栗栖弘臣『いびつな日本人』(二見書房 1979年)読了。
本書は、「超法規発言」で馘首された元統合幕僚会議議長の著書である。
本書が書かれたのは40年近くも前であるが、書かれている内容は現代に当てはめてみても、ほとんど違和感のないものである。
例えば、
「いわゆるシビリアン・コントロールとは軍事政策の最終決定権を政治の最高責任者が保有する、という趣旨だが軍人の発言権をいっさい封じることだという概念にまで一人歩きを始めてしまった」(p150)
というところなどは、田母神元航空幕僚長の件が記憶に新しいが、未だにこういう考え方に囚われてしまっている人間も少なからずいることだろう。
それから、
「十回の図上演習よりも一回の実働演習の方が優る」(p179)
「これらの有事への準備不足は、物理的な不備というよりも、国防の基本的な考えに有事への対応策がないことが大きな要素である」(p187)
といった指摘も、考えさせられる。
演習に関しては、聞くところではアメリカの軍楽隊よりも実弾を撃っていないとか。
「たまに撃つ 玉がないのが 玉に瑕」
とはよく言ったものである。
有事への準備不足については、国防の基本的な考えの甘さもさることながら、物理的な不備も非常に問題であろう。
この物理的な不備というのは、兵器というよりも、継戦能力、すなわち兵站の問題である。
いずれにしても、40年近く前から、国防に関しては問題・課題とされる事柄がそれほど変わっていないのではないか。
国防問題に関心のある向きは、一読を勧めたい。
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