葦津大成『父、兄、私と大東亜戦争―次代への伝言―(神社新報ブックス9)』(神社新報社 1999年)読了。
兄・葦津珍彦と同じく神道人としての立場から見た大東亜戦争や明治以後現在に至るまでの日本の近現代史の見方は、なるほどその通りと思う部分も多かった。
細かいことを言うと、本書での鈴木貫太郎首相への批判や、ポツダム宣言受諾の際の4条件派の意見を通すべきであったという旨の主張などは、「筋はその通りなのだが、当時はそれが通る状況であったのか」というところをもう少し考えなければいけないのではないか、と思った。
また全体の論調として、言いたいことはよく分かるが、注意しないと考える力のない「右下」に誤解を与えて、変に利用されてしまうのではないか、という感じも受けた。
しかし、敗戦後現代に至るまでの日本人が、日本の歴史・文化・伝統を蔑ろにしてきてしまったことは、当用憲法下での天皇の扱いや国防・安全保障というものに対する意識の欠如からも明らかだ。
「…大東亜戦争に敗れ、占領によって精神に混乱が生じたのが今の日本である。日本再建を考えるに当っては、…先人の志を偲び受け継ぎ自分自身の再検証をすることだ。自から学び自から考え、自身の人生観・国家観・世界観をそれなりに持つことで、自分自身が日本人らしい日本人に甦ることが必要なのだ。その上で自身の家庭を建て直し、自身の子を、日本人らしい感性を持った次代の継承者として育てる努力をすることだ」(p260~261)
日本再建のために、経済の建て直しと並行して為すべきことの1つであろう。
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