美先生のセミナーのご案内
「介護とお金」講座 第7回(11月9日)家族信託でハッピーな人生を!