私は、明るい曲よりも暗い曲の方が好きだ。
暗い曲の方が、人の心をより的確に表現しているからだ。
確かに、明るい曲で元気をもらうとか、与えるというのも大事なことだ。
しかし、人間「頑張り」には限界がある。
挫折や失敗を経験していない人間には、他人の痛みは分からない。
自分の人生を振り返れば、挫折や失敗だらけ。
なんとか人並みの生活が出来てきたのは、つい最近のこと。
とてもではないが、他人に誇れるような人生ではなかった。
だが、その分他人の痛みは分かる人間になれたと思っている。
その、心の痛みにものすごく沁みるのが、この人の曲なのだ。
中島みゆきの曲は、いい曲がたくさんある。
メロディーも秀逸だし、なにより歌詞がいい。
本書に収録されている曲も、好きな曲がたくさんある。
その中で、特に強烈に刺さったのは…
「世界じゅうがだれもかも偉い奴に思えてきて
まるで自分ひとりだけがいらないような気がする時」(蕎麦屋)
「ひとの不幸を 祈るようにだけは
なりたくないと願ってきたが
今夜 おまえの 幸せぶりが
風に追われる 私の胸に痛すぎる」(怜子)
だろうか。
この二つの歌詞通りの気持ちに、これまでどれだけなってきたことか…
今の状況がしんどくて仕方ないときや、なんだか周りとうまくいかないとき、
自分だけが要らない存在に感じる時って、あるんですよ…
他人の不幸を祈るようにはなりたくないけど、それは自分の心に余裕がないとできないんですよ…
そんなことを、曲を聴くたび、しみじみと思う。