本文を読む前に諸注意である。

自分の外見に自信のある者は読み進めるのを止めていただきたい。

私は残念で残酷な現実を広く流布するのが趣味であるが、

しかし、同時にむやみやたらに他人を傷つけてはならないという理性を持ち合わせている。

 

心の体調が優れない方や、外見を批判されることに強い拒否感を覚える方は、

本文を読むに向かない。

読んだ後に痛烈に批判されても私は挨拶に困るし、

その批判している姿を衆目に晒すのは傷を広げるに他ならぬからである。

 

知ることは不可逆だ。

知らないことを知ることはできるが、

知ってしまった事実を知らなかった状態に戻すことはできない。

上記に心が引っかかった者はこれ以上読むこと推奨しない。

 

よし、そろそろ予防線を張り終えたろう。

ではご覧あれ。

 

 

 

私の趣味は写真である。

いわゆる一眼レフカメラを使い、

人だの物だの風景だの動物だの、

雑多に撮っている。

 

写真とはこれまた難儀なもので、

撮るだけならばことさら簡単であるが、

いい写真を撮ろうとすると果てがない。

 

光の当たり方、画角、アングル、ポジション、

シャッタースピード絞り値ISO感度エトセトラエトセトラ…。

 

カメラとは光を記録する装置である。

発光しているもの(光源)とその光が反射させた光を記録する。

我々が見ているものも同じである。

目に見える全ては様々なものに反射した可視光なのだ。

 

それゆえに、光の反射率を変えれば色が変わることが多分にある。

モルフォ蝶なんかがいい例だろう。

 

そして、これからが本題だ。

 

ガラスや鏡にはそれぞれ透過率というものが存在する。

それが概ね88%とされている。

つまり、ガラス越しに見た風景や鏡に反射した風景は、

それぞれ12%ほどぼやけて見えているのだ。

 

ちょっと待て、そんなことないぞ。

ガラス越しの景色や鏡に写ったものだって綺麗に見えるではないか。

すりガラスや何かの間違いではないのか、

と考える視聴者諸君もいらっしゃるだろう。

 

確かに鏡ごしでもガラス越しでもそれそのものを見ているのと同様に綺麗に見える。

透過率が88%でも綺麗に見えるのはなぜなのか?

 

それは我々人間の脳が大変優秀で、

ぼやけた風景を修正して綺麗に見せているのである。

 

さて残酷なお話の時間だ。

 

この中に写真写りが悪く悩んでいる方はいらっしゃるだろうか?

かくいう私もこれが原因で悩んだことがある。

鏡で見る私は、イケメンとは言わずともまだ見れる外見をしている。

しかし写真ではいささか見るに耐えない。

なんだ、もしかしてこの写真を撮った人間はド下手なのではないか?

もしくは私の顔を故意にブサイクに編集しているのではないか?

 

もうみなさまお分りであろう。

鏡に写った自分は美化された自分なのだ。

 

本物の自分より12%肌が綺麗で、12%目が大きく、12%頬がシュッとしている

そう錯覚しているだけなのだ。

 

鏡に向かって毎日「私は可愛い、私は可愛い」と唱え続けると、

本当に可愛くなるという宗教めいたジンクスが存在する。

しかし、からくりを紐解いてしまえばこんなものだ。

確かに効果はある。ガラスに写った自分は自分には可愛く見える。

しかし誠に残念であるが、他人から見た自分は変化していない。

 

そして写真はそれらの幻想を無視して現実を映し出す。

カメラにもレンズというガラス製品が使われているが、

これは一般的なガラスより透過率を高められて作られている。

 

写真写りが悪い、のではなく

元が悪いのだ。

 

ああ、全国の乙女の悲鳴が聞こえる。

 

しかし、写真を撮っていて気がついたことがある。

稀に、150人に一人くらいのペースで、ほんとうに写真写りが悪い方がいるのである。

肉眼で見ると見目麗しく、100人がその人を見れば90人は惚れて、

残りの10人はベタ惚れするほどの容姿を持っているにもかかわらず、

写真を撮るとなぜかブスに写ってしまう。

具体的に言えばほうれい線がやたら濃く映る。

原因は判然としないが、同じモデルを違う人間が撮影してもやはりブスに写るので、

腕の問題ではないだろう。

 

もし自分の写真がほうれい線バキバキに写ってしまうと悩んでいる方がいたのなら、

上記の文はあまり当てにしなくともよい。

我々の目にはあなたはとても魅力的に見えている。

 

あるいは人の目には可愛く見える魔法が使えて、

カメラにはそれが通用していない可能性もあるが。

 

また、鏡に向かって可愛いの呪文を言い続けるのは、

見た目には効果がないが、

心には効果がある。

 

有り体に言って、自信がつくのだ。

自信のある人はよく笑う。

平面的な外見ではなく、

よく笑い、自信に満ち溢れている人の方が、

たいそう魅力的に見える者である。

 

さて、まとめであるが、

今回に関しては特にない。

 

勘違いを正すだとか、むやみに人を傷つけることを目的にしているわけではない。

ただの雑学、知らなきゃよかった豆知識の披露に他ならないので、

そもそも教訓めいたものなど何もない。

 

強いて述べるのであれば、

目に見えているものでさえ、真実であるとは限らない。

ということである。