『時空警察ヴェッカー 改 ノエルサンドレ』 下北沢小劇場B1 | kurarizumのガタガタ日誌。

『時空警察ヴェッカー 改 ノエルサンドレ』 下北沢小劇場B1

昨日は久しぶりに平日非番だったので、舞台鑑賞に行ってきました。(14時からの昼公演)

ここ数年、なぜか何度も行くことが増えていた、アリスインプロジェクトのお芝居で、2011年に初演した『時空警察ヴェッカー χ ノエルサンドレ』の再演です。

再演にあたり、一部を除いてキャストを一新。

台本自体にも手を加え、初演では出てこなかったキャラクターが登場します。

ここで扱われている「ノエルサンドレ事件」は、それにより次元断裂が起き、事件の起こった時間軸と、起きなかった時間軸の2つに歴史が書き換えられ、新たな並行世界誕生のきっかけとなっています。

さらにそこに「別の現象」も起きてしまい、2012年に続編として上演された『彷徨のエトランゼ』事件も併発。

非常にややこしい設定になっています。

今回の舞台は、それら2つのお話にもっと手を加えてしまったがため、ますます混乱の度合いを深めてしまうという、厄介な代物になっています。

終演後、あちらこちらで、意味がわからない、と首を捻る観客が続出。

これまでの流れをすべて見ていて、ある程度の世界観を掴んでいるはずの僕ですら、途中で首を傾げる場面がいくつかあるので、初めてこれだけを見た人は、よけいだったでしょう。

『彷徨のエトランゼ』を知らなくて、聖サンジェルマン女学園にいる宇佐木ミコトが時空刑事レピスと同一人物ということを理解していない観客もいて、同じ人が2人出ている、と驚いていた人もいたくらいですから。

今作で、メインとなる時空刑事たちのキャストが一新され、「ノエルサンドレ」「エトランゼ」で時空特捜トレミーと、サポートドロイド・アルを演じていた方も変更となりました。

でも、同じ「ノエルサンドレ」での時空刑事レビスだけはオリジナルキャスト。

というのも、実は今回のお話は、彼女を軸に回っていて、『彷徨のエトランゼ』事件が起きたのち、時空刑事レピスこと、宇佐木ミコトが新たに引き起こした事件となっており(実はここの部分がお芝居の上ではさらっとしたセリフで流されていて、観客が気付きにくい)、前作の再演ではありながら、まったく別のストーリーになってしまっているのです。

要するに、レピスが過去に干渉しようとしたことにより、また新たな別の時間軸の世界が構築されてしまい、それに引っ張られて、別次元の並行世界も誕生してしまったと解釈すると、すべてがすっきりします。

主要キャストが初演と変更になっているのも、そう考えれば強引に納得させることもできます。

この作品で一番の混乱を招いている原因は、「プトレマイオス・ライン」と呼ばれる「ノエルサンドレ事件」が起きてしまった世界と、事件の起きなかった「ハイペリオン・ライン」の世界、それぞれにいる時空刑事レピスとリタが登場することでしょう。

最初に出てくる2人は、「ハイペリオン・ライン」の2人で、『彷徨のエトランゼ』事件にはタッチしていません。

その後、ひょっこりミコトと出会い、言葉を交わし、「私のことを覚えていないのか」と嘆いていたリタは、「プトレマイオス・ライン」の彼女。

なぜ彼女がそこにだけ顔を出したのかわからないから、「そのリタ」は「このリタ」と同一人物と勘違いし、ストーリーの流れがわかりにくくなっています。

というわけで、宇佐木ミコトを演じた斎藤亜美ちゃんから直接聞いた話などを基に、お芝居の中ではまったくく触れられていない裏設定を加えて、この物語の基本的なラインをあらためて紹介します。

「プトレマイオス・ライン」のレピスは、『彷徨のエトランゼ』事件後、自分の行為を悔やみ、もしかしたら自分の手で歴史を変えられるのではないかと考え、許可を得ず勝手に過去に飛んでしまいます。

でも、過去の時間に強引に割り込み、本来そこにいたはずの「夏沢るり香」の存在を消し去り、自分がそれにとってかわったことにより、未来での自分の記憶を完全に失ってしまいました。

