今回は短めである。


そもそも本文章群は、文章を短く簡潔にまとめる能力が欠如している私による

140文字に収められない、日常の出来事や誰に話せる訳でもないくだらない独り言を、のべつまくなしと書き連ねる媒体であり

毎回1000文字は最低でも超えるエッセイを書く場では無いのだ。


ほとんど見ていないが、アメブロにおける平均的なブログはこんなに文字が多くないし、写真が沢山ある。

だから私は未だに、この文章群をブログと呼称することに違和感を感じるのだ。


いや、そんな事はどうでもいい。

私はとかく140文字に収まらないが、特に誰かに話すあての無い文章を書きたいのだ。


事の起こりは、昨年の年末。

12月30日以前の話である。


元来私は非活動的な人間であり、

外出はもちろんのこと、家の中においても能動的な行動はほとんど起こさない。

動物に例えるならナマケモノと言いたいところだが、ナマケモノはほとんど食事をしないらしいので、食事だけは1人前以上に摂る私は、それよりもタチの悪い生き物であろう。

もし輪廻転生があるのなら、私の魂はここまでで終わりにしておいた方が環境にとって賢明である。


さて、そんな私も年末くらいはと、甲斐甲斐しくも大掃除を決行した。

普段消極的に掃除している部分以外にも手を伸ばそうと言うのだ。


ここで私が今回向き合ったのは電子レンジだ。

先にこれだけは伝えておくが、一人暮らし男性の家の電子レンジに何かを期待してはいけない。

しかも私が上京してきてからずっと寄り添ってきた相棒だ。

数々の思い出をその身に宿しており、有り体に言って汚かった。


もちろん内部を掃除しようと幾度が試みたが、しかしその多くは徒労に終わっている。


終止符を打とうじゃないか電子レンジ。

貴様との長い因縁もここで終わりだ。


私は決戦に臨むことにした。

得物は業務用の油汚れ用洗剤とキッチンペーパー。


有識者による批評(アマゾンレビュー)によれば、この洗剤はプロの現場でも信頼されている、なかなか凄いものらしい。

というか、素手で扱って傷口に入ろうものなら、なかなかのしっぺ返しを食らうと言うほどのシロモノだった。


いいじゃないか、業務用洗剤。

私は基本的に大は小を兼ねる思考の人間である。

攻撃力は高いほどいい。


去る昨年、私に掃除のエトセトラを布教したお掃除大好きリサイクルのプロによれば、

キッチンペーパーを被せて洗剤を吹きかけ、しばらくした後に拭くと驚くほど綺麗に汚れが落ちるようだ。


そのプロは電子レンジには洗剤ではなくナントカというほぼ水のようなものを使うのだと言っていたが、

あいにく手元には業務用洗剤しかない。

これでも構わないだろう。


電子レンジに塗布して数時間。

どうぶつの森における一日のタスクをし終えた私は拭き掃除をはじめた。


なんということだろう。

あんなに頑固だった茶色いアレコレがスルスルと落ちて新品もかくやという姿に変わっていくでは無いか。


そうかそうか、そう言えば君はそんなに綺麗だった。

綺麗に輝く白と黒。

数々のハネによって向こう側がホワイトアウトしていたガラスの小窓からは、レンジの中の細やかな装飾まで見れるほどに透明度を増していた。


やってみるものだ。

もっと早くやっておくべきだったかもしれない。


おかえり僕の電子レンジ。


さて、それでは再起動である。

コンセントを差し直して、いざ起動!


…ん?

どうした?

いつも元気にモノクロの数字を表示していた電子版に反応がない。


ボタンをいくつか押してみるが反応がない。


どうしたことだ?


頭を悩ませているとそんな私の心理に反応するように電子レンジがウォォォオとファンを激しく回し始めた。

私が突然のことに呆気に取られていると、しばらくした後に電子版に数字が表示された。


H60


僕はこれを知っている。

いや、本当の意味では知らないが、しかし知っている。


エラーコードだ。


我らが恩師Google先生に原因を聞いたところ、どうやら電子回路がうんぬん言われた末に

工場で修理してもらわないと、どうにも治らないという。


なんてこった。


大掃除を終えた私の手元に残ったのは、

ピカピカと出会った頃の姿で佇む、粗大ゴミであった。


年末殊勝にも大掃除をした私は、

時間と予算と労力をたっぷりかけた末に、とっても綺麗な粗大ゴミをこさえていた。


ああ、君にはまだ温めてもらいたいものが沢山あったというのに…。


さようなら電子レンジ。

さようなら2万数千円。


僕はもう少し生きるよ。