平間洋一『第二次世界大戦と日独伊三国同盟 海軍とコミンテルンの視点から』読了。
本書は
序章
第一章 三国同盟の締結と日本海軍
第二章 独ソ開戦と日独ソ関係
第三章 独ソ開戦と日米関係
第四章 日本海軍のインド洋作戦
第五章 ドイツ海軍のインド洋作戦
第六章 日独海軍の海上連絡便
第七章 日独連合作戦の問題点
第八章 ドイツの敗戦と日本海軍
第九章 日独技術・経済関係
第十章 日本海軍と日独ソ関係
第十一章 コミンテルンから見た第二次世界大戦
第十二章 海軍・外務省の戦争責任と東京裁判史観
おわりに
という構成になっている。
【感想】
大日本帝国は滅びるべくして滅んでしまった。勿論個々の場面では懸命に頑張っている人物・組織も多いのだが、視野を広くして全体を見たときには、大日本帝国政府が結局のところ場当たり的な対応に終始してるように見受けられる。
有事であるにも関わらず、平時の感覚で物事を処理している。正に「お役所仕事」で戦争をやっている、というように見えるのである(やっている本人たちは至極真面目に仕事をしている、少なくともそのような感覚でいる)。陸軍がこう言ってるから、とか海軍が納得しないとか、外務省がどうのとか、現場の人間が命のやり取りをしているときに、そんなやりとりに終始するというのは、どうなのだろうか。
日米開戦後にしても、インド洋での作戦などもそれなりに善戦しているところもある。本書でも書かれているように、インド洋での作戦は戦局を一気に好転させうる可能性が大きかったものである。しかし、帝国海軍は太平洋での作戦(ミッドウェー)の計画に力を注ぎ、インド洋作戦をさほど重視していなかった。敵の嫌がることをする、という戦略的な視点で考えているのではなく、自分のやりたいことをやろうとする。戦略もヘチマもない。一人で気持ちよくなっているだけ。
また、陸軍と海軍の路線対立(いわゆる「北進論」(=陸軍)と「南進論」(海軍))ということもあろう。、陸軍の仮想敵はソ連である。それに対して海軍の仮想敵はアメリカである。そもそも同じ方向を向いていない。「軍部」として日本の国益を守るためにどうするか、という統一的な方針がなかった(そもそも陸軍と海軍の成り立ちの経緯を考えると、それは至難の業であったのかもしれないが)。
ソ連と張鼓峰やノモンハンで小競り合いを続けながら、昭和12年の盧溝橋事件以降、支那事変は泥沼化し、それを解決するためとの名目で蒋介石を支援しているイギリスと戦い、ついには乗らなくてもいいアメリカの挑発に乗ってしまった。帝国陸海軍は結果としてソ連・支那・イギリス・アメリカを同時に相手にしてしまった。泥沼の支那事変で国力を消耗しているときにソ連を警戒しながら英米と開戦する。これで勝つということの方が困難なのに…。
これに加えて、コミンテルンや共産主義のシンパ(いわゆる「ピンコ」)の暗躍も大いに影響しているだろう。国内外で日本を貶める言動をし、大日本帝国が破滅するような方向に誘導していった。もっとも、そうした共産主義的思想が影響力を持ち、正論が排除されるような状況を作り出させてしまったというのは日本政府の失敗であり、教訓とすべきところではある(具体的には経済政策、ということになるだろう)。
そして、第十一章で欧米人の人種差別についても触れていた。日系アメリカ人の中には筆舌に尽くしがたい扱いを受けた者も多い。また戦場においても、抵抗できない状態で殺されている日本兵も多い(筏や救命ボートに乗っている遭難者を機銃掃射している)。
現代ではそうした差別的感情は多少は薄まっているのかもしれないが、彼らの意識の根底にはそうした野蛮な(肌の色が違うというだけで同じ人間と認めない、というよりも人間だと思っていない)思想があるのだろう。そんな野蛮な連中に敗れたことも悔しいが、その悔しさをばねにして、今度は絶対に負けない、奴らになめられない強い国になろうという意思を持っていない状況はもっと悔しい。靖国に祀られている英霊が、当時どんな思いで死んでいったのかということと現在の日本の状況を併せて考えると、英霊に申し訳ない思いでいっぱいになる。
最後に、第十二章では外務省に筆誅を加えている。外務省は抵抗力を失った「軍部」に、外務省が負うべき責任を押しつけ、日本の開戦史観を米国の開戦史観に合わせ省益を守った、と。この米国の開戦史観に迎合した外務省史観が、すなわち東京裁判史観である、と。
敗戦の反省をするならば、こうしたいわゆる「敗戦利得者」に関してもしっかりと検証する必要があるだろう。
今次コロナ禍での日本は、正に国家存亡の危機ということができると思う。ならば靖国の英霊の思いに報いるためにも今我々が何ができるか、しっかりと考えて行動しなければならない。
などなどいろいろなことを考えさせられた1冊だった。
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