そのため、何か自分がやらなければならない大切なことがあったはずなのに、それが思い出せないというもどかしさを常に抱きながら、時空刑事レピスではなく、宇佐木ミコトとして、普通に学園生活を送り続ける彼女。

そして、歴史は同じ過ちを繰り返す・・・。

要するに、未来からいくら干渉を試みようとしても、それまで構築されていた歴史の流れはどうやっても変えられないということでしょう。

さて、こう説明していても、実はさらにもうひとつ、解決できていない問題があるのです。

それは、キャッツアイもどきの泥棒3人組「時空怪盗オラクル」。

彼女たちはレピスとは密接な関係があって、両者が学園で顔を合わせれば、ひと騒動起きそうなものなのですが・・・

何にもない。

彼女たちの記憶もまた、レピスの作った新たな時間軸の流れの中で、消滅してしまっているのかな?(^_^;)

ただ、この物語を成立させてしまうと、『彷徨のエトランゼ』自体の発生の余地がなくなってしまうことにもなったり・・・。(『彷徨のエトランゼ』は、今回の再演バージョンと似通った設定を持つため)

いや、もうこれ以上考えるのやめにしよう!(笑)

こんなふうに、混乱ばかりのストーリーですが、それはそれで、けっこう楽しめました。

ヴェッカー常連の荘司里穂ちゃん。

3回目の田添砂姫役でまたまた出演。

皆勤賞ですね。

もはやハマリ役?(笑)

昨日はちょっとのどの調子が悪かったみたいだけど、今日は大丈夫かな?

2代目時空特捜トレミー役の加藤沙耶香ちゃん。(もう「さん」付けの方がいいかな?)

自分の演じている役がさっぱり分からないと、サイン会に訪れるお客さんみんなに話していました。

たしかに、配役が変わったこととも関係しているのでしょうが、今回のトレミーは、かつてのトレミーとはまた違った時間軸のトレミーみたいですから。(そう解釈しないと、これまでの作品との整合性が取れない)

同じく2代目となるアル役のなぁ坊豆腐@那奈さん。

特技の新体操で鍛えた柔軟性を活かしたアクションは必見です。

ただ、舞台が狭くて小さく、彼女の力量を完全に発揮できていないのが残念です。

アルはいろんなキャラクターとして登場するので、演じ分けが大変だった模様。

昨年のヴェッカーの舞台『時空警察ヴェッカー1983』では、世の中が平和になり、時空犯罪者がいなくなってしまったため、アイドルユニット「リリーズ」の1人として所属していたルルを演じていましたが、180度違う役どころで、彼女のイメージとしては、こちらの方が合っているかもしれません。

ちなみに、その時に一高校生として出演し、伝説のヴェッカーに最後に「変身」した加藤里保菜ちゃんが、今回は正式な(?)ヴェッカー・アリサ役(2代目)で出演しています。

ちょっとキツい性格の役で、正直辛いかな、という部分はありました。

もう少し肩の力を抜いて演じてくれると、いいかもしれません。

一方の、ちーちゃんが演じていた時空刑事リン(2代目)は、見事に役のイメージに合っていて、こちらはびっくりでした。

ただ、惜しむらくは、もう少しアクションを派手に演出してほしかったな、と。

その方が、ダメダメに見えて実はとても優秀だという部分がよくわかるので。(それもこれも、芝居小屋が小さいのがいけないんだ!)


なお、舞台自体の人気は上々で、明日千秋楽を迎えるのですが、全公演完売だそうです。

客席は、ステージを中心にL字型に配列され、4列目以降が階段状に作られています。

つまり、後ろの方の席に行くと、ステージを見下ろす形になります。

セットも小さく、僕が座ったG列など、その前のF列までとは微妙に段差や階段の幅に違いがあって、そこから舞台を見下ろすと、ちょうどその中心に前の列の人の上半身がすっぽり被ってしまい、何にも見えません。

また、今回はキャストが座る演技も多いのですが、そうやってみんなに座られてしまったり、一番下の狭い通路みたいな場所でお芝居されたり、アクションされたりしていると、さらにそれ以前の列の人垣で、まったく見えません。

だから今回は、観劇というよりは、聴劇と言った方がよかったかもしれません。

これだったら、さらに後ろの最後列の方が、もっと位置が高かったので、見やすかったでしょう。

座席指定のできないコリッチでチケットを申し込んで失敗しました。

今度からはカンフェッティにしようっと。