原田泰『反資本主義の亡霊』(日経プレミアシリーズ 2015年)読了。
本書は、「資本主義は悪だ」という人への反論として書かれたものである。
さて、格差・貧困・戦争といった問題をもたらしているものは本当に資本主義であろうか。
それは、むしろ反資本主義ではないか。
その反資本主義の行き着く先は共産主義、ということができるであろう。
共産主義が世界にもたらしたものは何か。それこそが格差・貧困・戦争ではなかったか。
これまでの共産主義の足跡を見れば、それは明らかである。
「資本主義の生み出す豊かさがあればこそ、格差を縮小し、環境を保全し、労働条件を高め、福祉政策を行い、文化を発展させることができる。資本主義の豊かさは素晴らしいことに使うことができる。そして実際に使っているのである」(p6)
「経済の不安定性は、中央銀行の誤った政策によってもたらされる。環境を破壊するのは、短期的な視野しか持てない独裁国家である。女性の地位は資本主義によって高まった。資本主義は成長できるし、成長しなければ、高齢化する日本は惨めな状況に陥る。資本主義と自由な市場によって、日本は成長を目指さなければならない」(p225)
何を為すにも、カネがなければ何もできない。気持ちだけで世の中を動かすのと、カネの力があるのとでは、世の中を動かすパワーが、スピードが違う。
我が国の安全を保つには、そして尊い命を守るには、それを実現できるだけのカネの力も必要なのである。
そのことを改めて感じることのできた1冊である。